飲食店が忙しいのに儲からないのはなぜ?|利益を残すメニュー改善の進め方

お客さまが途切れず、スタッフも一日中動き回っている。それなのに、月末になると思ったほど利益が残っていない。
このような状態では、さらに集客を増やす前に、現在のメニュー構成と営業の流れを見直す必要があります。
大切なのは、単に売上を増やすことではなく、現在の客数でも利益が残るメニューと営業体制に整えることです。
飲食店が忙しいのに儲からない4つの原因と、ABC分析を使ってメニューを整理し、客単価と作業効率を改善する手順を解説します。
飲食店が忙しいのに儲からないのはなぜ?
飲食店の忙しさには、売上につながる忙しさと、作業の複雑さによって生まれる忙しさがあります。
お客さまが多く、注文が次々と入っているなら、忙しくなるのは当然です。一方で、食材を探す、少量の仕込みを何種類も行う、複雑な調理を繰り返すといった作業は、時間がかかっても売上を増やすとは限りません。
スタッフが忙しそうに働いているからといって、すべての作業が利益につながっているわけではないのです。
来店客や注文が多く、料理やサービスを提供するために発生している忙しさです。
多すぎる仕込み、食材を探す移動、転記など、売上に直結しにくい作業から生まれる忙しさです。
まずは、現在の忙しさが「注文が多いから」なのか、「メニューや作業が複雑だから」なのかを分けて考える必要があります。
原因1.メニューの種類を増やしすぎている
お客さまの要望に応えようとして、メニューを少しずつ増やしている飲食店は少なくありません。
しかし、メニューが増えるほど、必要な食材と仕込みの種類も増えていきます。ほとんど注文されない料理でも、提供を続けるためには食材を用意しなければなりません。
さらに、メニューごとに調理方法が異なると、注文が入るたびにスタッフの動きも変わります。
例えば、特定のメニューだけに使う食材や調理器具があると、その料理を作るために作業を中断したり、別の場所へ移動したりする必要があります。その結果、一つの注文がキッチン全体の流れを止め、ほかの料理の提供まで遅らせることがあります。
メニュー数の多さが、そのまま店の魅力になるわけではありません。注文されていないメニューや、営業を複雑にしているメニューを抱えていないか確認しましょう。
原因2.売れているメニューが利益を残せていない
注文数の多いメニューが、必ずしも利益の大きいメニューとは限りません。
| 比較項目 | メニューA | メニューB |
|---|---|---|
| 販売価格 | 1,000円 | 1,500円 |
| 食材原価 | 350円 | 600円 |
| 売価から食材原価を引いた金額 | 650円 | 900円 |
メニューBは原価率が高くても、1食を販売したときに残る金額は大きくなります。
ただし、この金額がそのまま店の利益になるわけではありません。ここから人件費、家賃、水道光熱費、決済手数料などを支払います。
そのため、原価率だけで判断せず、次の点も合わせて確認する必要があります。
- 1食を販売したときにいくら残るか
- そのメニューが何食売れているか
- 仕込みや調理にどれくらい時間がかかるか
- 専用の食材や設備が必要か
- ほかの料理の提供を遅らせていないか
よく売れていても、残る金額が少なく、調理負担も大きいのであれば、そのメニューは忙しさを増やしているだけかもしれません。
原因3.価格に見合う価値をつくれていない
同じ食材原価でも、商品名、盛り付け、組み合わせ、説明方法によって、お客さまが感じる価値は変わります。
高い食材を追加したり、料理の量を増やしたりするだけが、価値を高める方法ではありません。
- 料理の特徴が伝わる商品名を付ける
- 看板メニューとしてメニュー表で目立たせる
- おすすめの食べ方や味の特徴を説明する
- 料理の魅力が伝わる器や盛り付けを選ぶ
価格を上げる場合は、お客さまが「この内容なら食べてみたい」と思える理由をつくり、その魅力をメニュー表や接客で分かりやすく伝えることが大切です。
盛り付けや演出を複雑にしすぎると、新たな忙しさを生んでしまいます。追加する材料費や作業時間も考えながら、少ない負担で商品の価値を高めましょう。
原因4.食品ロスと無駄な作業が利益を減らしている
売れずに廃棄した食材にも、仕入れ費用はかかっています。
特に注意したいのは、一部のメニューにしか使わない専用食材です。そのメニューの注文が入らなければ、ほかの料理に転用できず、賞味期限や品質の問題から廃棄することになります。
食品ロスによる損失は、食材の代金だけではありません。食材を仕入れる、検品する、保管する、仕込む、廃棄するといった作業にも人件費がかかっています。
次のような作業が常態化していないか確認してみましょう。
- 使用頻度の低い食材を毎日仕込んでいる
- 仕込み量を担当者の感覚だけで決めている
- 食材や調理器具を何度も取りに行っている
- 注文内容や在庫数を複数の場所へ転記している
- 営業中に不足した食材の仕込みを始めている
- 担当者によって調理手順や盛り付けが異なる
一つひとつは短い作業でも、毎日繰り返せば大きな労働時間になります。
ABC分析で売れ筋と見直すメニューを明確にする
メニューを整理するときに活用できるのがABC分析です。
ABC分析では、一定期間のメニュー別売上を集計し、売上への貢献が大きい順に並べます。そのうえで、貢献の大きい商品をA、中間の商品をB、小さい商品をCというように分類します。
集計方法や分類の考え方を詳しく確認したい場合は、ABC分析の基本と具体的な進め方も参考にしてください。
ただし、Cに分類されたメニューをすべて削除すればよいわけではありません。
売上が小さくても、利益率が高いメニューや、看板商品と一緒に注文されるメニューがあります。反対に、売上が大きくても、原価や調理負担が大きく、利益を残せていないメニューもあります。
ABC分析の結果に、次の情報を重ねて判断しましょう。
| 販売実績 | 販売数と売上高を確認し、店の売上を支えているメニューを把握する |
|---|---|
| 残る金額 | 売価から食材原価を引いた金額と、期間全体での貢献を確認する |
| 食品ロス | 廃棄した食材の量と金額、ほかの料理へ転用できるかを確認する |
| 調理負担 | 仕込み時間、提供時間、専用設備、ほかの料理への影響を確認する |
ABC分析の目的は、不人気メニューを機械的に削ることではありません。売れているメニュー、利益を残しているメニュー、現場に負担をかけているメニューを分けることが目的です。
メニューを「残す・改善する・外す」に分類する
分析したメニューは、売上順位だけで決めず、「残す」「改善する」「外す」の3つに分類すると判断しやすくなります。
残すメニュー
売上や利益への貢献が大きく、調理負担も許容できるメニューです。店を選ぶ理由になっている看板メニューや、繰り返し注文される定番メニューも含まれます。
残すと決めたメニューは、欠品や品質のばらつきが起きないように、仕込み量と調理手順を整えます。
改善するメニュー
よく売れているものの、原価が高い、価格が低い、作業時間が長いといった問題を抱えているメニューです。
価格や食材の量を見直す、仕込みをほかのメニューと共通化する、盛り付け工程を減らすなどの改善を検討します。
売れないメニューだけでなく、売れているのに利益を残せていないメニューも改善対象です。
外すメニュー
注文数が少なく、利益への貢献も小さいうえ、食品ロスや調理負担を発生させているメニューです。
特に、専用食材が必要で、注文が入るとキッチン全体の流れを止めるメニューは、優先的な見直し候補になります。
すぐに廃止することが難しい場合は、数量限定、予約限定、季節限定に変更する方法もあります。
看板メニューを中心に客単価を高める
メニューを整理した後は、看板メニューを中心に全体を組み立てます。
看板メニューが明確になると、お客さまは注文を決めやすくなります。店舗側も仕込みと調理を集中できるため、品質と提供スピードを安定させやすくなります。
客単価を高めるために活用したいのが、トッピングとサイドメニューです。
看板商品のハンバーグを中心に、チーズ・目玉焼き・ソース変更をトッピングとして用意。サラダ・スープ・ライス・デザート・ドリンクを組み合わせれば、基本の調理工程を大きく増やさずに客単価を高められます。
追加商品は、次の条件を満たしているか確認します。
- 看板メニューと一緒に注文しやすい
- 追加の調理工程が少ない
- 主力商品と食材を共通化できる
- 保存しやすく、食品ロスが発生しにくい
- 追加注文によって利益が残る
- 価格差と追加する価値が分かりやすい
セットメニューを作る場合も、値引き後にいくら残るのかを計算します。注文点数が増えても、値引きと原価によって残る金額が減ってしまえば、利益の改善にはつながりません。
無駄な作業を減らして営業を効率化する
メニューを整理したら、厨房と接客の作業も見直します。
まず、スタッフがどこへ移動し、何を探し、どの工程で待っているのかを確認します。使用頻度の高い食材や調理器具を手の届く場所にまとめるだけでも、移動時間を減らせる場合があります。
仕込み量は、販売実績をもとに決めます。担当者の感覚だけに頼ると、過剰な仕込みや、営業中の追加作業が発生しやすくなります。
調理手順と盛り付け方法も統一しましょう。誰が担当しても同じ手順で作れるようになれば、教育の負担や品質のばらつきを減らせます。
注文、在庫、発注などの繰り返し作業は、不要な工程を取り除いたうえで、必要に応じてPOSレジ、モバイルオーダー、在庫管理システムなどによる効率化を検討します。
改善は4つの手順で進める
メニューや価格を一度に大きく変更すると、どの施策に効果があったのか分からなくなります。次の順番で進めると、改善の効果を判断しやすくなります。
メニュー別の販売数、売上高、食材原価、廃棄量、仕込み時間、提供時間を記録します。最初から完璧を目指さず、現在確認できる数字から始めます。
ABC分析に利益への貢献、食品ロス、調理負担を加え、「残す」「改善する」「外す」に分類します。判断に迷うメニューは、一定期間だけ休止して反応を確認します。
看板メニューを明確にし、トッピング、サイドメニュー、セット商品を整理します。価格、商品名、説明、盛り付けも合わせて見直します。
売上だけでなく、1食当たりに残る金額、客単価、食品ロス、仕込み時間、提供時間、スタッフの労働時間を比較します。
売上が変わらなくても、廃棄や労働時間が減っていれば、利益は改善している可能性があります。売上だけで改善の成否を判断しないことが大切です。
忙しさが利益につながる店へ変える
飲食店が忙しいのに儲からない場合、さらにメニューを増やしたり、集客費をかけたりする前に、現在の営業内容を見直す必要があります。
まずはABC分析で売れ筋を把握し、利益への貢献、食品ロス、調理負担を重ねて判断します。そのうえで、看板メニューを中心にトッピングとサイドメニューを組み合わせ、少ない負担で客単価を高められる構成へ変えていきます。
目指すのは、スタッフがただ忙しく働く店ではありません。
限られた食材と時間を利益につながる商品へ集中させ、忙しさに見合う利益が残る店です。
