しまむらのマーケティング戦略|業績・10年の施策・3C分析・4P分析

「しまむらは、なぜ低価格でも利益を伸ばせるのか」
その理由は、単純な安売りではありません。しまむらは、全国の店舗網とローコストオペレーションを土台に、PB(プライベートブランド)、インフルエンサー、キャラクター、SNS、ECを組み合わせ、「安くて実用的」だけでなく「探す楽しさ」「今しか買えない話題性」まで提供しています。
2026年2月期には、売上高・売上総利益・営業利益・当期純利益が過去最高を更新しました。さらに2027年2月期第1四半期も、売上高と各利益が第1四半期として過去最高を記録しています。
しまむらの直近の業績
2026年2月期は売上高・主要利益が過去最高
しまむらの2026年2月期連結決算は、増収増益となりました。
| 指標 | 2026年2月期実績 | 前期比 | 売上高比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,000億3,400万円 | 5.2%増 | 100.0% |
| 売上総利益 | 2,439億400万円 | 5.6%増 | 34.8% |
| 営業利益 | 614億8,300万円 | 3.8%増 | 8.8% |
| 経常利益 | 636億7,200万円 | 5.1%増 | 9.1% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 444億6,000万円 | 6.1%増 | 6.4% |
売上高、売上総利益、営業利益、当期純利益はいずれも過去最高です。売上高は初めて7,000億円台に到達しました。
増収の背景には、次のような施策があります。
- 高価格帯PB「CLOSSHI PREMIUM」の拡大
- 「FIBER DRY」「FIBER HEAT」など機能性商品の強化
- インフルエンサーやキャラクターとのコラボ
- 「超サプライズセール」など重点催事の強化
- 季節の変わり目にも売れる、天候に左右されにくい商品の拡充
- 売れ筋の追加生産や値下げ抑制による粗利益の確保
低価格を維持しながら、一部では機能や付加価値を高めた商品を増やし、客単価と粗利益を改善している点が重要です。
2027年2月期第1四半期も過去最高
2027年2月期第1四半期の連結売上高は1,816億6,300万円で前年同期比7.9%増、営業利益は178億9,000万円で同16.8%増、当期純利益は128億5,700万円で同19.0%増でした。いずれも第1四半期として過去最高です。
主力のしまむら事業では、既存店売上高が前年同期比7.2%増、客数が同6.4%増となりました。会社は、重点催事やWEBチラシの強化、キャラクター企画などが客数増につながったと説明しています。商品面では、PB「CLOSSHI」「CLOSSHI PREMIUM」も好調で、PB売上高は前年同期比7.2%増でした。
一方で、物価上昇による消費者の節約志向、人件費や物流費の上昇、天候不順は引き続きリスクです。しまむらは安さだけで競争するのではなく、「価格以上の価値を感じる商品」と「買いたくなる理由」を増やすことで対応しています。
しまむらの直近10年の主なマーケティング施策
しまむらの直近10年は、店舗とチラシを中心とした集客から、SNS・EC・会員データまで含むマーケティングへ進化した期間といえます。
2016年前後:コラボ商品と「#しまパト」で宝探し体験を拡散
しまむらでは、ハリスツイードやキャラクターなどとのコラボ商品が話題になりました。低価格でありながら、有名ブランドや人気キャラクターのデザインを楽しめることが来店動機になったのです。
同時期には、利用者が店舗を巡回して掘り出し物を探し、購入品をSNSへ投稿する「しまパト(しまむらパトロール)」が定着しました。
「#しまパト」は企業が一方的に広告するのではなく、顧客自身が商品の発見や購入体験を発信するUGC(ユーザー生成コンテンツ)です。店舗ごとに品揃えが異なることや、売り切れの可能性があることが、かえって「今、見に行きたい」という気持ちを生みました。
2018年:ZOZOTOWNへ出店し、初のオンライン販売
しまむらは2018年7月、ZOZOTOWNへ出店し、オンライン販売に乗り出しました。
これは、実店舗を中心としてきたしまむらがオンライン販売へ踏み出す最初の足がかりでした。その後は、外部モールよりも自社の店舗網や物流網を生かしやすい直営ECの構築へ軸足を移していきます。
2019年:「しまコレ」でオンラインと店舗を接続
2019年1月には、お取り寄せアプリ「しまコレ」を開始しました。アプリで商品と受取店舗を選び、店舗で試着・購入できる仕組みです。
これは、ECだけで販売を完結させるのではなく、オンラインで商品を見つけてもらい、店舗へ送客する施策でした。全国の店舗網を「受取拠点」として活用する、現在のOMO戦略の原型といえます。
2020年:自社オンラインストアを開設
2020年10月には「しまむらオンラインストア」を開設しました。自宅配送に加え、送料無料の店舗受取にも対応しています。
オンラインストアでは、インフルエンサー企画、キャラクター商品、大きいサイズなどのEC限定商品を展開しました。2020年12月には予約販売も開始し、売り切れによる販売機会の損失を抑える仕組みを整えました。その後、予約販売はEC在庫の削減にもつながっています。
物流面では、既存の商品センターと店舗配送網を活用する「ローコストEC」を構築しています。ECを別事業として膨らませるのではなく、店舗網の生産性を高めるために利用している点が、しまむららしい戦略です。
2021年:テレビCM中心からデジタル販促へ
2021年2月期には、デジタル広告を拡大しながら広告宣伝費を前期比22.8%削減しました。
同社は、WEBチラシや動画広告を拡大し、顧客層や地域に応じて広告を出し分ける方向へ販促を転換しました。決算資料では、デジタル広告の拡大などが広告宣伝費の削減につながったと説明しています。
低コストで素早く広告を配信し、天候や販売状況に応じて内容を修正できるデジタル販促は、短いサイクルで商品を入れ替えるしまむらと相性のよい施策でした。
2021〜2022年:ECをグループ各事業へ拡大
2021年秋にはバースデイ、2022年春にはアベイルとシャンブルがオンラインストアへ参入しました。2022年11月には、しまむら、アベイル、バースデイ、シャンブルでアプリ会員サービスも開始しています。
ECでは、限定商品と予約販売が成長を支えました。2022年4月に報じられた会社説明によると、EC購入者の9割超が店舗受取を選び、店舗受取を利用した顧客の46%が来店時に別の商品も購入していました。
この数字は、ECが店舗売上を奪うのではなく、来店と追加購入を生み出す送客装置として機能していることを示しています。
2022〜2023年:インフルエンサー、ライブコマース、キャラクターを拡充
しまむらは、インフルエンサーとの共同開発商品を増やし、Instagramライブなどの動画販促も強化しました。
インフルエンサーは商品の広告塔にとどまりません。フォロワーの好みや悩みを反映した商品企画、コーディネート提案、発売前後の情報発信までを一体化できます。
また、キャラクター商品や地域限定商品、EC限定商品を増やすことで、「必要な服を買う」だけでなく「好きな人・作品の商品を買う」という目的買いを生み出しました。
2023〜2024年:PB・JBを高付加価値化
しまむらは、自社開発ブランドのPB「CLOSSHI」と、サプライヤーとの共同開発ブランドであるJBを強化しました。
なかでも「CLOSSHI PREMIUM」は、従来の低価格イメージを保ちながら、素材・機能・着心地を高めた上位ラインです。「FIBER DRY」「FIBER HEAT」など、顧客の不満を解決する機能性商品も看板商品へ育てています。
この施策の狙いは、単なる値上げではありません。顧客が納得できる機能や品質を付け加え、「安いから買う」から「この機能が欲しいから買う」へ選ばれる理由を広げることです。
創業70周年企画では、インフルエンサーや有名タレントとのコラボも集客に貢献しました。画像・動画制作の内製化も進め、デジタル販促の速度と費用対効果を高めています。
2024年以降:重点催事・VMD・顧客データ活用を強化
実需期には「超サプライズセール」などの重点催事で集客し、季節の変わり目にはキャラクター商品、ベビー・キッズフェア、インフルエンサー商品など、気温に左右されにくい企画を投入しました。
店舗ではVMD(視覚的な売場づくり)やコーディネート提案を強化。商品、販促、売場を連動させ、見つけやすさと回遊性を改善しています。
また、ECやアプリから得られる会員データを、品揃えや販促、出店判断へ活用する構想も打ち出しました。
2025〜2026年:「しまむらパーク」とポイント制度でOMOを次の段階へ
2025年秋には、しまむら、アベイル、バースデイ、シャンブル、ディバロを横断するグループオンラインストア「しまむらパーク」を開設しました。
2026年3月には、店舗とオンラインストアでポイントがたまり、使える制度を開始しました。会社は、ポイント制度を通じて得た顧客データを、一人ひとりのニーズに合わせた販促へ活用する方針です。
しまむらのデジタル化は、EC比率を上げること自体が目的ではありません。全国の店舗とECをつなぎ、顧客が「探す・取り寄せる・受け取る・ついでに買う」までを一体化することが目的です。
しまむらの3C分析
3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つから事業環境を整理するフレームワークです。詳しい進め方は「3C分析とは?やり方・順番・テンプレート・具体例をわかりやすく解説」も参考にしてください。
Customer(市場・顧客)
しまむら事業の中心顧客は、20代から60代の女性とその家族です。衣料品だけでなく、肌着、寝具、インテリア、雑貨まで、日常生活に必要な商品を幅広く扱っています。
現在の顧客ニーズには、次の特徴があります。
- 物価高を背景に、価格への感度が高い
- 安いだけでなく、機能・品質・デザインも重視する
- SNSで商品を知り、店頭やECで在庫を探す
- キャラクターやインフルエンサーなど「自分の好み」に合う商品を求める
- サイズや生活場面に合った、多様な選択肢を求める
- ECの便利さと、店舗で実物を確認できる安心感の両方を求める
経済産業省の調査では、2024年の「衣類・服装雑貨等」のBtoC-EC市場規模は2兆7,980億円、EC化率は23.38%でした。衣料品でもオンライン購入が広がる一方、サイズ感や素材感を店頭で確かめられる実店舗には、ECとは異なる役割があります。
しまむらの店舗受取は、この「オンラインの便利さ」と「店頭の安心感」を両立する仕組みです。
Competitor(競合)
しまむらの競合は、相手によって競争軸が異なります。
| 競合 | 主な強み | しまむらとの競争軸 |
| ユニクロ | 高機能な定番商品、SPA、世界的ブランド力、大型広告 | 機能性、品質、価格、店舗・EC連携 |
| GU | 低価格とトレンド提案、若年層への発信力 | 価格、トレンド、SNS、コーデ提案 |
| ワークマン | 高機能・低価格、用途が明確な商品 | 機能性、実用性、価格 |
| 西松屋など | 子ども・ベビー領域の専門性と低価格 | ファミリー需要、生活必需品 |
| SHEINなどEC専業 | 圧倒的な商品数、低価格、更新速度 | 品揃え、トレンド、デジタル接点 |
| 総合スーパー・ディスカウントストア | 食品や日用品とのまとめ買い | 利便性、価格、ワンストップ性 |
ユニクロは、素材開発と定番商品の大量販売を得意とします。2025年8月期の国内ユニクロ事業は売上収益が1兆円を超えており、規模とブランド力では非常に強い競合です。
一方、しまむらは多品種・少量の商品構成、店舗ごとに異なる品揃え、インフルエンサーやキャラクターとの細かな企画を得意とします。ユニクロが「目的の商品を確実に買う店」だとすれば、しまむらは「予定外の掘り出し物にも出会える店」と整理できます。
ユニクロの戦略については「ユニクロのマーケティング戦略|売上3兆円を支える仕組みを解説」で詳しく解説しています。
Company(自社)
しまむらの強みは、次のとおりです。
- 全国をカバーする店舗網
- 標準化されたローコストオペレーション
- 20代から60代の女性と家族を取り込む幅広い品揃え
- 多品種・少量による「宝探し感」
- PB・JBによる機能性、独自性、利益率の向上
- インフルエンサー、キャラクター、UGCを生かす企画力
- 店舗受取を中心にしたローコストECと相互送客
- 強固な財務基盤とDXへの投資余力
一方で、弱み・課題もあります。
- EC売上比率がまだ低く、オンライン上の品揃えや利便性に伸びしろがある
- 店舗ごとの在庫差が、欠品や探しにくさにつながる場合がある
- 「安い店」というイメージが、品質や高付加価値商品の訴求を弱める可能性がある
- 天候によって季節衣料の売上が変動しやすい
- 人件費、物流費、原材料費の上昇がローコスト経営を圧迫する
- 幅広い顧客を対象とするため、ブランドの個性がぼやけやすい
3C分析からわかるしまむらの勝ち筋
3C分析から見えるしまむらの勝ち筋は、「家族の日常需要を低価格で満たす店舗網」に、「限定性・発見性・デジタル利便性」を重ねることです。
ユニクロと同じように定番商品だけで勝負したり、SHEINと同じようにEC上の商品数だけで競ったりする必要はありません。
しまむらにしかない強みは、身近な店舗で、実用品からトレンド商品、キャラクター商品までを宝探し感覚で選べることです。ECと会員データは、その体験を置き換えるのではなく、見つけやすくするために使われています。
しまむらの4P分析
4P分析は、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の整合性を確認するフレームワークです。基本的な考え方は「4P分析とは?やり方・テンプレート・事例をわかりやすく解説」で解説しています。
Product(商品)
しまむらの商品戦略は、「幅広い実用品」と「来店理由になる企画商品」の組み合わせです。
- レディース、メンズ、キッズ、肌着、寝具、インテリア、雑貨まで扱う
- PB「CLOSSHI」で機能性と着心地を訴求
- 「CLOSSHI PREMIUM」で高機能・高付加価値の商品を拡大
- JBでトレンドやコーディネートを提案
- インフルエンサー、タレント、キャラクターとのコラボ
- EC限定商品、予約商品、イレギュラーサイズで店舗を補完
- 多品種・少量で商品の入れ替わりと発見性を維持
幅広い実用品をそろえながら、機能性商品で目的買いを、コラボ商品で話題買いを、多品種・少量の品揃えで予定外の購入を生み出しています。
Price(価格)
しまむらの価格戦略の中心は、低価格と「価値と価格のバランス」です。
ローコストな店舗運営、既存物流網の活用、商品の完全買取、生産・調達の効率化などにより、販売価格を抑えています。
ただし、すべてを最安値にするのではありません。「CLOSSHI PREMIUM」のように、機能や品質を高めた商品には相応の価格を設定し、顧客が納得できる範囲で1点単価を引き上げています。
つまり、しまむらのPriceは「一律に安い」から、「基本は安く、価値が明確な商品には少し高く払ってもらう」へ進化しています。
Place(流通)
しまむらのPlaceで最大の強みは、全国の店舗網です。
- 郊外を中心とした身近な店舗
- 標準化された売場とローコスト運営
- ドミナント出店と複数事業の組み合わせ
- 店舗受取に対応した自社EC
- 店舗在庫の検索・取り寄せ
- 既存物流網を利用したローコストEC
- 不振店舗の閉鎖、移転、改装による商圏の最適化
店舗は販売場所であると同時に、EC商品の受取拠点、実物を確認する場所、追加購入の場でもあります。店舗とECを別々に考えず、一つの顧客体験として設計していることが特徴です。
中期経営計画の当初計画では、EC売上高を2024年2月期の72億4,000万円から2027年2月期に180億円へ伸ばす目標でした。その後、2026年2月期のEC売上高が196億円まで拡大したため、会社は2027年2月期の目標を210億円へ上方修正しています。EC単体の売上だけでなく、店舗受取による来店や追加購入まで考えると、ECの役割は売上数値以上に大きいといえます。
Promotion(販促)
しまむらのPromotionは、オフラインとデジタルを組み合わせています。
- 新聞折込チラシ、WEBチラシ
- テレビCM、WEB広告、動画広告
- Instagram、X、アプリなどのSNS・自社メディア
- 「#しまパト」に代表されるUGC
- インフルエンサーとの共同企画・ライブコマース
- キャラクターや有名タレントとのコラボ
- 「超サプライズセール」などの重点催事
- アプリ通知、会員制度、ポイント制度
- 売場、POP、VMDと広告の連動
特徴は、販促が商品開発と切り離されていないことです。
インフルエンサーと一緒に商品を企画し、SNSで発売を告知し、ECで予約を受け付け、店舗で関連商品を見せる。この一連の流れによって、認知から購入までを短くしています。
また、画像・動画制作の内製化によって、低コストかつ短期間でクリエイティブを作り、天候や売上に応じて配信内容を変えられるようにしています。
4Pの整合性が強さを生む
しまむらの4Pは、ばらばらの施策ではありません。
「話題性のある多品種・少量の商品(Product)」を、「手に取りやすい価格(Price)」で、「身近な店舗とEC(Place)」から販売し、「SNS・チラシ・催事(Promotion)」で短期間に認知を広げています。
この4Pが、「今行けば何か見つかるかもしれない」という来店理由を作っています。
まとめ
しまむらのマーケティング戦略は、低価格だけで説明できません。
強さの本質は、ローコスト経営と全国の店舗網を基盤に、次の要素を組み合わせていることです。
- PB・JBで機能性と独自性を高める
- 多品種・少量で宝探し感を生む
- インフルエンサーとキャラクターで新しい来店理由を作る
- 「#しまパト」など顧客の発信を認知拡大につなげる
- ECと店舗受取でオンラインから店舗へ送客する
- デジタル広告と制作内製化で販促効率を高める
- 会員・購買データを商品、売場、販促へ還元する
一言で表すなら、しまむらは従来の安さと店舗網に、発見の楽しさ、話題性、デジタルの利便性を重ねることで成長しています。
今後の注目点は、2026年3月に始まったポイント制度と顧客データ活用です。パーソナライズを進めながら、しまむららしい偶然の出会いや宝探し感を失わずにいられるかが、次の成長を左右するでしょう。
店舗の強みをデジタルで代替するのではなく、デジタルで店舗の価値を高める。そこに、しまむらのマーケティングから学べる最大のポイントがあります。
