オーケーのマーケティング戦略|業績・10年の施策・3C分析・4P分析

「オーケーは、なぜ特売日を設けずに顧客を集められるのか」
その理由は、価格の安さだけではありません。
オーケーは「高品質・Everyday Low Price」を経営方針に掲げ、毎日低価格で販売する仕組みを作っています。さらに、競合店対抗値下げ、オーケークラブの会員割引、正直な商品情報を伝える「オネストカード」を組み合わせ、価格と品質への信頼を積み重ねてきました。
2026年3月期の売上高は7,544億円、営業利益は410億円でした。期末店舗数は174店となり、関東での店舗網を拡大しながら、関西への出店も本格化しています。
オーケーは非上場企業ですが、公式サイトで業績を詳しく開示しています。本記事の業績数値は、オーケー株式会社の公表資料を使用します。
オーケーの直近の業績
2026年3月期は売上高7,544億円
オーケーの2026年3月期は増収増益となりました。
以下は、2026年7月27日時点で確認できる最新の通期業績です。
| 指標 | 2026年3月期実績 | 前年同期比 | 売上高比 |
|---|---|---|---|
| 売上高(テナント除く) | 7,544億8,657万円 | 10.0%増 | 100.0% |
| 営業利益 | 410億100万円 | 5.9%増 | 5.4% |
| 経常利益 | 423億7,589万円 | 6.1%増 | 5.6% |
| 税引後当期純利益 | 289億5,500万円 | 6.8%増 | 3.8% |
売上高は前期から約685億円増加しました。既存店売上高も前年比6.4%増となっています。
既存店では、客数が3.9%増、客単価が2.4%増でした。新規出店だけでなく、既存店でも利用者と購入金額を伸ばしている点が重要です。
一方、経常利益率は前期の5.81%から5.60%へ低下しました。売上原価率も前期の78.13%から78.37%へ上昇しています。低価格を維持しながら出店を増やす局面では、仕入れ、物流、人件費を含めたコスト管理が一段と重要になります。
15店を新規出店し、期末174店へ
2026年3月期には、関東10店、関西5店の合計15店を出店しました。会社によれば、1年間の新規出店数として過去最多です。
2026年3月期末の店舗数は、関東167店、関西7店の合計174店でした。2025年3月期末の159店から、約9.4%増えています。
| 店舗関連指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
| 期末店舗数 | 159店 | 174店 |
| 関東 | 157店 | 167店 |
| 関西 | 2店 | 7店 |
| 期末売場面積 | 25万6,337㎡ | 28万304㎡ |
| 期末従業員数 | 1万8,609人 | 2万859人 |
2027年3月期は、既存店と期首時点の店舗だけで売上高8,297億円を見込んでいます。この予算には、2027年3月期中に開店する新店の売上を含めていません。
物価高で節約志向が強まるなか、オーケーの低価格は強い来店動機になります。ただし、会社は買上点数を今期の課題として挙げています。今後は客数と客単価だけでなく、一度の来店で選ばれる商品を増やせるかが焦点です。
オーケーの直近10年の主なマーケティング施策
オーケーの直近10年は、新しいキャッチコピーへ頻繁に変更した期間ではありません。
1986年から続く「高品質・Everyday Low Price」を軸に、物流、会員制度、ネットスーパー、アプリ、出店地域を拡張した期間です。変わらない価値を、新しい顧客接点と店舗網へ広げてきたといえます。
2016年:成長を支える物流・店舗計画を公表
2016年、オーケーは物流センター2カ所の建設、新店80〜100店、年商6,000億円を目標とする5年計画を公表しました。同年には、本社を横浜・みなとみらいへ移転しています。
低価格を継続するには、広告表現だけでなく、商品を安く仕入れ、効率よく店舗へ運ぶ仕組みが必要です。物流拠点と店舗網への投資は、Everyday Low Priceを広い地域で実現するための基盤となりました。
2017〜2019年:会員基盤と物流網を拡大
オーケークラブの会員数は、2017年3月の約419万人から、2019年3月には約491万人へ増加しました。
オーケークラブでは、酒類を除く食料品を現金で購入すると、本体価格の3/103、3%相当額が割引されます。特売日の代わりに日常の買い物へ会員特典を設けることで、継続利用を促す仕組みです。
2019年には、寒川、流山、川口の3物流センターが順次稼働しました。店舗数が増えても低価格と品揃えを維持するため、調達と配送の効率化を進めています。
2020年:内食需要の増加と低価格イメージの定着
新型コロナウイルスの感染拡大によって、家庭で食事をする機会が増えました。オーケーは生活必需品を扱う店舗として営業を続け、2020年3月にはオーケークラブ会員が約544万人に達しています。
外部環境による需要増は、企業の施策だけで生まれたものではありません。しかし、特定日のセールに頼らず、いつ来店しても安いという方針は、日常的に食品を購入する顧客の需要と合致しました。
2021年:オーケーネットスーパーを開始
2021年10月、みなとみらい店と仲池上店を起点に「オーケーネットスーパー」を開始しました。
高齢化やコロナ禍を背景に、店舗へ行くことが難しい顧客の声へ対応した施策です。店舗の商品を自宅へ届けることで、オーケーの商圏を店舗の来店客から配送エリア内の生活者へ広げました。
ネットスーパーの利用者もオーケークラブ会員が対象です。2024年7月時点では対象店舗が25店まで拡大しました。
2022年:会員アプリを開始し、関西進出へ動く
2022年、オーケーは会員カードをスマートフォンへ引き継げる「オーケークラブ会員カードアプリ」を開始しました。
アプリでは会員証を表示できるほか、商品情報紙やおすすめ商品を確認できます。紙のカードをデジタル化し、店舗外でも商品情報へ触れられる接点を作りました。
同年10月には、大阪府東大阪市の土地を取得。関東を中心に展開してきたオーケーが、関西へ進出するための具体的な準備に入りました。
2023年:銀座店で都市型需要を開拓
2023年10月、商業施設「マロニエゲート銀座2」にオーケー銀座店を開店しました。
銀座店は、地域住民だけでなく、近隣の業務用顧客、買い物客、仕事帰りの利用者も対象としています。郊外のまとめ買い需要だけでなく、都心の生活需要と業務需要を取り込む店舗です。
銀座という注目度の高い立地への出店は、「低価格スーパーは郊外にある」という印象を広げる契機にもなりました。銀座店は「STORE OF THE YEAR 2024」の店舗部門で1位を獲得しています。
2024年:冷凍物流を内製化し、関西へ初出店
2024年5月、オーケーは自社冷凍物流センターを稼働しました。
冷凍食品、アイス、惣菜原料などを自社の店舗物流網で扱い、センター着原価で仕入れる仕組みです。物流を効率化し、取扱商品の見直しと売価の強化につなげる狙いがあります。
同年11月には、関西1号店となる高井田店を東大阪市に開店。2025年1月には西宮北口店を開き、大阪府と兵庫県で店舗展開を始めました。
関西には価格競争力の高いスーパーが多くあります。オーケーは、関東で築いた「高品質・Everyday Low Price」、競合店対抗値下げ、会員割引をそのままブランドの核として持ち込みました。
2025〜2026年:関西出店と店舗網拡大を加速
2026年3月期は過去最多となる15店を出店し、期末174店へ拡大しました。関西の店舗数は2店から7店へ増えています。
新しい地域で価格イメージを定着させるには、開店時の安さだけでは不十分です。毎日の価格、品質、欠品の少なさ、接客を積み重ね、「地域一番店」として選ばれる必要があります。
2026年には関西で新たな店舗を開業し、今後の出店予定も公表しています。オーケーのマーケティングは、広告で商圏を一気に広げる方法ではありません。店舗を増やし、各地域で同じ約束を守ることで、ブランドを広げる戦略です。
10年間で変わったもの・変わらなかったもの
| 変わらなかったもの | 直近10年で拡張したもの |
| 高品質・Everyday Low Price | 関東から関西への店舗網 |
| 特売日に依存しない価格 | 常温・冷凍の物流基盤 |
| 競合店対抗値下げ | ネットスーパー |
| オネストカードによる正直な情報 | 会員カードアプリ |
| 会員向け3%相当額割引 | 銀座など新しい立地・顧客層 |
オーケーの直近10年は、マーケティングの核を変えるのではなく、提供できる地域と接点を増やした期間と整理できます。
オーケーの3C分析
3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つから事業環境を整理するフレームワークです。詳しい進め方は「3C分析とは?やり方・順番・テンプレート・具体例をわかりやすく解説」も参考にしてください。
Customer(市場・顧客)
オーケーの中心顧客は、日常的に食品や生活用品を購入する生活者です。所得や年齢だけでなく、価格と品質を合理的に比較したい人へ広く支持される設計になっています。
現在の顧客ニーズには、次の特徴があります。
- 物価高のなかでも食費を抑えたい
- 安さだけでなく、鮮度、味、安全性も重視したい
- 特売日に合わせず、必要な日に安く買いたい
- 複数店舗を回らず、一つの店で買い物を済ませたい
- 価格が安い理由や、商品の状態を正確に知りたい
- 会員特典で継続的に得をしたい
- 店舗へ行けないときはネットスーパーを使いたい
オーケーのEDLPは、「安い日に合わせて買う」のではなく、「買いたい日に安く買う」という需要へ応えます。
オネストカードも重要です。値上げ予定や商品の品質、旬、代替商品の情報まで正直に伝えることで、短期的な販売より顧客の納得を優先します。
Competitor(競合)
オーケーの競合は、食品スーパーだけではありません。低価格や利便性を強みにする複数の業態と競争しています。
| 競合 | 主な強み | オーケーとの競争軸 |
| 総合スーパー・食品スーパー | 生鮮食品、惣菜、地域密着、ポイント | 品質、価格、品揃え、近さ |
| ディスカウントスーパー | 食品・日用品の低価格、大型店 | 価格、買上点数、まとめ買い |
| 業務用スーパー | 大容量、輸入品、独自商品 | 単価、容量、独自性 |
| ドラッグストア | 日用品、加工食品、ポイント還元 | 価格、利便性、会員特典 |
| 会員制倉庫型店 | 大容量、限定商品、買い物体験 | まとめ買い、商品力、会員価値 |
| ネットスーパー・EC | 配送、検索性、時間短縮 | 利便性、配送範囲、価格 |
一般的なスーパーは、曜日別セール、ポイント倍増、クーポンなどで来店日を作ります。オーケーは、特売日を設けず、日常価格の安さを来店理由にしています。
ポイント還元を中心にする競合と比べ、オーケーの会員特典は現金払い時の値引きです。将来使うポイントではなく、その場で支払額が下がる分かりやすさがあります。
一方で、キャッシュレス決済を好む顧客には、現金払い限定の会員割引が不便に映る可能性があります。配送の即時性やデジタル上の提案力でも、ECや大手ネットスーパーとの競争が続きます。
Company(自社)
オーケーの主な強みは、次のとおりです。
- 「高品質・Everyday Low Price」という明確な約束
- 特売に頼らず、価格イメージを毎日積み上げる仕組み
- 競合店対抗値下げによる価格への信頼
- オネストカードによる正直な商品情報
- 生鮮食品で品質を先に吟味し、その上で安さを訴求する方針
- 毎週の商品会議で、実際に食べ、使って商品を選ぶ仕組み
- 776万人を超えるオーケークラブの会員基盤
- 常温・冷凍の物流網と低い経費率
- 関東の高密度な店舗網と関西への出店余地
- 実質無借金の財務基盤
一方で、弱みや課題もあります。
- 店舗が関東に集中し、全国で利用できるブランドではない
- 関西では、認知と固定客を一から増やす必要がある
- 会員割引が現金払いに限られ、キャッシュレス志向と相反する
- ネットスーパーの対象地域と利用条件に制約がある
- 低価格を維持するほど、原価や人件費上昇の影響を受けやすい
- 急速な出店で、品揃え、欠品、接客の品質に差が出る可能性がある
- アプリを通じた個別提案や販促には拡張余地がある
3C分析からわかるオーケーの勝ち筋
3C分析から見えるオーケーの勝ち筋は、「いつでも安い」という予測可能性に、「品質」と「正直さ」を組み合わせることです。
価格だけなら、一時的な特売やクーポンで対抗できます。しかし、顧客が他店の価格を細かく調べなくても、「オーケーなら高く買う可能性が低い」と感じる状態は、長期間の一貫した運営がなければ作れません。
オネストカードは、販売に不利な情報も伝える仕組みです。短期的な売上を犠牲にしても、顧客との長期的な信頼を優先する姿勢が、EDLPの価格信頼と結びついています。
今後は、この信頼を関西でも再現し、アプリやネットスーパーでも同じ体験を提供できるかが成長の鍵になります。
オーケーの4P分析
4P分析は、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の整合性を確認するフレームワークです。基本的な考え方は「4P分析とは?やり方・テンプレート・事例をわかりやすく解説」で解説しています。
Product(商品)
オーケーの商品戦略は、「安い商品を大量に並べること」ではなく、品質を確認した商品を低価格で提供することです。
- 生鮮食品は、鮮度、美味しさ、品質を先に吟味する
- 毎週の商品会議で、食品を試食し、食品以外も使い比べる
- 価値、味、安全性、健康、便利さを確認して導入する
- 一部の食品添加物を使用した商品を扱わないようにする
- ナショナルブランドと独自商品を組み合わせる
- 惣菜、寿司、ベーカリーなど来店頻度を高める商品を扱う
- 商品の状態や価格変動をオネストカードで伝える
商品数を増やすこと自体を目的にせず、納得した商品を選ぶことで、「安いが品質も悪くない」という評価を作っています。
Price(価格)
オーケーのPrice戦略は、4Pの中心です。
- 「Everyday Low Price」で毎日低価格を維持する
- 特売日を設けず、買い物する日による不公平感を減らす
- ナショナルブランド商品は地域一番の安値を目指す
- 店舗から1km圏内の有力競合店を調査し、必要に応じて対抗値下げする
- 仕入れ価格が下がった商品は「更にお買徳」として還元する
- オーケークラブ会員は、現金払いで食料品を3%相当額割引する
- 買い物袋や一部サービスを有料にし、低価格の原資を守る
価格の安さを一時的なキャンペーンにせず、通常価格として定着させている点が特徴です。
オーケークラブの割引は、酒類を除く食料品が対象です。入会金・年会費は無料ですが、カード発行費用として200円が必要です。割引は現金払いに限られます。
Place(流通)
オーケーのPlace戦略は、高密度な関東店舗網と、それを支える物流基盤です。
- 2026年3月期末で関東167店、関西7店
- 住宅地や郊外の生活圏へ出店
- 銀座など都心の商業施設にも出店
- 大型店だけでなく、商圏に合わせた店舗規模を採用
- 常温、冷凍、生鮮を支える物流網を整備
- 店舗を拠点にしたネットスーパーを展開
- 2024年から関西へ進出し、出店地域を拡大
店舗を一定地域へ集中させれば、物流効率とブランド認知を高めやすくなります。関東で築いた仕組みを、物流拠点とともに関西へ移植できるかが重要です。
ネットスーパーは、店舗への来店が難しい顧客を補完するチャネルです。ただし、店舗の商圏と配送網を利用するため、全国へ一度に展開するECとは性質が異なります。
Promotion(販促)
オーケーの販促は、特売日の告知より、通常価格と商品の情報を伝えることが中心です。
- 毎週月曜日に商品情報紙を発行する
- 値下げ商品や新商品を店頭POPで知らせる
- 競合店対抗値下げの事実をPOPで示す
- オネストカードで、値上げ予定や品質上の注意点も伝える
- 会員カードアプリで商品情報や会員証を提供する
- 公式X、Instagramで商品や新店情報を発信する
- ご意見箱から顧客の要望を集め、商品や店舗改善へつなげる
- メディア評価や口コミを信頼の裏付けとして活用する
オーケーは、2001年に特売チラシを廃止し、商品情報紙へ切り替えました。安い日を宣伝して集客するのではなく、毎日の価格と商品の変化を知らせる考え方です。
また、TBSラジオの「スーパー総選挙」では、第1回から第4回まで1位となりました。企業が発信する広告だけでなく、利用者の評価がブランド認知と信頼を広げています。
4Pは「毎日の信頼」を中心に連動している
| 4P | 主な施策 | 顧客に生まれる価値 |
| Product | 品質を確認した商品、生鮮、惣菜 | 安くても品質を選べる |
| Price | EDLP、競合店対抗値下げ、会員割引 | 買う日を選ばず得をしやすい |
| Place | 関東の店舗網、関西進出、ネットスーパー | 日常の買い物で利用できる |
| Promotion | 商品情報紙、POP、オネストカード | 価格と商品の理由を理解できる |
オーケーの4Pは、派手な広告キャンペーンを中心にしていません。商品、価格、売場、情報発信を一貫させ、「今日も高品質で安い」という期待を裏切らないこと自体が販促になっています。
まとめ
オーケーのマーケティング戦略は、「高品質」「Everyday Low Price」「正直」「効率」の4つで整理できます。
- 品質を確認した商品を販売する
- 特売日に頼らず、毎日低価格を維持する
- 競合店対抗値下げで、価格への信頼を作る
- オネストカードで、販売に不利な情報も正直に伝える
- オーケークラブの割引で、継続利用を促す
- 物流と店舗運営を効率化し、低価格の原資を作る
- ネットスーパーとアプリで、店舗外の接点を増やす
- 関西へ出店し、成長地域を広げる
とくに重要なのは、価格と信頼が別々の施策ではないことです。
競合店より高ければ値下げし、商品の状態が悪ければ正直に知らせる。この一貫性によって、「安いから一度行く店」ではなく、「価格を細かく比較しなくても安心して通える店」を目指しています。
オーケーの成長モデルは、次の循環で整理できます。
物流と運営を効率化する → 毎日の価格を下げる → 来店と会員を増やす → 販売量を増やす → 仕入れと運営をさらに効率化する
一方で、原価と人件費の上昇、現金払いに限られる会員割引、ネットスーパーの利用条件、関西での認知獲得は課題です。出店を加速するなかでも、商品の品質、欠品の少なさ、接客、価格への信頼を維持する必要があります。
オーケーの強さは、目新しい販促を次々と打ち出すことではありません。「高品質・Everyday Low Price」という約束を、商品選定、価格、物流、店舗、情報発信のすべてで守り続けている点にあります。
