飲食店の商圏分析とは?無料ツールでできる調べ方と2店舗目の出店判断

飲食店の商圏分析とは?無料ツールでできる調べ方と2店舗目の出店判断

飲食店の商圏分析とは、店舗周辺の人口・世帯構成・昼間人口・交通動線・競合店などを調べ、出店判断や集客改善に活かす分析です。日本国内では、e-Stat(jSTAT MAP)・RESAS・Googleマップなどの無料ツールで実践的な分析ができます。本記事では、商圏分析で見るべき項目、具体的な手順、業態別のポイント、そして2店舗目以降の出店判断で必要になる考え方までを解説します。

この記事でわかること

  • 飲食店の商圏分析で見るべき基本項目
  • jSTAT MAP・RESAS・Googleマップを使った無料分析の流れ
  • 駅前・住宅街・ロードサイド・観光地で見るべき違い
  • 2店舗目以降の出店で確認すべきカニバリと勝ちパターン
  • 出店判断を感覚ではなくデータで行うための考え方
目次

飲食店に商圏分析が必要な理由

飲食店は、商品力だけで成り立つビジネスではありません。同じラーメン店でも、駅前・住宅街・ロードサイド・観光地・オフィス街では、売れる時間帯・客単価・注文されるメニューが変わります。

出店前や集客改善の段階で「この場所では、誰に、何を、どの時間帯に売るべきか」を見極める必要があります。この見極めに使うのが商圏分析です。

商圏分析では、店舗の周辺にどのような人が住み、働き、移動し、どのような飲食ニーズがあるのかを調べます。感覚だけで判断するのではなく、統計データ・競合情報・地図サービス・既存店舗の売上データを組み合わせることで、精度の高い判断ができます。

日本国内では、無料で使える公的データや地図サービスが充実しています。小規模な飲食店でも、正しい手順を踏めば実用的な商圏分析を行うことが可能です。

商圏分析で見るべき項目

周辺人口と世帯構成

店舗周辺にどれくらいの人が住んでいるのか、年齢層や世帯構成はどうなっているのかを確認します。

単身世帯が多い地域であれば、定食・弁当・テイクアウト・ひとり利用しやすい業態との相性が良くなります。ファミリー層が多い地域であれば、駐車場の有無、子ども向けメニュー、座席の広さ、休日の需要が重要になります。

昼間人口

昼間人口とは、その地域に昼間どれくらいの人がいるかを示す考え方です。オフィス街や学校周辺では、居住人口よりも昼間人口のほうが重要です。

ランチ営業を重視する飲食店では、周辺の事業所数・従業者数・学校・公共施設などを確認する必要があります。同じ人口1万人の地域でも、住宅中心とオフィス中心では売れる時間帯がまったく違います。

交通動線

駅からの距離、バス停、駐車場、幹線道路、交差点、人が歩く方向などを見ます。

駅前型なら徒歩導線が重要です。ロードサイド型なら車での入りやすさが集客に直結します。住宅街型なら近隣住民のリピート性が鍵になります。日本の飲食店では、数十メートルの違いで集客力が変わることがあります。

競合店の数と質

競合調査では、同じジャンルの「同業競合」だけでなく、同じ利用目的を満たす「利用シーン競合」も確認します。

たとえば、カフェの競合はカフェだけではありません。ファミレス・ベーカリー・コンビニのイートイン・コワーキングスペース・駅ナカの休憩スペースも、時間調整や作業、待ち合わせという目的では競合になります。

無料で使える商圏分析ツール

e-StatとjSTAT MAP

e-Statは、日本の政府統計を閲覧できるポータルサイトです。人口・世帯・地域別の統計データを確認できます。

jSTAT MAPは、e-Stat内で提供されている地理情報システム(GIS)です。統計データを地図上に表示でき、小地域(町丁・字)や地域メッシュ単位で人口・世帯数・年齢構成などを確認できます。

飲食店の商圏分析で使う場合、出店候補地を指定し、半径500m・1km・2kmなどのエリアを作成します。その範囲内の人口・年齢層・世帯構成を確認します。ログインすることで、指定エリアの統計数値を自動でまとめるリッチレポート機能も利用できます。

RESAS

RESASは、経済産業省と内閣官房が提供するデータプラットフォームです。地域の人口推移・産業構造・人流・事業所立地などを地図やグラフで可視化できます。登録不要・全メニュー無料で利用できます。

飲食店の商圏分析では、地域の人口推移や性年代別人口構成を見ることで、今後その地域で飲食需要が伸びるのか、縮小するのかを判断しやすくなります。

2026年1月時点のアップデートで「地域ビジネス環境分析」メニューが追加されました。都道府県・市区町村を選択するだけで、将来の人口増減・業種別の事業所数・従業者数・地域住民の消費状況が一括で確認できます。出店候補エリアの比較に使いやすい機能です。

統計でみる都道府県・市区町村のすがた

総務省統計局が整備するデータで、市区町村単位の人口・世帯・労働・居住・健康・福祉などの地域データを確認できます。出店候補エリア同士を比較するときに役立ちます。

Googleマップ

競合調査にはGoogleマップが有効です。自店のジャンルだけでなく、「ランチ」「カフェ」「テイクアウト」「居酒屋」「記念日」など利用シーンに近い言葉で検索します。

確認すべき項目は、店舗数・評価・口コミ件数・価格帯・写真の印象・メニュー・営業時間・混雑時間・駐車場の有無です。飲食店では、Googleマップ上の見え方が来店判断に直結します。競合のGoogleビジネスプロフィールを確認し、自店がどのポジションで勝負すべきかを見極めることが重要です。

無料ツールでできること・できないこと

無料ツールでも、人口・世帯構成・昼間人口の傾向・競合店の分布・口コミ評価・交通動線の確認は可能です。出店候補地を絞り込む段階では十分に役立ちます。

一方で、リアルタイムの人流データ、詳細な購買データ、競合店の正確な売上、来店客の住所分布までは無料ツールでは把握できません。

無料ツールで候補地を絞り込み、現地調査や既存店データで補完する流れが現実的です。最初から完璧なデータを求めるのではなく、出店判断の不確実性を減らすために使うと考えると活用しやすくなります。

商圏分析の手順

手順1:出店候補地を絞る

まず、出店候補となるエリアを具体的に設定します。「〇〇市で出したい」程度では範囲が広すぎます。「〇〇駅徒歩10分圏内」「〇〇通り沿い」「〇〇商業施設周辺」くらいまで絞ると、分析結果を実務に活かしやすくなります。

手順2:一次商圏・二次商圏を設定する

来店が見込める範囲を設定します。業態によって設定の仕方が変わります。

徒歩型の飲食店(駅前のランチ店・カフェ・居酒屋・小規模レストラン)では、まず足元商圏として半径300〜500m、次に徒歩10〜15分圏内となる500m〜1km程度を一次商圏として確認します。駅前・ランチ・カフェのように日常利用が中心の業態では、特に500m圏内の人流と競合状況が重要です。

ロードサイド型の飲食店(駐車場付きのラーメン店・焼肉店・ファミリーレストラン・郊外型カフェ)であれば、車で5分・10分・15分の範囲で考えます。距離よりも車での移動時間を重視したほうが現実的です。

観光地や目的来店型の店舗であれば、単純な半径ではなく、観光動線・宿泊施設・道の駅・温泉地からの人の流れを見る必要があります。

手順3:人口・世帯・年齢層を確認する

jSTAT MAPやe-Statを使い、商圏内の人口・世帯数・年齢構成を確認します。

若年層が多い地域であれば、価格感度が高く、SNS映えやボリューム訴求が効く可能性があります。高齢者が多い地域であれば、和食・定食・昼営業・持ち帰り・健康志向メニューとの相性が高くなります。

手順4:昼間人口を確認する

ランチ需要を狙うなら、居住人口よりも昼間人口が重要です。周辺にオフィス・工場・学校・病院・役所・商業施設があるかを確認します。

オフィス街なら平日昼が強く、住宅街なら平日夜や土日が強い傾向があります。ここを見誤ると、ランチ需要がない場所でランチに力を入れたり、夜需要が弱い場所で居酒屋業態を出したりする失敗が起きます。

手順5:Googleマップで競合を調べる

自店の業態に近いキーワードだけでなく、利用シーンに近い言葉でGoogleマップを検索します。

たとえば、イタリアンを出すなら「イタリアン」に加えて「ランチ」「カフェ」「パスタ」「記念日」「テイクアウト」などでも検索します。見るべきは店舗数・評価・口コミ件数・価格帯・写真・営業時間・混雑時間です。

飲食店の集客では、Googleビジネスプロフィールの設定が来店率を大きく左右します。競合店のプロフィールを確認することで、自店が打ち出すべき強みが見えてきます。

手順6:現地を歩いて確認する

データだけでは判断できない情報があります。現地調査は必ず行いましょう。

確認するのは、人の流れ・歩道の広さ・信号待ちの位置・看板の見え方・駐車場への入りやすさ・周辺店舗の客層・夜の明るさ・曜日や時間帯ごとの人通りです。

現地調査は、できれば平日昼・平日夜・土日昼・土日夜の複数回行います。雨の日と晴れの日で人通りが変わる場所もあります。駅前・商業施設・観光地では、曜日や天候による差を見ないと実際の集客力を読み違える可能性があります。

同じ駅徒歩5分でも、人が流れる通りと流れない通りがあります。地図上では近く見えても、踏切・大通り・坂・信号の有無で心理的距離は大きく変わります。データで候補を絞り、現地で最終確認する流れが現実的です。

業態別の商圏分析ポイント

商圏タイプ 向いている業態 重視する指標
駅前型 居酒屋、カフェ、ラーメン、ファストカジュアル 乗降客数、人通り、視認性
オフィス型 ランチ、弁当、定食、テイクアウト 昼間人口、事業所数、提供速度
住宅街型 定食、カフェ、ファミリー向け飲食店 世帯数、年齢層、リピート率
ロードサイド型 焼肉、ラーメン、ファミレス、郊外カフェ 駐車場、交通量、車導線
観光地型 カフェ、郷土料理、食べ歩き、土産併設 観光動線、季節変動、写真映え

ランチ中心の飲食店では、昼間人口・周辺事業所・提供スピード・価格帯を重視します。周辺に会社員が多い場合、1,000円前後で早く食べられるメニューが強くなります。

居酒屋では、夜間の人流・駅からの帰宅動線・周辺企業・繁華街との距離を見ます。住宅街の居酒屋なら常連化が重要で、繁華街なら新規流入と口コミが鍵です。

カフェでは、滞在需要・客層・周辺施設との相性を見ます。駅前なら回転率、住宅街なら居心地、観光地なら写真映えやテイクアウトが重要です。

ロードサイド型では、交通量・駐車場・視認性・入りやすさ・家族利用を見ます。人口密度よりも車で来やすいかどうかが売上を左右します。

立地が悪い飲食店の集客方法については、別記事で詳しく解説しています。立地のハンデがある場合でも、商圏を正しく理解すれば戦い方が見えてきます。

2店舗目以降の出店で商圏分析が重要になる理由

1店舗目は、経営者の感覚や現場力で成功することがあります。しかし、2店舗目以降は「なぜ1店舗目が成功したのか」を言語化しないまま出店すると、再現性が低くなります。

1店舗目の繁盛理由が、料理の味なのか、店主の接客なのか、駅前立地なのか、競合が少ないからなのか、ランチ需要が強いからなのかを分解する必要があります。

この分解をしないまま2店舗目を出すと、「同じメニューなのに売れない」「同じ価格なのに高いと言われる」「同じSNS運用なのに反応が弱い」という問題が起きやすくなります。

既存店の商圏を分析する

2店舗目を検討するとき、まず既存店の商圏を分析します。周辺人口・昼間人口・競合状況・客層・売上構成・人気メニュー・来店時間帯を整理します。そのうえで、出店候補地が既存店とどれくらい似ているかを比較します。

既存店のデータを整理する際は、以下のような項目で棚卸しを行うと比較しやすくなります。

確認項目 見るべき内容 2店舗目での使い方
売上構成 ランチ・ディナー・テイクアウト・宴会の比率 同じ需要がある立地か確認する
客層 会社員、家族連れ、学生、観光客、常連客 候補地の人口・昼間人口と照合する
来店時間帯 平日昼、平日夜、土日、繁忙期 営業時間と人員配置を設計する
人気メニュー 注文数、粗利、提供時間、リピート性 新店で再現できる商品を見極める
集客経路 Googleマップ、SNS、紹介、通りがかり 候補地で同じ集客導線を作れるか確認する

ここで大事なのは、「人口が多い場所」を単純に選ばないことです。既存店の勝ちパターンに合う場所を選ぶ必要があります。

既存店が「住宅街のファミリー層」に強いなら、2店舗目もファミリー層が多く、駐車場が確保できるエリアが候補になります。既存店が「平日ランチの会社員需要」で伸びているなら、昼間人口が見込める場所を探します。

カニバリを確認する

カニバリとは、新店舗が既存店の売上を奪ってしまうことです。同じ市内に2店舗目を出す場合、商圏が重なりすぎると、会社全体の売上は増えず、家賃や人件費だけが増える可能性があります。

確認する方法は、既存店の顧客がどこから来ているかを見ることです。Googleビジネスプロフィールのパフォーマンスデータでは、検索経路やユーザー行動の傾向を確認できます。ただし、実際の来店客の住所を正確に把握できるものではないため、予約台帳・LINE公式アカウント・ポイントカード・アンケート・デリバリー注文エリアなどと組み合わせて実商圏を推定することが重要です。

新店舗の想定商圏と重なる範囲が大きい場合は、業態を変える・価格帯を変える・営業時間を変える・ターゲットを変えるなどの工夫が必要です。

「完全コピー」ではなく「勝ちパターンの移植」で考える

2店舗目で失敗しやすいのは、1店舗目をそのままコピーしようとすることです。コピーすべきなのは、内装やメニューそのものではなく、勝ちパターンです。

1店舗目の勝ちパターンが「会社員向けに、早く提供できる高満足ランチ」なら、同じような昼間人口のある場所を選び、提供スピードと価格帯を合わせる必要があります。

勝ちパターンが「住宅街で家族利用される店」なら、駐車場・席の広さ・子ども対応・休日需要を重視します。

勝ちパターンが「SNSで話題化し、目的来店を生む店」なら、駅距離よりも写真映え・独自性・投稿されやすさ・観光動線との相性を見るべきです。

2店舗目以降の商圏分析では、「場所に店を合わせるのか、店に合う場所を探すのか」を明確にすることが重要です。

商圏分析で失敗しないための視点

商圏人口が多い=出店向きではない

人口が多くても、競合が強すぎる・家賃が高すぎる・ターゲットが合わない場合は失敗します。人口の量だけでなく、自店の業態と合う客層がどれくらいいるかを見る必要があります。

昼と夜で商圏が変わる

昼は会社員、夜は住民、週末はファミリーというように、時間帯ごとに客層が変わる地域があります。飲食店では、この時間帯別の需要を見ることが重要です。営業時間と客層のミスマッチは、売上に直結する問題です。

商圏が良くても、家賃と損益分岐点を確認する

商圏分析で需要が見込める場所でも、家賃・人件費・原価を考えると採算が合わないケースがあります。出店判断では、想定売上だけでなく、家賃比率・必要客数・客単価・席数・回転数をセットで確認する必要があります。

たとえば、ランチ中心の店舗であれば、平日昼の客数だけで固定費をどこまで回収できるかを試算します。夜営業やテイクアウトで補えるのか、週末需要があるのかも含めて確認すると、出店後の資金繰りリスクを抑えやすくなります。

1店舗目の成功理由を分解してから2店舗目を出す

多店舗展開では、「成功した店を真似る」のではなく、「成功した理由を再現できる立地を探す」ことが必要です。商圏分析を感覚ではなく仕組みにすることで、出店判断の精度が上がります。

飲食店の経営指標と組み合わせることで、商圏データの読み取り精度も向上します。

飲食店の出店判断チェックリスト

  • 商圏内の人口・世帯構成は業態と合っているか
  • 昼間人口と夜間人口のどちらを狙う店なのか明確か
  • 同業競合だけでなく、利用シーン競合も確認したか
  • 駅・駐車場・幹線道路・歩行者動線を現地で確認したか
  • 想定客単価・席数・回転数から必要売上を試算したか
  • 家賃比率が売上の10%以内に収まる見込みはあるか
  • 2店舗目の場合、既存店とのカニバリを確認したか
  • 既存店の勝ちパターンを候補地で再現できるか

まとめ

飲食店の商圏分析は、店舗周辺の人口・年齢層・世帯構成・昼間人口・交通動線・競合状況を調べる分析です。日本国内では、e-Stat・jSTAT MAP・RESAS・Googleマップを活用することで、無料でも実践的な分析ができます。

1店舗目では、出店候補地にどのような需要があるかを見ることが重要です。2店舗目以降では、既存店の成功要因を分解し、その勝ちパターンを再現できる商圏かどうかを判断する必要があります。

商圏分析で大切なのは、「人が多い場所」を探すことではありません。自店の業態・価格帯・メニュー・営業時間・客層に合う場所を見極めることです。商圏分析を感覚ではなく仕組みにすることで、1店舗目の成功を再現性のある出店戦略に変えることができます。

飲食店の出店立地・集客戦略のご相談は、カチプロまでお気軽にお問い合わせください。

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小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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