KFC(ケンタッキーフライドチキン)のマーケティング戦略|日常食化・とりの日パック・SNS施策で売上回復した仕組み

KFC(ケンタッキーフライドチキン)のマーケティング戦略|日常食化・とりの日パック・SNS施策で売上回復した仕組み

ケンタッキーフライドチキン(KFC)は、フライドチキンを主力とするファストフードチェーンです。日本では日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社が店舗運営を担っています。本記事では、KFCのマーケティング戦略を業績・売上回復・SNS施策・4P分析の観点から整理します。

KFCの戦略で最も注目されるのが、客数減からの回復です。クリスマスなどの特別な日に食べるものから、日常的に楽しむ食事へとイメージを広げた点が大きな転機になりました。ランチセットやデュアルカレンダー戦略がその中心です。

近年はSNS、公式アプリ、データ活用による顧客接点づくりにも力を入れています。これらの取り組みは、中小の飲食店が来店動機づくりやリピート促進に応用できる視点を多く含んでいます。

目次

日本KFCの概要と現在の経営体制

KFCは、日本では日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社が店舗運営を担っています。本社は横浜市西区みなとみらいにあります。フライドチキンを主力とするファストフードのトップブランドとして地位を築いてきました。

同社は、かつて日本KFCホールディングスを中心とするグループ体制で事業を展開していました。2024年にカーライル・グループの傘下となり、非上場化されました。2026年4月時点では、遠藤久氏が代表取締役会長CEO、名嶋篤史氏が社長執行役員COOを務めています。遠藤氏がグループ経営の監督や全体戦略を担い、名嶋氏が業務執行を統括する体制です。

日本KFCは1970年に設立されました。米国のケンタッキー・フライド・チキン社と三菱商事の折半出資によるものでした。日本上陸は1970年で、大阪万博が開催された年です。2020年には日本上陸50周年を迎えました。

三菱商事傘下から非上場化へ

日本KFCは、長く三菱商事の傘下にありました。上場廃止前にも堅調な業績を維持していました。上場廃止前の最終通期にあたる2024年3月期は、売上高1,106億8,500万円、営業利益58億6,200万円、経常利益67億700万円でした。チェーン売上高も拡大しており、上場廃止前の段階でも事業規模は堅調に推移していました。

2024年に大きな転機を迎えます。米投資ファンドのカーライル・グループがTOBを実施しました。1株6,500円での買い付けでした。2024年9月18日に東京証券取引所で上場廃止となりました。これにより、設立以来50年以上続いた三菱商事との資本関係が解消されました。

非上場化後のKFCは、出店拡大を成長戦略の柱の一つに置いています。2026年の発表では、2030年までに1,700店舗体制を目指す方針が示されています。既存の店舗網をさらに広げながら、ブランド認知を活かした成長をめざす動きが見られます。短期的な株価変動に左右されず、長期的なブランド強化を進める狙いです。

※業績数値は上場廃止前の公表値に基づきます。非上場化以降、上場企業と同様の四半期決算・通期決算の開示は確認しにくくなっているため、本記事では上場廃止前の公表資料を中心に整理します。

KFCのV字回復を支えたマーケティング戦略

KFCのマーケティングで最も注目されるのが、客数減からの回復です。2017年10月から2018年6月まで、売上は9カ月連続で前年を下回っていました。コンビニのチキン拡大など、市場環境の変化も背景にありました。各種メディアでは、2018年以降のKFCの回復は「V字回復」として紹介されています。

転機となったのが、2018年4月のCMO着任です。新たなマーケティング責任者のもとで、ブランドのイメージ転換が進められました。その後、売上と客数はともに回復へと向かいました。本記事でも、客数減から売上回復へ転じたマーケティング施策を整理します。

特別な日から日常食へのイメージ転換

KFCの課題は、利用シーンの偏りにありました。日本ではクリスマスなどの特別な機会に食べる傾向が強かったのです。ランチや個食といった日常の利用には結びつきにくい状態でした。

そこで打ち出されたのが、日常使いできる店へのイメージ転換です。特別な日のごちそうという印象はそのままに、普段から気軽に立ち寄れる存在をめざしました。ブランドの良さを保ちながら、利用シーンを広げる発想です。

ここがポイント KFCは、強いブランドイメージを否定しませんでした。特別感を残したまま、日常の利用シーンを足し算しました。既存の強みを活かしながら客層を広げる発想が、回復の土台になっています。

ワンコインランチによる来店ハードルの引き下げ

イメージ転換を後押ししたのが、ランチセットです。2018年には期間限定で500円のランチセットを投入しました。手の届きやすい価格で、昼の時間帯の来店を促す狙いでした。

あわせて、新しいCMシリーズも展開しました。親しみやすいタレントを起用し、気さくなブランド像を打ち出しました。価格とイメージの両面から、来店のハードルを下げていったのです。

デュアルカレンダー戦略で客足を切らさない

KFCは、客足を途切れさせない工夫も進めました。それがデュアルカレンダー戦略と呼ばれる考え方です。期間限定商品とお得なセットを、計画的に組み合わせて展開する手法です。

新商品で来店のきっかけをつくり、定番のお得なセットで再来店を促します。月の中で常に来店動機が用意されている状態をめざします。話題づくりと習慣づくりを両立させる設計といえます。

2層マーケティングという考え方

これらの施策は、2層マーケティングとして整理されています。ここでいう2層マーケティングとは、新規のお客様を呼び込む施策と、既存のお客様に繰り返し利用してもらう施策を分けて設計する考え方です。それぞれに合った施策を用意します。

新規層には、ランチセットや話題性のある新商品が響きます。リピート層には、定番のお得なパックやアプリの特典が効きます。客層ごとに施策を分けることで、来店の機会を幅広くつくり出しています。

とりの日パックに見る日常食化の仕組み

日常食化を象徴する施策が、とりの日パックです。「にわとり」の語呂合わせから、毎月28日を「とりの日」としています。この日に合わせて、オリジナルチキンをお得に楽しめるパックを販売しています。

現在の「とりの日パック」は、毎月28日に販売される定期キャンペーンです。公式サイトでは、オリジナルチキン4ピースとナゲット5ピースの組み合わせで販売されています。2026年5月時点の価格は1,290円です。単品をそれぞれ購入する場合より、お得な価格設定になっています。価格や内容は変更される可能性があります。

定期的な来店のきっかけをつくる

とりの日パックの本質は、来店リズムの設計にあります。毎月28日という決まった日を用意することで、来店の習慣をつくります。お客様の頭の中に「28日はKFC」という結びつきが生まれます。

2025年には、日本上陸55周年を記念し、とりの日パックの販売期間を拡大した取り組みもありました。月に一度の特別感を保ちつつ、利用機会を広げる工夫です。特別感と日常性のバランスをとる発想が見てとれます。

ここがポイント とりの日パックは、語呂合わせと日付を結びつけた仕組みです。覚えやすい日付は、来店の習慣化に役立ちます。中小店でも、自店ならではの記念日や曜日を設定する発想が応用できます。

SNS・アプリ・データ活用による接点づくり

KFCは、デジタルを使った顧客接点づくりに力を入れています。SNSでの発信は、X(旧Twitter)、Instagram、TikTokで展開が確認できます。中でもXを主軸に据え、想起されやすいブランドづくりや話題づくりを進めています。

SNSの指標として重視されているのが、発話量とエンゲージメントです。新商品の発売時やニュースのリリース時に、どれだけ話題になったかを見ています。お客様に「今日、KFCにしない?」と思ってもらうことをめざしています。

フォローとリポストで広がるキャンペーン

Xでの代表的な施策が、フォローとリポストを使ったキャンペーンです。公式アカウントをフォローし、対象の投稿をリポストすると、その場で抽選結果がわかる仕組みです。インスタントウィンと呼ばれる形式です。

2025年には、新商品の発売に合わせたキャンペーンが繰り返し実施されました。例えば、抽選で1万名にチキンの無料クーポンが当たる企画です。新商品の認知拡大と、来店のきっかけづくりを同時に進める設計になっています。

フォローとリポストのキャンペーンは、中小の飲食店でも応用できます。仕組みや進め方は、マーケティングのノウハウをまとめたカテゴリでも整理しています。あわせてご覧ください。

クーポンと話題化を結びつける

無料クーポンは、来店の後押しになります。当選しなかった人にも、新商品の存在が伝わります。リポストによって投稿が拡散し、接点のなかった層にもブランドが届きます。

キャンペーンは、単なるプレゼント企画ではありません。新商品の告知、認知の拡大、来店の促進を一度に担う仕組みです。SNSの拡散力を、集客の入り口として活用しています。

アプリとデータ活用によるリピート促進

KFCは、公式アプリやデータ活用にも取り組んでいます。アプリでクーポンを配信し、再来店を促します。SNSが新規の接点をつくるのに対し、アプリは継続的な関係づくりを担います。

あわせて、顧客データを集約し、施策に活かす取り組みも進めています。新規のアプリ会員に向けた購買促進や、店舗の売上を高める施策に役立てているとされます。話題づくりからリピートまでを、デジタルでつなぐ流れができています。

KFCのマーケティングを4P分析で整理する

KFCの現在のマーケティングを、4Pの枠組みで整理します。4Pとは、製品、価格、流通、販促の4つの視点です。マーケティングの基本となるフレームワークです。

Product 製品

KFCの主力は、オリジナルチキンです。独自のレシピとスパイスが、ブランドの中心にあります。この看板商品を軸に、季節限定のフレーバーチキンや、サンド、ナゲットなどを展開しています。

近年は、ランチ向けの個食メニューも充実させています。ひとりでも気軽に楽しめる商品を増やすことで、日常の利用に応えています。看板商品を守りながら、利用シーンに合わせて品ぞろえを広げる方針です。

Price 価格

価格面では、来店ハードルを下げる工夫が見られます。ワンコインのランチセットは、その代表例です。手の届きやすい価格帯のメニューで、昼の利用や日常使いを促しています。

一方で、とりの日パックのようなお得感のあるセットも用意しています。まとめ買いやシェアにつながり、客単価を支えます。低価格の入り口と、お得なまとめ買いを組み合わせる設計です。

Place 流通

KFCは、全国に店舗網を持っています。非上場化後は出店拡大を成長戦略の柱とし、2026年の発表では2030年までに1,700店舗体制を目指す方針が示されています。立地や客層に合わせた店舗づくりも進めてきました。

さらに、デリバリーやテイクアウト、公式アプリといった接点も広げています。店舗以外のチャネルを充実させることで、利用の機会を増やしています。デジタル化は、今後の重点領域に位置づけられています。

Promotion 販促

販促では、テレビCMとSNSを組み合わせています。CMで広く認知を広げ、Xを中心としたSNSで話題と来店を後押しします。新商品の発売に合わせて、両者を連動させる展開が特徴です。

とりの日パックのような定期施策と、季節商品のキャンペーンを組み合わせます。新規の呼び込みとリピートの促進を、同時に進める設計です。話題づくりと習慣づくりを両立させています。

KFCの戦略を中小飲食店に応用する

KFCの戦略は、大手だからできることばかりではありません。考え方を翻訳すれば、中小の飲食店にも応用できます。規模ではなく、発想に学ぶ視点が大切です。

KFCの考え方中小店での実践例
日常食化夜営業中心の店が、ランチ・弁当・テイクアウトを設計する
定期キャンペーン毎週水曜、毎月29日、雨の日など、覚えやすい来店理由をつくる
新商品と定番商品の併用限定メニューで話題化し、定番セットでリピートにつなげる
SNSキャンペーン無料券より「来店時に使える割引券」「ペア招待券」で来店率を上げる
アプリ・会員施策LINE公式アカウントで再来店クーポンを配信する

利用シーンを増やす発想

KFCは、利用シーンを広げることで客数を伸ばしました。中小店も同じ発想が使えます。今は夜の利用が中心なら、ランチやテイクアウトの提案が次の一手になります。

大切なのは、強みを変えずに使う場面を足すことです。看板メニューはそのままに、新しい時間帯や利用方法を提案します。既存のお客様の利用回数を増やすことが、安定した売上につながります。

来店の習慣をつくる仕掛け

とりの日パックの本質は、来店のリズムづくりです。中小店も、覚えやすい日付や曜日を決めることから始められます。「毎週水曜は限定メニュー」といった、わかりやすい約束が有効です。

決まった日があると、お客様は来店を予定に組み込みやすくなります。習慣になれば、安定した来店が見込めます。小さな店ほど、こうした来店リズムの設計が効いてきます。

SNSの拡散を集客につなげる

KFCのSNS施策は、拡散を集客につなげる設計です。中小店でも、フォローとリポストのキャンペーンは実施できます。プレゼントを工夫すれば、新規の接点と来店を同時につくれます。

例えば、お食事券をプレゼントし、応募投稿でメニュー写真を見せる方法があります。当選しなくても、写真で興味を持ってもらえます。拡散の仕組みを、来店の入り口として使う発想が重要です。

中小店は毎月の来店理由を先に設計する

中小の飲食店がKFCの戦略から学ぶなら、まず考えたいのは「毎月の来店理由」です。新規集客だけを追いかけると、広告費や投稿頻度に依存しやすくなります。そこで、毎週や毎月の定番企画を用意し、お客様が思い出しやすい仕組みをつくることが大切です。

例えば、毎週水曜の限定メニュー、毎月29日の肉の日企画、雨の日限定クーポンなどです。大がかりなキャンペーンでなくても、覚えやすい約束があるだけで来店のきっかけになります。KFCのとりの日パックは、その考え方をわかりやすく示しています。

まとめ

KFCのマーケティングは、利用シーンの拡大を軸に組み立てられています。特別な日のごちそうから、日常的に楽しむ食事へ。このイメージ転換が、客数減から売上回復へ転じる大きなきっかけになりました。

ワンコインランチ、デュアルカレンダー戦略、とりの日パック、そしてSNS・アプリを活用したデジタル接点づくり。いずれも、来店のきっかけと習慣を計画的につくる工夫です。強いブランドを保ちながら、利用機会を広げる発想が一貫しています。

この考え方は、規模を問わず多くの飲食店に応用できます。利用シーンを増やし、来店の習慣をつくり、SNSやアプリで接点を広げる。KFCの歩みは、既存の強みを活かしながら成長する道筋を教えてくれます。集客の仕組みづくりに迷ったときは、ぜひ参考にしてみてください。

※本記事のKFCに関する会社概要、業績、上場廃止の経緯、商品・キャンペーン情報は、日本ケンタッキー・フライド・チキン、日本KFCホールディングスの公表資料および各種報道を参照しています。価格・キャンペーン内容は変更される可能性があります。マーケティング分析部分は、公開情報をもとにした筆者の考察です。

小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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