リテンションマーケティングとは?顧客維持率を高める施策と実践方法

リテンションマーケティングとは?顧客維持率を高める施策と実践方法
顧客維持の意味・施策・測り方

リテンションマーケティングとは、既存顧客の継続利用を支え、離脱を防ぐための取り組みです。一度購入・契約した顧客に再び選ばれることで、売上の積み上げや収益の安定につながります。本記事では、基本的な意味と代表施策、実在企業の取り組みと業種別の実践例、顧客維持率・解約率・リピート率の測り方を解説します。

リテンションマーケティングとは?

リテンションマーケティングとは、既存顧客が購入や利用を続けられるように支援し、顧客の維持と離脱防止を図るマーケティング活動です。

顧客維持マーケティングとも呼ばれます。

具体的には、初回利用後のフォロー、使い方の案内、会員特典、利用状況に合う情報提供、不満や解約理由に基づく改善などを行います。飲食店では再来店、定期契約のサービスでは契約や利用の継続が主なテーマになります。

大切なのは、顧客が利用を続けるうえで困っていることを減らすことです。解約手続きを難しくしたり、不要な購入を迫ったりする方法は、長期的な信頼を損なう原因になります。

リテンションの意味は「維持・保持」

リテンションは、英語の「Retention」に由来する「維持・保持」という意味の言葉です。マーケティングでは、獲得した顧客に利用を続けてもらうことを指します。

会員登録が残っているだけで、実際には利用されていない場合もあります。何をもって「維持できている」と判断するかは、契約継続、購入、来店、サービス内の行動などから、自社の事業に合わせて決めます。

新規顧客獲得(アクイジション)との違い

アクイジションは新しい顧客を獲得する活動、リテンションは獲得後の顧客に継続して利用してもらうための活動です。

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新規獲得と顧客維持の違い
比較項目 アクイジション リテンション
主な対象 まだ顧客になっていない人・企業 購入・契約などの経験がある顧客
主な目的 初回購入や新規契約を増やす 継続利用・再購入を支え、離脱を減らす
施策の例 新規向け広告、初回体験、問い合わせ獲得 購入後の支援、再来店の案内、解約理由の改善
確認する指標 新規顧客数、成約率、顧客獲得費用 顧客維持率、再購入率、解約率、LTV

メールや広告は、使う目的や対象によってどちらにもなります。配信手段だけで分類せず、初回購入を増やしたいのか、既存顧客の再利用を増やしたいのかを明確にしましょう。

リレーションシップマーケティングとの違い

リレーションシップマーケティングは、顧客との関係を築き、維持・発展させることを重視します。リテンションマーケティングは、既存顧客の継続利用や離脱防止に重点を置きます。

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関係性マーケティングとの重点の違い
比較項目 リレーションシップマーケティング リテンションマーケティング
主な焦点 信頼や相互理解を育て、関係を発展させる 既存顧客の利用継続を支え、離脱を防ぐ
考える問い 顧客とどのような関係を築くか 継続利用を妨げているものは何か
施策の例 対話、顧客の声を反映した改善、個別提案 初期利用の支援、再購入の案内、解約原因の改善

両者は重なる概念です。たとえば購入後の相談対応は、信頼を育てると同時に離脱防止にも役立ちます。厳密に分離したり、固定的な上下関係と考えたりする必要はありません。

関係づくり全体の考え方は、リレーションシップマーケティングの解説記事で紹介しています。

リテンションマーケティングが重要な理由

既存顧客の離脱を防止できる

顧客が利用をやめる背景には、品質への不満だけでなく、使い方が分からない、予約しにくい、相談しても解決しないといった問題があります。

利用状況や問い合わせを確認し、問題を解消すれば、防げる離脱を減らせる可能性があります。一方、転居や利用目的の終了など、施策だけでは防ぎにくい離脱もあります。顧客の事情を尊重し、原因ごとに対応を考えましょう。

顧客生涯価値(LTV)の向上につながる

LTVは、顧客との取引期間全体で生まれる価値を表す指標です。利用期間や購入回数が増えれば、一人の顧客から得られる累計売上や利益が増える可能性があります。

ただし、大幅な値引きや手厚すぎる対応に費用がかかると、利益が減る場合もあります。継続率を高めることと、顧客ごとの採算が改善することを分けて確認します。

新規顧客獲得への依存を減らせる

一度購入した人が利用を続ければ、毎月の売上をすべて新規顧客で補う必要性を抑えられます。広告や営業にかけた初回の獲得費用も、複数回の取引で回収しやすくなります。

ただし、顧客維持にも配信、特典、サポートなどの費用がかかります。新規獲得と維持のコスト差を一律の倍率で考えず、自社の費用と利益で判断しましょう。新規顧客の獲得も並行して続ける必要があります。

安定した売上や収益の確保につながる

継続契約や一定の周期での再購入が積み重なると、今後の売上を予測する材料が増えます。需要の見通しを立てやすくなれば、仕入れや人員配置、予算配分も検討しやすくなります。

ただし、来店周期や季節要因、購入単価は変動します。継続顧客が増えたからといって売上が自動的に安定するわけではなく、利用頻度と利益も合わせて見ます。

リテンションマーケティングの代表的な施策

施策は、顧客の利用状況と離脱の理由を確認してから選びます。次の流れで考えると、配信や特典の実施だけで終わることを防ぎやすくなります。

図解|リテンション施策を改善する流れ
  1. STEP 01利用状況を確認

    初回利用から、どこで利用が止まるかを調べる。

  2. STEP 02原因を考える

    問い合わせや顧客の声と、利用履歴を照合する。

  3. STEP 03必要な支援を届ける

    使い方の案内や、不便の改善を行う。

  4. STEP 04成果を確かめる

    継続・再購入と、費用を含めた採算を確認する。

どの施策から始めるかは、利用が止まる場面から考えます。

次の表は、施策を選ぶための整理例です。原因を確認し、まず一つの課題に絞って試しましょう。

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自社の課題から施策を選ぶ
自社で起きていること 最初に検討する施策 確認する指標・情報
初回利用の後、次の利用につながらない 初回フォロー、使い方や次の利用方法の案内 初回利用者の再利用率、不満や疑問
継続中の顧客の利用が減っている 利用状況の確認、困りごとの解消 同じ顧客集団の継続率、利用頻度
通常の購入・来店周期を過ぎている 連絡を希望する顧客への再利用の案内 休眠顧客の再利用と、その後の継続
特典のあるときしか利用されない 特典の条件と、商品・サービスの価値の見直し 特典費用を含む利益、特典後の利用

購入・来店後のアフターフォロー

初回利用後の疑問や不安を減らし、商品・サービスの価値を実感してもらう施策です。商品の使い方、施術後の手入れ、導入後の操作方法などを、必要な時期に案内します。

たとえば、初期設定でつまずきやすいサービスなら、設定手順と相談窓口をまとめて届けます。問題が未解決の顧客には追加購入を勧める前に、対応を優先しましょう。担当者と連絡時期を決めることも大切です。

メールやLINEを活用した継続的な情報提供

使い方の工夫、利用時期の目安、関心に合う商品情報などを届け、再利用を検討するきっかけをつくります。初回利用者と継続利用者で案内を変えると、内容を絞り込みやすくなります。

連絡先を取得しただけで販促情報を無制限に送ることは避けます。広告宣伝メールは事前同意を原則とし、必要な表示や同意記録の保存、配信停止に対応します。LINEでも、顧客の希望や配信頻度に配慮してください。

具体的な配信設計は、飲食店のLINE公式アカウント活用方法も参考になります。

ポイント制度・会員特典の活用

ポイントや会員特典は、継続利用を検討する理由をつくる施策です。値引きのほか、先行予約、利用履歴の確認、会員向けの相談など、便利さや支援を提供する方法もあります。

利用条件を分かりやすく示し、顧客が価値を感じる内容にします。特典の利用件数だけで判断せず、実施費用を差し引いて利益が残るか、特典がなくても利用が続くかを確認しましょう。

顧客情報に応じたパーソナライズ

パーソナライズは、購入履歴や本人の希望、問い合わせ状況に合わせて情報や対応を調整することです。購入済みの商品を勧め続けず、利用中の商品を活かす案内に切り替えることも含みます。

個人情報の利用目的を具体的に定め、登録フォームなどで本人から取得する際は、原則として事前に明示します。分析や個別提案に使う場合も用途が伝わる説明にし、閲覧権限や保存期間を決めて管理しましょう。

休眠顧客の掘り起こし

休眠顧客とは、自社で決めた期間、購入や利用が確認できていない顧客です。期間は一律に決めず、通常の購入・来店周期に合わせます。

利用が止まった背景を確認し、以前の不便が改善されたことや、新しい利用方法などを案内します。配信を希望しない人を対象から外し、過剰に連絡しないようにしましょう。再購入しても、その後に利用が続くかまで確認します。

顧客満足度の改善と解約理由の分析

アンケート、問い合わせ、解約時の回答などから、利用を続けにくい理由を探します。「価格」「使いにくさ」「品質」「サポート」「利用目的の終了」などに分けると、対応を決めやすくなります。

回答者の声だけで全体を判断せず、利用履歴や実際の離脱状況と照合します。改善後に同じ不満や離脱が減ったかを確認しましょう。推奨意向を見る方法としては、NPSの解説記事も参考になります。

実在企業に見るリテンション施策の事例

大手店舗の施策を見ると、顧客維持には、回数券による利用のきっかけづくり、注文時の不便の解消、顧客が必要とする情報の提供など、異なる取り組みがあると分かります。以下は各社の公式案内で確認できる仕組みを紹介し、自店への応用は本記事の考察として整理しています。

コメダ珈琲店|コーヒーチケットで繰り返し利用するきっかけをつくる

コメダ珈琲店は、購入店舗で使える前売り回数券「コーヒーチケット」を販売しています。公式案内では、通常価格よりお得に利用でき、グループでシェアして使えることが説明されています。販売価格は店舗により異なり、一部取り扱いのない店舗もあります。

顧客維持の視点では、次の来店で使えるチケットを手元に残し、同じ店舗を繰り返し利用するきっかけをつくる仕組みと捉えられます。

自店で参考にする場合は、単に割引を大きくするより、普段の利用に合う対象商品や使い方を考えます。回数券の販売数に加え、その後の利用回数と採算を確認しましょう。店舗体験や運営まで含む全体像は、コメダ珈琲店のマーケティング戦略で解説しています。

マクドナルド|モバイルオーダーで注文・受け取りの不便を減らす

日本マクドナルドのモバイルオーダーは、スマートフォンで店舗や商品を選び、受け取り方法や支払い方法を指定できる仕組みです。対象店舗では、指定のテーブルへのお届けや、駐車場・ドライブスルーでの受け取りにも対応しています。

顧客維持の視点で参考になるのは、次に利用するときの手間を減らすことです。再来店の特典を配るだけでなく、注文や受け取りが面倒という理由で利用を見送る場面も改善の対象になります。受け取り方法の対応範囲は店舗により異なります。

小規模な店舗でも、予約・注文の手順や受け取り案内を整理することから始められます。アプリや販促も含む戦略は、マクドナルドのマーケティング戦略も参考にしてください。

ユニクロ|購入履歴と再入荷通知で、次の買い物を支える

ユニクロでは、オンラインストアや店舗で購入した商品を購入履歴から確認できます。店舗購入分を記録するには、支払い時に会員証をスキャンするなどの条件があります。また、オンラインストアで在庫がない一部商品は、希望するカラー・サイズの再入荷通知を登録し、入荷時にメールやアプリプッシュで知らせてもらえます。通知は商品の確保や購入を保証するものではありません。

既存顧客にとっては、買った商品を振り返ったり、次に欲しい商品の入荷を知ったりする接点になります。再入荷通知は新規購入にも利用される機能ですが、既存顧客の次の購入を支える方法としても参考になります。

自店への応用では、全員に同じ販促情報を送るより、本人が希望した商品の入荷や、購入後に必要な情報を届けることを考えます。商品と販売の仕組みを含めた分析は、ユニクロのマーケティング戦略で紹介しています。

これらの施策を導入しただけで、顧客維持率が上がるとは限りません。自社で実施するときは、対象顧客の再利用や継続、対応にかかる費用を確認してください。

業種別のリテンションマーケティング実践例

以下は、取り組み方を説明するための仮想の施策例です。実在企業の導入事例や成果を示すものではありません。

飲食店|再来店を促す取り組み

初回来店後、情報配信を希望した人に季節メニューや予約方法を知らせます。接客や待ち時間への不満があれば、その改善も再来店施策に含めます。

成果は、初回来店者が一定期間内に再来店した割合や、再来店までの日数で確認します。観光客が多い店と地域の日常利用が多い店では、同じ期間を目標にする必要はありません。飲食店のリピート分析とスタンプカード設計も参考にしてください。

美容室|適切な再来店時期の案内

施術履歴と本人の希望を記録し、自宅での手入れ方法や次回の相談時期を案内します。仕上がりについて気になる点があれば、早めに相談できる窓口を用意します。

すべての顧客に同じ間隔で予約を求めず、施術内容や本人の生活に合わせます。初回来店後の再来店率と、予定していた時期から来店が遅れている人の状況を確認します。

ECサイト|再購入と休眠顧客の活性化

購入直後は使い方や返品・交換の案内を届け、消耗品なら本人の希望も踏まえて補充時期の参考情報を伝えます。耐久品なら、短期間の買い直しより手入れや修理の情報が役立つ場合があります。

休眠顧客には、購入済み商品の関連情報や改善点を案内します。初回購入月などが同じ顧客集団に分けて、次の購入までの期間や再購入率を比べると、どこで接点が途切れているかを検討できます。

SaaS・サブスクリプション|継続利用と解約防止

SaaSは、インターネット経由で利用するソフトウェアサービスです。初期設定や使い始めの支援を行い、顧客が目的の作業をできる状態を目指します。ログイン数だけでなく、主要機能を実際に使えているかを確認します。

解約は、不満によるものと、支払いの失敗などによる意図しないものを分けます。決済エラーでは支払い方法の更新案内などを検討します。契約の継続率と利用状況を併せて見て、利用されないまま契約だけが残る状態も把握しましょう。

BtoB企業|契約更新とアフターフォロー

BtoBは、企業を顧客とする取引です。契約時に合意した目的を共有し、導入後も成果や困りごとを確認します。担当者の交代時には、対応履歴や運用方法を引き継ぎます。

更新直前だけ連絡するのではなく、顧客の判断に必要な時期から実績や課題を整理します。更新対象の契約のうち更新された割合などを見て、顧客単位で測るのか契約単位で測るのかも決めておきましょう。

リテンションマーケティングの成果を測る指標

顧客維持率・解約率・リピート率は、対象と期間をそろえないと比較できません。

最初に「誰を」「いつまで」「どの状態なら継続とするか」を決めます。

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ビジネスモデルに合わせた指標の設計
ビジネスモデル 継続を判断する例 設計時の注意点
定期契約・サブスクリプション 期首の有料顧客が期末も契約中 無料体験、休止、解約予約、複数契約の扱いを決める
飲食店・美容室・都度購入型EC 初回利用者が一定期間内に再来店・再購入 初回利用からの観測期間をそろえ、利用周期に合わせる
アプリ・オンラインサービス 初回利用後に主要な操作を再び行う 契約継続と操作・利用の継続を区別する

同じ時期に初回利用した人など、共通の条件でまとめた顧客集団を「コホート」と呼びます。初回利用月ごとに同じ期間を追うと、顧客数の増減に隠れた継続状況を見やすくなります。

顧客維持率(リテンションレート)

顧客維持率は、もともといた顧客が、一定期間後も顧客として残っている割合です。一般的には次の式が使われます。

顧客維持率(%)=(期間終了時の顧客数-期間内の新規顧客数)÷期間開始時の顧客数×100

たとえば、有料顧客が月初に100人いて、月内に20人を新規獲得し、月初からいた顧客のうち10人が離脱したとします。新規顧客20人は全員が月末も継続しているものとすると、月末の顧客数は110人です。

(110人-20人)÷100人×100=90%

この例では、月初の100人のうち90人を維持できています。数値は計算方法を説明するための仮定で、目標値ではありません。

注意したいのは、期間内に獲得した新規顧客も離脱する場合です。獲得人数をそのまま引くと、期首顧客の維持率とずれることがあります。たとえば新規20人のうち5人も離脱すると、期末は105人となり、簡易式では85%になってしまいますが、期首100人の維持率は90%のままです。

出入りが複雑な場合は、期首の顧客をIDで追い、次の方法で集計します。再契約や休止の扱いもあらかじめ決めます。

期首顧客の維持率(%)=期末も継続している期首顧客数÷期首顧客数×100

解約率・離脱率(チャーンレート)

チャーンレートは、対象の顧客のうち、解約や離脱として数えた人の割合です。本記事では顧客数ベースの指標を扱い、基本となる集計例を次のように定めます。

顧客数ベースの解約率(%)=期首顧客のうち期末に離脱している人数÷期首顧客数×100

先ほどの例なら、10人÷100人×100=10%です。同じ期首顧客を同じ時点で「継続」「離脱」の二つに分ける場合、顧客維持率と解約率の合計は100%になります。

一方、解約を申し込んだ日と契約が終了する日は異なることがあります。月次と年次でも数値は変わります。飲食店では「一定期間来店がない」などの離脱基準が必要で、来店がない月をすべて解約扱いにはできません。

リピート率

リピート率は、再購入・再来店の状況を捉える指標ですが、実務では複数の定義が使われます。本記事では、初回利用から次の利用につながった割合を、次のように測る例を示します。

初回利用後90日以内の再利用率(%)=90日以内に再利用した初回利用者数÷対象の初回利用者数×100

初回利用者100人のうち30人が90日以内に再利用すれば、再利用率は30%です。90日は集計期間の例で、商材や来店周期に合わせて設定します。全員について同じ長さの観測期間を確保してください。

「今月の利用者のうち、過去にも利用した人の割合」とは分母が異なります。システムによって定義が異なるため、表示名だけで比較しないことが大切です。再利用率と契約の維持率も、同じ指標ではありません。

顧客生涯価値(LTV)

LTVは、取引期間全体で生まれる顧客一人あたりの価値を確認する指標です。売上ベースで概算する場合は、「平均購入単価×年間購入回数×平均継続年数」などで計算します。

採算を見るときは、粗利や獲得・維持費用も考慮します。予測したLTVと、すでに観測できた累計売上・粗利を区別し、比較する顧客集団の観測期間をそろえましょう。計算方法は、LTV(顧客生涯価値)の解説記事で詳しく紹介しています。

リテンションマーケティングを成功させるポイント

顧客の離脱理由を把握する

「離脱が多い」という事実だけでは、改善策は決まりません。初回利用で止まったのか、一定期間使った後なのかを分け、問い合わせやアンケートと照合します。

初期設定の難しさが原因なら説明や導入支援、予約の取りにくさが原因なら予約枠や導線を見直します。解約理由の回答がない人もいるため、一部の回答を顧客全体の意見と決めつけないようにしましょう。

顧客を利用頻度や購入履歴で分類する

最終利用日、利用回数、購入商品などで顧客を分け、それぞれに必要な支援を考えます。最終購入日・購入頻度・購入金額で分類する方法は、RFM分析と呼ばれます。

表は横にスクロールできます。

顧客の状態に合わせた施策の例
顧客の状態 対応の例 確認すること
初回利用直後 使い方・相談窓口の案内 初回の不安が解消したか
継続して利用中 活用の工夫や希望に合う情報 以前と比べて利用状況が変わっていないか
通常の利用周期を過ぎた 困りごとの確認、改善点の案内 利用が止まった理由と再利用の状況

最初から細かく分けすぎず、対応を変える必要がある集団から始めましょう。会員として把握できる顧客のデータを、顧客全体の傾向と混同しないことも大切です。

過剰な通知や割引施策を避ける

通知が多すぎると、配信停止やブロックにつながることがあります。メールやLINE、アプリなど複数の手段で同じ案内が重ならないよう、配信状況を共有します。

割引を行う場合も、利用件数だけで評価しません。割引額、配信費用、対応時間を含め、追加の利益が生まれたかを確認します。希望しない顧客への連絡は停止し、解約や配信停止の手続きを分かりやすくしておきましょう。

継続的に成果を測定し改善する

施策を始める前に、対象者、目的、期間、評価指標を決めます。たとえば「初回購入者の次回購入を支援する」なら、同じ観測期間での再購入率と費用を見ます。

可能なら、条件の近い施策未実施の顧客集団とも比べます。施策の前後だけでは、季節や価格、商品の変更の影響が混ざることがあります。短期の反応と、その後の継続利用・利益の両方で判断しましょう。

リテンションマーケティングのよくある質問

リテンションマーケティングとCRMの違いは?

リテンションマーケティングは、既存顧客の維持や離脱防止に重点を置く活動です。CRMは顧客関係管理のことで、顧客情報を共有・活用して関係や対応を改善する考え方と、それを支えるシステムを指します。

CRMの履歴を使い、利用が止まりそうな顧客への支援を考えるなど、両者を組み合わせて実践できます。

リピートマーケティングと同じ意味ですか?

重なる部分はありますが、同じ範囲を指すとは限りません。リピートマーケティングは主に再購入・再来店に焦点を当てます。リテンションは、定期契約の継続やサービス利用の定着なども含めて顧客維持を考えます。

リレーションシップマーケティングとの違いは?

リレーションシップマーケティングは、顧客との関係全体の構築・維持・発展を重視します。リテンションマーケティングは、既存顧客の継続利用と離脱防止に重点を置きます。購入後の支援など、両方に該当する施策もあります。

小規模な店舗でも実施できますか?

実施できます。たとえば初回来店者への案内、予約や料金説明の改善、前回の相談内容を次の接客に活かす対応から始められます。

最初は一つの課題を選び、「誰に・いつ・何をするか」を決めます。顧客情報を安全に管理し、再来店の状況や顧客の声を振り返る形にすると続けやすくなります。

リテンション率は何%を目指すべきですか?

業種を問わず使える目標値はありません。契約の継続率と来店の再利用率では意味が異なり、月次か年次か、どの顧客を対象にするかによっても変わります。

まず自社の定義と現状値を決め、条件をそろえた過去の顧客集団と比較しましょう。同業他社の数字を参考にする場合も、対象・期間・算出方法が同じかを確かめます。

まとめ

リテンションマーケティングは、既存顧客の維持と継続利用を支え、離脱を減らすための取り組みです。購入後の支援、必要な情報の提供、不満の改善などを、顧客の状況に合わせて行います。

成果を見るときは、顧客維持率・解約率・リピート率の定義と対象期間をそろえることが重要です。継続が増えたかに加え、費用を差し引いて利益が残るかも確認しましょう。

まずは、利用が止まりやすい場面を一つ選び、顧客の声と利用履歴から改善できることを探してみてください。

参考資料・出典

確認日:2026年10月28日。計算例・業種別の施策例は、理解のための仮定です。

  1. Salesforce:顧客維持(Customer Retention)の解説
    顧客維持の意味、顧客維持率の一般的な式、LTVの基本。
  2. Amplitude:リテンション分析の設計方法
    対象者、起点となる行動、継続とみなす行動、利用周期を定める考え方。
  3. 神戸大学MBA:リレーションシップ・マーケティング
    関係性マーケティングの基本概念。1999年配信、2003年掲載の基礎解説です。
  4. 個人情報保護委員会:個人情報保護法ガイドライン(通則編)
    利用目的の特定、直接取得時の説明、顧客情報の安全な管理。
  5. 消費者庁:特定電子メール法のポイント(PDF)
    広告宣伝メールの事前同意、表示事項、同意記録の保存、配信停止。
小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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