ナンバーワン表示は問題あり?景品表示法違反の実例と広告の注意点

No.1表示を広告に活用する際は、調査で確かめた事実と、広告を見た人が受け取る意味をそろえることが大切です。順位に加えて、比較した商品・回答した人・質問の内容・広告の表現まで確認しましょう。
この記事では、飯田グループ4社への課徴金納付命令と、オンライン家庭教師、ペット用サプリメント、海外Wi-Fiレンタルの措置命令を取り上げ、実務で確認したいポイントを詳しく解説します。
「顧客満足度No.1」「口コミ人気第1位」「おすすめしたいサービスNo.1」。こうした表現は、商品やサービスを選ぶ際の判断材料になります。企業が調査を行い、その結果を正確に伝えることは、自社の特徴を消費者に理解してもらう機会にもなります。
一方で、調査の方法と広告の表現に食い違いがあると、景品表示法上の問題が生じます。2026年10月には、注文住宅のNo.1表示について、飯田グループの4社に合計4億4,116万円の課徴金納付命令が出されました。[1]
具体的な事例から、広告担当者が調査会社に確認する内容と、広告制作・公開時の進め方を整理していきましょう。
No.1表示は、調査の根拠と広告の伝わり方をそろえて活用する
景品表示法は、商品やサービスの品質、価格などについて、消費者が適切に選べるようにするための法律です。他社と比較した特徴や順位を広告に使うときも、その内容を裏付ける根拠と、根拠に対応した表現が求められます。
例えば、「顧客満足度No.1」という広告を見た人は、実際に利用した顧客の満足度を調べ、競合と比較した結果だと受け取るでしょう。そこで確認したいのは、回答者が実際の利用者か、何の満足度を聞いたか、どのサービスと比較したかという調査の中身です。
商品やサービスの内容が、実際よりも著しく優れていると示す表示を「優良誤認表示」といいます。価格などの取引条件が、実際よりも著しく有利だと誤認させる表示を「有利誤認表示」といいます。No.1表示も、広告全体が伝える内容に応じて、こうした規制の対象になります。
「この調査で何が分かったか」と「この広告から何が伝わるか」を、一組にして確認します。顧客の満足度、商品の売上、ウェブサイトの印象は、それぞれ異なる評価です。
飯田グループの事例:注文住宅のNo.1表示で4社に課徴金
2024年の措置命令と、2026年の課徴金納付命令を整理する
消費者庁は2024年2月29日、飯田グループホールディングスと、住宅情報館、一建設、飯田産業、アーネストワンの計5社に対し、注文住宅の広告表示について措置命令を行いました。公表日は翌3月1日です。[2]
その後、2026年10月28日、住宅情報館、一建設、飯田産業、アーネストワンの4社に課徴金納付命令が出されました。今回の公表資料に記載された課徴金対象行為は、2022年から2023年に行われた広告表示です。2024年の措置命令と、その後の課徴金納付命令という流れで理解すると、経緯を把握しやすくなります。[1]
5社に措置命令
消費者の誤認を解消するための周知、再発防止策などが命じられました。
4社に課徴金納付命令
2022~2023年の広告表示に関して、課徴金の納付が命じられました。
措置命令は、消費者の誤認を解消するための周知や再発防止などを求める行政処分です。課徴金納付命令は、法律上の要件に基づき、金銭の納付を命じるものです。それぞれの役割を押さえておくと、企業が受けた処分の内容を読み解けます。
住宅情報館:1億6,703万円/一建設:1億2,439万円
飯田産業:3,691万円/アーネストワン:1億1,283万円
住宅の評価で第1位を獲得したかのように広告していた
対象の広告では、土地情報の豊富さ、品質と価格のバランス、初めて住宅を建てる人への推奨という3つの項目について、飯田グループが第1位であるかのように表示していました。住宅情報館のチラシには、次の表示もありました。
飯田グループの注文住宅は3項目で顧客満足度No.1
消費者庁は、これらの表示について、実際に住宅建築サービスを利用したことがある人、または知見などを有する人に調査した結果、第1位になったかのように示していたと認定しています。[2]
実際の調査は、ウェブサイトを見た印象を聞くものだった
委託先が実施した調査は、飯田グループと、委託先が任意に指定した9事業者のウェブサイトを比較し、それぞれの印象を聞くものでした。回答者にサービスの利用経験や知見があるかは確認していませんでした。
消費者庁は、客観的な調査に基づくものではなく、広告も調査結果を正確かつ適正に引用したものではなかったとしています。さらに、2026年の公表資料では、4社が調査の客観性や、調査結果と表示内容の対応関係について、十分な検証を行っていなかったことが示されています。[1]
サイトを閲覧した回答者が、掲載情報から受けた印象を答える。
住宅建築サービスを利用した人などが評価し、競合と比べて第1位になったと受け取られる。
ウェブサイトから受ける印象と、実際の住宅建築サービスへの満足度は、異なる評価です。広告担当者は、順位が出た経緯まで確認し、その調査で説明できる範囲の表現を選ぶことが重要です。
過去の措置命令から、問題となった広告と調査を具体的に見る
バンザン:オンライン家庭教師の利用者満足度と、回答者の条件が食い違っていた
消費者庁は2023年1月12日、オンライン個別学習指導サービス「メガスタ」などを提供する株式会社バンザンに措置命令を行いました。No.1表示に関しては、利用者満足度、口コミ人気度、AO・推薦入試向けの推奨に関する第1位表示が問題になりました。[3]
自社ウェブサイトなどでは、オンライン家庭教師の利用者満足度でNo.1に選ばれたと広告していました。しかし、調査では、同社や競合のサービスを利用したことがあるかを確認していませんでした。
口コミ人気度やAO・推薦入試向けの推奨についても、回答者の条件を設けず、委託先に登録する会員を対象に、設定した回答者数に達するまで調査を実施していました。消費者庁は、広告で示した評価を、それぞれ客観的な調査方法で調べたものではなかったとしています。[3]
利用者満足度を広告する場合は、実際の利用者を選ぶための質問と、その回答に基づく対象者の選定方法を確認します。回答数とあわせて、誰が何を評価した調査なのかを把握しましょう。
バウムクーヘン:ペット用サプリメントの7項目の評価を、サイトの印象調査で表示していた
消費者庁は2023年6月14日、ペット用サプリメント「アイズワン」を販売する株式会社バウムクーヘンに措置命令を行いました。No.1表示では、食べさせやすさ、品質満足度、口コミ人気など、7項目について第1位を獲得したかのように広告していました。[4]
委託先が行ったのは、商品を販売する各事業者のウェブサイトを見た印象を聞く調査でした。回答者には条件を付けず、委託先に登録している会員を対象としていました。消費者庁は、対象の7項目をそれぞれ客観的な調査方法で調べたものではなかったとしています。[4]
例えば、犬への食べさせやすさを評価する際には、商品説明から受ける印象と、実際に犬に与えた経験を区別することが大切です。広告がどちらの評価を伝えているのかによって、確認する調査内容が変わります。
複数の項目で第1位を表示する場合は、項目ごとに、評価できる回答者と適切な質問を確認します。「品質満足度」と「食べさせやすさ」など、それぞれが意味する内容を調査と照合しましょう。
エクスコムグローバル:海外Wi-Fiの満足度を、利用経験未確認の調査で表示していた
消費者庁は2024年2月28日、「イモトのWiFi」を提供するエクスコムグローバル株式会社に措置命令を行い、同年3月1日に公表しました。対象の広告は、自社ウェブサイトや旅行ガイドブックなどに掲載されていました。[5]
広告では、顧客の満足度、海外旅行者による選択、顧客対応の満足度について、同社のサービスが第1位であるかのように表示していました。
実際の調査は、同社と任意に選んだ特定9事業者のウェブサイトの印象を聞くもので、回答者の利用経験は確認していませんでした。消費者庁は、客観的な調査に基づくものではなく、調査結果の引用も正確かつ適正ではなかったとしています。[5]
顧客対応への満足度を広告するなら、問い合わせなどの対応を経験した人が、どの場面を評価しているかまで確認します。広告で使う評価項目と、調査が確かめた内容を具体的に対応させることが大切です。
No.1表示を使う前に確認したい7つのポイント
消費者庁は、顧客満足度などの主観的評価を指標とするNo.1表示について、合理的な根拠と認められるための条件を示しています。比較する商品・サービスの選び方、回答者の選び方、調査の公平性、調査結果と表示内容の対応関係という4つの観点です。[7]
広告で示す商品分野と、調査で比較した範囲を対応させる。
広告の意味に合った利用経験や属性を持つ人を対象にする。
質問文、選択肢、調査を終える条件などを事前に確認する。
実際に確かめた評価・範囲・期間を、消費者に分かる形で伝える。
これらの観点を実務で確認しやすいように、以下の7つのポイントに分けて説明します。
1.何を測定して1位になったのかを、広告の言葉と照合する
最初に、順位を決めた指標を確認します。売上金額、販売個数、契約件数、顧客満足度は、それぞれ異なる指標です。調査で測定した項目を、広告でも正確に伝えることが基本になります。
例えば、販売個数の順位を広告するなら、販売個数を比べたことが分かる表現にします。顧客満足度を調べた場合は、顧客がどの点に満足したかを確認し、商品の性能や効果についての評価と区別して扱います。
評価の範囲も大切です。申し込み画面の使いやすさを調べた結果であれば、その画面についての評価として伝えます。サービス全体の満足度を訴求する際は、その意味を裏付ける調査が必要です。
比較広告では、実証された数値や事実を正確かつ適正に引用することが求められます。調査報告書の項目名、実際の質問文、集計結果、広告原稿を並べて確認すると、対応関係を把握しやすくなります。[8]
2.市場の主要な競合を含めて比較しているかを確認する
比較対象の数とあわせて、その選定理由を確認しましょう。例えば、同じ分野の10社を比較した調査でも、広告で想定される市場の主要な競合を含めているかによって、順位の意味が変わります。
消費者庁の報告書では、主要な競合の一部や全部を比較対象から外している調査を、問題となるおそれがある例として挙げています。検索結果の上位に表示された事業者を選ぶ場合も、市場の主要な競合を含んでいるかの確認が必要です。[6]
調査会社には、比較対象の商品・サービスの一覧と、各対象を選んだ理由の説明を求めましょう。広告で示す商品分野、価格帯、提供地域などと照らし合わせ、消費者が想定する比較範囲との整合性を確認します。
3.広告で伝える評価を判断できる人に回答してもらう
顧客満足度を広告する場合は、実際の顧客による評価を確認することが基本になります。利用経験のある人の満足度と、商品説明を読んだ人の印象は、分けて扱う必要があります。
調査対象者に必要な条件は、広告の内容と商品・サービスの特性から考えます。消費者庁も、個別の事案ごとに判断され、実際の利用者以外を対象とする場合や、利用者の中でも一定の範囲の人を対象とする場合があり得ると説明しています。[6]
例えば、20代の顧客について満足度を表示するなら、年齢と利用経験の両方を確認します。問い合わせ対応の満足度なら、対応を受けた場面や時期も整理すると、評価対象を具体化できます。
「どのような経験を持つ人なら、この質問に答えられるか」から、回答者の条件を決めると、広告と調査をそろえやすくなります。
4.質問文・選択肢・調査終了の条件を公平に設計する
比較する商品と回答者が適切に選ばれていても、質問の方法によって結果は変わります。質問文や回答画面を確認し、各社を同じ条件で評価できるかを点検しましょう。
例えば、自社についてだけ詳しい説明を示し、競合は名称だけを見せる方法では、回答者が判断するための情報量に差が生じます。各社に提示する情報の内容や形式をそろえることが、公平な比較につながります。
消費者庁は、自社を選びやすくするために選択肢の最上位に固定することや、自社が1位になるまで調査を繰り返すこと、1位になった時点で調査を終えることを、問題となる例として挙げています。[6]
調査を依頼する段階で、質問票、回答画面、回答者数の設定、調査期間、集計方法について説明を受けておきましょう。結果と一緒に調査過程も確認することで、順位の根拠を説明しやすくなります。
5.注記とメインの表現を、一つの意味として伝わるように整える
調査条件の注記は、広告の根拠を読者に伝えるための情報です。メインの表現と注記を合わせて読んだとき、調査の内容を正しく理解できる構成に整えましょう。
特に確認したいのが、サイトのイメージ調査を顧客満足度の広告に使うケースです。消費者庁は、イメージ調査であることを注記しても、顧客満足度という表示と調査結果の食い違いは解消されないと説明しています。[6]
この場合は、メインの広告表現から見直し、実際に確かめた評価に合う言葉を検討することが必要です。注記の位置や文字サイズの調整と、表現そのものの検討を分けて進めると、確認する内容が明確になります。
また、「おすすめしたい」「良いと思う」といった表現についても、広告全体から受ける意味を確認します。消費者庁は、こうした言葉を使った場合でも、表示内容によっては実際の利用者による評価だと受け取られる場合があるとしています。[6]
6.商品分野・地域・期間・出典を具体的に伝える
No.1表示では、どの範囲の順位かが分かることも重要です。例えば、特定の県内での実績なら県名を示し、通販で販売される商品の中での順位なら、その販売範囲が分かる表現にします。
調査の時点も確認しましょう。公正取引委員会の報告書では、直近の調査結果に基づくことと、対象期間・時点を明瞭に示すことが望ましいとされています。調査会社名や調査名称など、出典を具体的に示すことも挙げられています。[9]
広告制作では、「何の順位か」「どの地域か」「いつの調査か」「誰の調査か」を読み取れるように配置します。掲載後も確認日を決め、調査結果や市場の変化に合わせて表示を更新するとよいでしょう。
注記は、スマートフォンでの読みやすさまで確認します。文字の大きさ、背景との色の差、メインの表現との距離を整え、読者が必要な条件を把握できる形にしましょう。
7.広告主が根拠を把握し、制作担当者と共有する
調査を外部に依頼する際も、広告主が内容を確認する工程を設けましょう。消費者庁は、第三者が調査を行った場合でも、No.1表示に関する景品表示法上の責任は広告主が負うと説明しています。[7]
調査会社から報告書やロゴを受け取ったら、比較対象、回答者の条件、質問文、調査期間、集計方法と結果を確認します。広告原稿を調査会社の説明と照らし合わせ、必要に応じて社内の法務担当者や弁護士と検討することも有効です。
制作会社や広告代理店には、使用する表現、表示する条件、根拠資料を一緒に共有しましょう。バナー、LP、チラシ、動画など、媒体ごとに広告の見え方を確認すると、情報の伝わり方をそろえられます。
「この表示は、どの調査の、どの結果を根拠にしているか」を担当者が説明できるようにしておくと、制作時と掲載後の確認が進めやすくなります。
すでに掲載しているNo.1表示を見直す手順
掲載済みの広告は、表示場所と根拠資料を結び付けて確認すると、作業を進めやすくなります。ウェブサイトやLP、広告画像、パンフレット、チラシ、動画、SNS投稿など、使用している媒体を整理しましょう。
ウェブ、紙、動画、SNSなど、No.1表示を使う媒体を一覧にする。
比較対象、回答者、質問文、調査期間、集計結果を確認する。
必要な修正を整理し、確認担当者と承認担当者を決めて対応する。
調査報告書と掲載原稿を保管し、更新時にも根拠を確認できるようにする。
社内では、調査内容を確認する担当者と、広告の掲載を承認する担当者を明確にします。調査報告書や質問票に加えて、確認済みの広告原稿も保存しておくと、後から判断の根拠をたどれます。情報の確認・共有、管理担当者の設定、根拠情報の保存は、消費者庁の管理上の措置に関する指針でも重視されています。[10]
調査内容に疑問がある場合は、調査会社に資料と説明を求め、広告表現との対応を検討します。不当表示に当たることが明らかになった場合は、表示の是正、消費者の誤認を解消するための対応、再発防止策を進める必要があります。自主的な修正後も、措置命令の要否は、事実関係に基づいて個別に判断されます。[11]
No.1表示を活用するときは、順位の理由を説明できることと、その意味が読者に正しく伝わることを確認しましょう。調査で確かめた評価に合う表現を選び、比較範囲や期間を分かりやすく示すことが、適切な広告づくりにつながります。
出典・参考資料
本文の出典番号に対応する公表資料です。
事例・処分の公表資料(消費者庁)
調査・表示管理の参考資料
個別事例は、各資料の公表時点の広告と処分内容を扱っています。
