懸賞とは?種類ごとの違いと景品表示法のルールをわかりやすく解説

懸賞は、商品やサービスの認知拡大、販売促進、SNSのフォロワー獲得などに活用されるマーケティング施策です。
「抽選で旅行券をプレゼント」「レシートを送って応募」「SNSをフォローして参加」といったキャンペーンも、広い意味では懸賞に含まれます。
ただし、事業者が実施する懸賞には、景品表示法をはじめとする法的なルールがあります。賞品の金額や応募条件を自由に決められるとは限りません。
特に重要なのが、商品購入や来店などの取引が関係しているかどうかです。取引に付随する一般懸賞と、誰でも応募できるオープン懸賞では、適用される景品規制が異なります。
本記事では、懸賞の意味、種類ごとの違い、景品表示法上の限度額、オープン懸賞を実施するときの注意点を解説します。
懸賞とは?
懸賞とは、抽選、クイズ、作品の審査などによって、賞品や賞金を受け取る人を決める企画です。
消費者庁は、景品表示法上の「懸賞」を、次のいずれかの方法によって景品類の提供先や価額を決めるものとしています。
- くじなどの偶然性を利用して決める方法
- 特定の行為の優劣または正誤によって決める方法
したがって、抽選だけが懸賞になるわけではありません。
クイズの正解者から当選者を選ぶ企画、写真や川柳を審査するコンテスト、競技の成績によって賞品を提供する企画なども、景品表示法上の懸賞に該当する可能性があります。
具体的には、次のような企画が考えられます。
- 購入者に抽選券を配布する
- 対象商品のレシートを使って応募する
- 商品の中に当たり券を入れる
- クイズの正解者に賞品を提供する
- 写真や動画を募集し、優秀作品を選ぶ
- SNSのフォローや「いいね」で応募してもらう
- 商店街の福引で賞品を提供する
ただし、一般的に使われる「懸賞」と、景品表示法上の「懸賞」が完全に一致するとは限りません。
景品規制の対象になるかどうかは、キャンペーンの名称ではなく、商品・サービスの取引との関係や、景品の提供方法によって判断されます。
景品表示法における景品類とは?
景品表示法上の「景品類」とは、次の条件を満たす物品、金銭などの経済上の利益です。
- 顧客を誘引するための手段として提供される
- 事業者が提供する商品・サービスの取引に付随している
- 取引の相手方に提供される
景品類には、物品だけでなく、現金、商品券、ポイント、旅行、イベントへの招待、サービスの提供なども含まれます。
一方、通常の値引き、アフターサービス、取引の本来の内容に含まれるものは、景品類に該当しない場合があります。
例えば、商品Aと商品Bをセット商品として販売することが明確であれば、通常、商品Bは景品類に該当しません。
しかし、「商品Aを購入した人に商品Bを無料プレゼント」と表示した場合は、商品Bが取引に付随して提供される景品類に該当する可能性があります。
商品やサービスの位置づけは、事業者側の意図だけではなく、消費者からどのように見えるかも含めて判断されます。
参考:消費者庁「景品類とは」
先着順のプレゼントは懸賞になる?
購入者や来店者に対し、先着順で景品を提供する企画は、原則として景品表示法上の「懸賞」には該当しません。
偶然性や能力の優劣によって、景品を受け取る人を決めていないためです。
ただし、購入者全員や先着者に景品を提供する企画は、「総付景品」として別の規制を受ける可能性があります。
また、Webサイトなどで商品を購入した順番に景品を提供する場合でも、申込時点で景品を受け取れるか分からず、実質的に偶然性によって提供先が決まるケースは、懸賞と判断される可能性があります。
「先着順と表示すれば、懸賞規制を受けない」と単純に判断することはできません。実際の申込方法や景品の提供方法を確認する必要があります。
懸賞の分類と法的なルール
事業者が景品を提供するキャンペーンを企画するときは、最初に商品購入や来店などの取引が関係しているかを確認します。
主な提供方法は、次のように整理できます。
| 分類 | 主な特徴 | 景品規制 |
|---|---|---|
| 一般懸賞 | 購入者やサービス利用者などを対象に抽選や審査を行う | 最高額と総額の制限あり |
| 共同懸賞 | 商店街など一定の条件を満たす複数の事業者が共同で行う | 最高額と総額の制限あり |
| オープン懸賞 | 購入や来店を条件とせず、取引に付随しない形で行う | 具体的な賞品額の上限なし |
| 総付景品 | 購入者や来店者全員、先着者などに提供する | 懸賞とは別の上限あり |
一般懸賞や共同懸賞など、商品購入や来店に付随して実施する懸賞は、実務上「クローズド懸賞」と呼ばれることがあります。
ただし、クローズド懸賞は景品表示法上の正式な用語ではありません。
また、総付景品は抽選や審査を行わないため、法律上の「懸賞」には該当しません。購入者や来店者に景品を提供する方法として、懸賞とは別の規制を受けます。
一般懸賞とは?
一般懸賞とは、商品やサービスの購入者・利用者などを対象に、抽選やクイズ、作品の優劣などによって景品類を提供する企画です。
代表的な例として、次のようなキャンペーンがあります。
- 対象商品を購入した人が応募できる抽選
- 一定金額以上を購入した人に抽選券を配る企画
- サービス契約者を対象にしたプレゼント
- 来店者だけが参加できる抽選会
- 商品に付いている応募券を集めて参加する企画
- 有料イベントの参加者を対象にしたコンテスト
商品購入だけでなく、店舗への来店を応募条件にする場合も、取引に付随する一般懸賞として扱われる可能性があります。
一般懸賞では、1つの景品類の最高額と、キャンペーン全体で提供する景品類の総額の両方に制限があります。
| 懸賞に係る取引価額 | 景品類の最高額 | 景品類の総額 |
|---|---|---|
| 5,000円未満 | 取引価額の20倍まで | 懸賞に係る売上予定総額の2%以内 |
| 5,000円以上 | 10万円まで | 懸賞に係る売上予定総額の2%以内 |
例えば、500円の商品を購入した人が応募できる懸賞では、1つの景品類の最高額は1万円です。
500円の20倍となる1万円を超える景品類は提供できません。
一方、5,000円以上の購入を応募条件にした場合は、1つの景品類の最高額が10万円となります。取引価額が10万円であっても、200万円の景品を提供できるわけではありません。
さらに、個々の景品類が最高額の範囲内であっても、景品類の総額を売上予定総額の2%以内に収める必要があります。
例えば、キャンペーン対象商品の売上予定総額が1,000万円なら、提供できる景品類の総額は20万円以内です。
10万円の景品を2人に提供することはできますが、3人に提供すると総額が30万円となり、上限を超えてしまいます。
一般懸賞では、「1つの景品類の最高額」と「キャンペーン全体の総額」を分けて確認することが重要です。
共同懸賞とは?
共同懸賞とは、一定の条件を満たす複数の事業者が共同して実施する懸賞です。
代表的な例として、次のような企画があります。
- 商店街が共同で行う福引
- 一定の地域にある小売店やサービス事業者が共同で行う懸賞
- 一定の業種に属する相当数の事業者が共同で行うキャンペーン
ただし、複数の会社が協賛していれば、すべて共同懸賞になるわけではありません。
共同懸賞に該当するには、一定地域の事業者が共同して実施する場合など、告示で定められた条件を満たす必要があります。
共同懸賞における景品類の限度額は、次のとおりです。
| 項目 | 限度額 |
|---|---|
| 景品類の最高額 | 取引価額にかかわらず30万円 |
| 景品類の総額 | 懸賞に係る売上予定総額の3%以内 |
共同懸賞は、一般懸賞よりも景品類の限度額が高く設定されています。
ただし、高額な景品を提供するためだけに、形式上複数の事業者を参加させても、共同懸賞に該当するとは限りません。
共同懸賞に該当するか判断が難しい場合は、実施前に専門家や行政窓口へ確認しましょう。
総付景品とは?
総付景品とは、抽選や審査を行わず、商品・サービスの購入者や来店者に景品類を提供する企画です。「ベタ付け景品」と呼ばれることもあります。
例えば、次のような企画が該当します。
- 購入者全員にノベルティを提供する
- 来店者全員に記念品を配布する
- 一定額以上購入した人全員に景品を提供する
- 購入者のうち先着100人に景品を提供する
総付景品は法律上の懸賞には該当しませんが、景品表示法による金額の制限があります。
| 取引価額 | 景品類の最高額 |
|---|---|
| 1,000円未満 | 200円まで |
| 1,000円以上 | 取引価額の20%まで |
例えば、800円の商品を購入した人全員に提供できる景品類は、原則として200円までです。
5,000円以上購入した人全員に景品を提供する場合は、取引価額5,000円の20%となる1,000円までです。
総付景品には、一般懸賞のような売上予定総額に対する総額規制はありません。ただし、業種ごとの告示や公正競争規約などが適用される場合があります。
業種ごとの個別ルールにも注意する
景品表示法の一般的な上限を守れば、どの業種でも問題なく懸賞を実施できるとは限りません。
新聞業、雑誌業、不動産業、医療用医薬品業など、一部の業種には個別の景品規制があります。また、業界ごとの公正競争規約が適用される場合もあります。
懸賞を実施するときは、次の順番で確認しましょう。
- 取引に付随する企画か
- 一般懸賞、共同懸賞、総付景品のどれに当たるか
- 景品類の最高額と総額が上限以内か
- 業種別の告示や公正競争規約がないか
- 応募条件や当選人数を正確に表示しているか
高額な景品を提供する場合や、複数の事業者で実施する場合は、企画の公開前に法務担当者や専門家による確認を受けると安心です。
オープン懸賞とは?
オープン懸賞とは、商品・サービスの購入や店舗への来店を条件とせず、取引に付随しない形で実施する懸賞です。
新聞、テレビ、雑誌、Webサイト、SNSなどで広く告知し、応募フォーム、メール、はがきなどから申し込める企画が該当します。
例えば、次のようなキャンペーンが考えられます。
- Webサイトから誰でも参加できる抽選
- SNSのフォローと「いいね」だけで応募できる企画
- 無料で回答できるクイズキャンペーン
- 商品を購入しなくても応募できる写真コンテスト
- 無料の会員登録だけで参加できるプレゼント企画
オープン懸賞では、応募者に商品購入や有料サービスの利用を求めません。
取引に付随しない形で提供される金品等は、景品表示法上の「景品類」には該当しないため、景品類の最高額や総額に関する規制は適用されません。
オープン懸賞には賞品額の上限がない
オープン懸賞には、景品表示法上の具体的な賞品額の上限がありません。
以前は1,000万円という上限がありましたが、2006年4月に規制が撤廃されました。現在は、1,000万円を超える賞金や高額商品を提供することも、景品表示法の景品規制上は可能です。
ただし、賞品額の上限がないからといって、どのような企画でも自由に実施できるわけではありません。
応募条件や告知方法によっては、取引に付随する一般懸賞や総付景品と判断される可能性があります。
誰でも応募できればオープン懸賞になるとは限らない
WebサイトやSNSから無料で応募できる場合でも、必ずオープン懸賞になるとは限りません。
商品購入を直接の応募条件にしていなくても、取引につながる可能性が高い企画や、購入者を主な対象として実施する企画は、取引に付随すると判断される可能性があります。
注意したいのは、次のようなケースです。
- 商品を購入するとクイズの答えやヒントが分かる
- 商品画像や使用感を投稿すると当選確率が上がる
- 購入者だけが確認できるコードを使用する
- 商品パッケージを中心に応募要領を告知する
- 有料会員の当選確率を高くする
- 景品を受け取るために来店する必要がある
- 賞品を使用するために商品購入が必要になる
例えば、Webサイトから誰でも応募できても、商品パッケージに応募要領を掲載している場合は、商品の購入者を主な対象とした企画と判断されることがあります。
消費者庁のQ&Aでも、WebサイトやSNSから誰でも応募できる一方、商品パッケージにも応募要領を掲載する企画は、一般懸賞の規制対象になると示されています。
応募時に購入を求めているかだけでなく、告知から景品の受け取りまで、取引との関係を一連の流れで確認することが重要です。
SNS懸賞はオープン懸賞になる?
SNS上で行うフォロー&いいねキャンペーンは、商品購入や来店を条件とせず、SNS上で応募が完結する場合、基本的には景品規制の対象になりません。
SNSアカウントをフォローする行為や「いいね」を押す行為は、通常、それだけで商品・サービスの購入に直結するものではないためです。
一方、商品画像や使用感を投稿すると当選確率が2倍になる企画は、商品購入につながる可能性が高いとして、一般懸賞の規制対象になることがあります。
また、SNS上で当選者を決めた場合でも、景品を受け取るために店舗への来店が必要な企画は注意が必要です。
消費者庁のQ&Aでは、次のように整理されています。
- 景品の受け取りに来店が必要なため、取引に付随する
- 店舗に来た当選者は、全員が景品を受け取れる
- そのため、来店者に対する総付景品として規制される
SNS上で抽選していても、必ず一般懸賞になるとは限りません。景品を実際に提供する場面まで含めて分類する必要があります。
オープン懸賞を実施するときの注意点
オープン懸賞には具体的な賞品額の上限はありませんが、表示、個人情報、SNSの利用規約などへの対応が必要です。
応募条件を明確にする
応募期間、応募資格、応募方法、当選人数、賞品内容、当選発表の方法などを明記します。
年齢、居住地域、アカウントの公開・非公開などの条件がある場合も、応募前に確認できるようにしましょう。
告知した当選人数よりも実際の当選人数が少ない場合は、取引条件に関する不当表示として、景品表示法上の問題になる可能性があります。
賞品の内容や価値を正確に表示する
賞品の市場価格、数量、仕様、利用条件などを、実際よりも著しく良く見せてはいけません。
旅行券やクーポンを提供する場合は、有効期限、利用可能な店舗、対象外となる日なども明記します。
「10万円相当」と表示する場合は、その金額を算出した根拠を説明できるようにしておきましょう。
個人情報の利用目的を伝える
応募時に氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどを取得する場合は、利用目的を明示します。
懸賞の抽選や賞品発送のために取得した個人情報を、本人が認識していない営業活動などに利用することは避けなければなりません。
応募規約からプライバシーポリシーを確認できるようにすると安心です。
SNSの利用規約を確認する
X、Instagram、TikTokなどで懸賞を実施する場合は、各プラットフォームのキャンペーンやプロモーションに関する規約も確認します。
大量のアカウント作成や同じ内容の繰り返し投稿を促すと、スパム行為と判断される可能性があります。
なりすましアカウントによる当選詐欺を防ぐため、公式アカウント名や連絡方法も明記しましょう。
ステルスマーケティングを防止する
商品画像や感想の投稿を応募条件にする場合は、投稿内容への事業者の関与の程度によって、投稿が景品表示法上の「事業者の表示」と判断される可能性があります。
広告やキャンペーンへの参加投稿であることが、一般消費者に明瞭に伝わる表示方法を検討しましょう。
まとめ
懸賞とは、抽選などの偶然性や、クイズ・作品などの優劣、正誤によって、景品を提供する相手や景品の価額を決める企画です。
商品購入や来店などの取引に付随する場合は、一般懸賞または共同懸賞として、景品類の最高額と総額が規制されます。
一般懸賞では、取引価額が5,000円未満なら取引価額の20倍、5,000円以上なら10万円が景品類の最高額です。景品類の総額は、懸賞に係る売上予定総額の2%以内に収めなければなりません。
共同懸賞では、景品類の最高額が30万円、総額が売上予定総額の3%以内です。
購入者や来店者全員、先着者などに景品類を提供する場合は、懸賞ではなく総付景品として規制されます。
一方、商品購入や来店を条件とせず、取引に付随しないオープン懸賞には、景品表示法上の具体的な賞品額の上限がありません。
ただし、誰でもWebサイトやSNSから応募できるだけで、必ずオープン懸賞になるわけではありません。商品パッケージでの告知、購入者の当選確率の優遇、景品受け取りのための来店などによって、取引に付随すると判断される可能性があります。
懸賞を企画するときは、応募条件だけでなく、告知から景品の受け取りまでの流れを確認することが重要です。
個別の企画がどの分類に該当するかは、具体的な実施方法によって変わります。高額な賞品を提供する場合や判断が難しい場合は、企画の公開前に専門家または行政窓口へ確認しましょう。
