Googleマップの口コミで名誉毀損は成立する?裁判例・賠償額・削除対応を解説

Googleマップの口コミで名誉毀損は成立する?裁判例・賠償額・削除対応を解説

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Googleマップの口コミによる名誉毀損は、実際の裁判例でも認められており、投稿者に数百万円規模の損害賠償が命じられた例があります。一方で、感想や評価の範囲にとどまる口コミは、名誉毀損とは認められにくいのが実情です。境界線を分けるのは「事実の摘示か」「公共性・公益目的があるか」「内容が真実または真実と信じる相当な理由があるか」という観点です。

この記事では、Googleマップなど口コミサイトでの名誉毀損が成立する条件を、実際の裁判例とともに整理します。飲食店・クリニック・美容室・士業など、店舗ビジネスを営むすべての事業者に役立つ内容です。悪質な口コミへの正しい対応手順と、やってはいけないNG対応もあわせて解説します。

目次

口コミによる名誉毀損とは?

名誉毀損とは、事実を示して人の社会的評価を下げる行為です。法律上、刑事責任と民事責任の2つの側面があります。

刑事上は、刑法第230条の名誉毀損罪が問題になります。公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立します。3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。

民事上は、民法第709条の不法行為責任が問題になります。故意または過失で他人の権利を侵害した場合、損害賠償の責任を負います。口コミ被害では、この民事の損害賠償請求が中心になります。

法人や店舗にも名誉権はある

名誉毀損は、個人だけの問題ではありません。法人や店舗にも社会的名誉が認められます。事業者のイメージや評価を下げる口コミは、名誉毀損として慰謝料や原状回復の対象になり得ます。

飲食店・クリニック・美容室・整体院・士業事務所など、屋号や法人名で営業するすべての事業が対象です。「店舗だから名誉権はない」という誤解は通用しません。

口コミ被害が増えている背景

Googleマップの口コミは、来店前の判断材料として大きな影響力を持ちます。星評価が低いだけで来店をためらう人は少なくありません。

そのため、虚偽や悪質な口コミによる被害は深刻です。医療機関を中心に、削除や発信者情報開示を求める裁判が全国で相次いでいます。

名誉毀損が成立する条件

口コミがすべて名誉毀損になるわけではありません。成立には一定の要件が必要です。

成立する3つの要件

名誉毀損が成立するには、次の3要件を満たす必要があります。

要件内容
公然性不特定または多数の人が見られる状態であること。口コミサイトは誰でも閲覧できるため、この要件を満たします。
事実の摘示具体的な事実を示していること。単なる感想や評価ではなく、事実として読み取れる内容であること。
社会的評価の低下その内容により、対象者の社会的評価が下がる恐れがあること。

真実性・公益性があれば違法性が否定されることも

3要件を満たしても、必ず違法になるわけではありません。次の条件を満たす場合には、違法性が否定される可能性があります。

  • 公共の利害に関する事実であること(公共性)
  • 主に公益を図る目的であること(公益目的)
  • 摘示した事実が真実であること、または真実と信じる相当な理由があること(真実性・相当性)

店舗や医療機関の利用体験に関する口コミは、他の利用者の判断材料になるため、内容によっては公共性・公益性が問題になります。ただし、すべての口コミに当然これらが認められるわけではありません。虚偽の事実、嫌がらせ目的の投稿、必要以上の個人攻撃まで保護されるわけではありません。

批判的な内容であっても、公共性・公益目的があり、内容が真実または真実と信じる相当な理由がある場合には、違法性が否定される可能性があります。逆に、単に評判を落とす目的の虚偽投稿は、名誉毀損に該当する可能性が高くなります。

感想と事実摘示の境界線

口コミ対応で最も難しいのが、「意見・感想」と「事実の摘示」の区別です。ここが名誉毀損の成否を分けます。

意見・論評は原則として保護される

「対応が好みではなかった」「自分には合わなかった」といった主観的な感想は、意見の表明です。意見や論評は、表現の自由として広く保護されます。

実際に、ある医院への「ヤブ医者」という投稿について、裁判所が主観的な意見の範囲内と判断し、削除請求を退けた例があります。評価や感想にとどまる表現は、名誉毀損とは認められにくいのが実情です。

虚偽の事実を書くと違法になりやすい

一方、ありもしない事実を具体的に書くと、名誉毀損が成立しやすくなります。「実際には受けていない施術をされた」「言っていないことを言われた」といった虚偽の事実の摘示です。

たとえば後述の整形外科クリニックの判決でも、実際の診療と異なる内容を事実のように書いたことが問題になりました。事実か意見かは、一般の読者がその文章をどう受け取るかで判断されます。

低評価だけでは名誉毀損になりにくい

星1や低評価だけでは、通常は具体的な事実を示しているとはいえません。そのため、低評価であること自体を理由に名誉毀損を主張するのは難しい場合があります。

問題になるのは、低評価に加えて、虚偽の事実や社会的評価を下げる具体的な記述があるケースです。たとえば「無資格者が施術している」「勝手に治療された」「詐欺会社だ」といった表現は、事実として読まれる可能性があり、内容によっては名誉毀損や信用毀損が問題になります。

名誉毀損以外の責任が問題になることもある

悪質な口コミでは、名誉毀損だけでなく、信用毀損、業務妨害、侮辱、プライバシー侵害などが問題になることもあります。

たとえば、店舗の衛生状態や医療行為について虚偽の内容を書いた場合は、社会的評価を下げる名誉毀損だけでなく、事業上の信用を傷つける信用毀損や、予約・来店を妨げる業務妨害の問題になり得ます。

一方で、「接客が冷たく感じた」「自分には合わなかった」といった主観的な感想は、直ちに違法とはいえません。問題の口コミがどの権利侵害にあたるのかを整理したうえで、削除請求や開示請求を検討することが重要です。

口コミ名誉毀損の裁判例と賠償額

賠償額は、投稿内容の悪質性、掲載期間、閲覧可能性、実際の被害、発信者情報開示に要した費用などによって変わります。ここでは、実際に報じられた裁判例をもとに、おおよその傾向を整理します。

整形外科クリニックの例|大阪地裁で約337万円

大阪市の整形外科クリニックを運営する医療法人が、Googleマップの悪評を投稿した利用者に損害賠償を求めた裁判です。

口コミには「理学療法士でもない感じで身体をさすっているだけ」「医師が大声でキレた」といった内容が書かれていました。医療法人は600万円の賠償を求めました。

報道によると、大阪地裁は2025年9月11日、名誉毀損を認め、投稿者に約337万円の支払いを命じました。口コミ被害としては高額な賠償が認められた例として報じられています。

眼科医院の例|大阪地裁で200万円と削除命令

兵庫県尼崎市の眼科医院を運営する医療法人が、悪評を投稿した相手に賠償と削除を求めた裁判です。

口コミには「勝手に右目はレンズを入れられていました。最悪」「他の眼科へ行くことをお勧めします」といった内容が投稿されていました。

報道によると、大阪地裁は2024年5月、名誉毀損を認め、投稿者に200万円の賠償と投稿の削除を命じました。この事案では、Googleへの発信者情報開示手続などを経て投稿者の特定を進め、その後、損害賠償を求めて提訴しています。

その他の裁判例

飲食店や一般企業でも、虚偽の口コミに賠償が命じられた例があります。

対象投稿内容結果
企業(福岡地裁)「詐欺会社」「営業がしつこい」などの虚偽投稿営業妨害・名誉毀損を認定し50万円超の賠償
医院(東京地裁)「ヤブ医者」という感想投稿主観的意見の範囲内として削除請求を棄却

これらの裁判例からわかるのは、虚偽の事実を含む投稿は賠償の対象になりやすく、感想や評価にとどまる投稿は認められにくいという傾向です。

賠償額の相場

名誉毀損の賠償額は法律で定められていません。過去の裁判例から、おおよその相場が見えてきます。

対象賠償額の目安
個人10万円〜50万円程度
法人・団体50万円〜100万円程度
侮辱1万円〜10万円程度
悪質・重大な被害数百万円に上ることもある

整形外科クリニックの約337万円は、この相場の中でも高額な部類です。被害が大きく悪質と判断されれば、賠償額は大きくなります。

悪質な口コミへの対応手順

実際に被害を受けた場合、どう動けばよいか。法的措置までの流れを段階的に整理します。

ステップ1:証拠を保全する

まず、問題の口コミをスクリーンショットで保存します。投稿日時・投稿者名・内容がわかる形で記録してください。投稿が削除される前に保全することが重要です。

あわせて、その口コミによる被害状況も記録します。予約キャンセルや売上の減少など、損害を示す資料があると後の請求に役立ちます。

ステップ2:削除を請求する

悪質な口コミを見つけた場合、まずはGoogleビジネスプロフィールのクチコミ管理ツールから、不適切な口コミとして報告します。Googleの審査で削除されない場合は、再審査請求を行うこともできます。

それでも削除されない場合は、Google LLCを相手方とする削除仮処分などの法的手続を検討します。手続きが複雑なため、弁護士に依頼する事業者も多くいます。なぜその投稿が名誉毀損や権利侵害にあたるのかを、根拠とともに示すことが重要です。

ステップ3:発信者情報を開示請求する

賠償請求には、投稿者の特定が必要です。匿名投稿の場合、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求で投稿者を特定します。

前述の眼科医院の事案でも、医療法人がGoogleへの発信者情報開示手続などを経て投稿者の特定を進め、その後、損害賠償を求めて提訴しています。Googleへの開示で得られる情報だけで投稿者の氏名や住所が一度に判明するとは限らず、アクセスプロバイダへの追加請求が必要になる場合もあります。

ステップ4:損害賠償を請求する

投稿者を特定できたら、民法第709条に基づき損害賠償を請求します。話し合いで解決しない場合は、訴訟を提起します。

悪質性が高い場合は、名誉毀損罪での刑事告訴も選択肢になります。民事と刑事は並行して進めることも可能です。

やってはいけないNG対応

口コミ対応を誤ると、かえって状況を悪化させます。避けるべき対応を整理します。

感情的に反論・口論する

低評価の口コミに感情的な返信をすると、その対応自体が新たな悪評を招きます。返信は他の利用者も見ています。冷静で誠実な姿勢が信頼につながります。

身に覚えのない口コミを放置する

虚偽の口コミを放置すると、他の利用者がそれを真実と受け取ってしまいます。問い合わせや来店への影響が出る前に、削除請求などの対応を検討してください。

口コミ投稿を金銭や割引で誘導する

高評価を条件に割引や特典を付ける口コミ依頼は、景品表示法上のステルスマーケティング規制や、口コミプラットフォームのポリシーに抵触するリスクがあります。実際に、口コミ投稿への割引提供がステマの論点として問題視された例もあります。

特典を付ける場合でも、評価内容を指定しないこと、投稿者の自主性を妨げないこと、広告・依頼関係がある場合は明瞭に表示することが重要です。ただし、表示を明瞭にしても、プラットフォーム側のポリシーに違反する可能性は残ります。Googleマップ上の口コミでは、特典付き依頼そのものを慎重に扱うべきです。短期的に高評価を増やす施策よりも、実際の顧客体験を改善し、自然な口コミが増える仕組みを作ることが安全です。

事実か意見かを区別せず一律に削除請求する

正当な感想や評価まで削除請求すると、認められないばかりか、対応への不信を招きます。法的措置の前に、その投稿が事実摘示か意見かを見極めることが大切です。判断に迷う場合は弁護士に相談してください。

まとめ

Googleマップの口コミによる名誉毀損は、実際の裁判例でも認められており、数百万円規模の賠償が命じられた例があります。虚偽の事実を書いた投稿は、賠償の対象になり得ます。

一方、感想や評価にとどまる口コミは、名誉毀損とは認められにくいのが実情です。成否を分けるのは「事実の摘示か」「公共性・公益目的があるか」「内容が真実または真実と信じる相当な理由があるか」という観点です。

被害を受けた場合は、証拠保全・削除請求・発信者情報開示・損害賠償という流れで対応します。感情的な反論や口コミの誘導といったNG対応は避けてください。

口コミ対応は、法的知識と冷静な判断が求められる分野です。集客のカチプロでは、店舗ビジネスのGoogleマップ集客と口コミ対策を実行レベルで支援しています。口コミ被害や評判管理にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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