コンジョイント分析とは?やり方・計算方法とExcel分析を解説

コンジョイント分析とは、商品やサービスを構成する複数の要素を組み合わせて提示し、回答者の評価や選択から「何をどの程度重視しているか」を推定する分析手法です。
価格だけ、機能だけを別々に質問するのではなく、実際の商品に近い組み合わせを比べてもらう点が特徴です。新商品の仕様、価格設定、メニュー構成など、複数の条件にトレードオフがある場面で役立ちます。
コンジョイント分析とは?わかりやすく解説
商品を選ぶとき、消費者は一つの条件だけで判断するとは限りません。「少し高くても待ち時間が短い店」「機能は少なくても価格が安い商品」のように、複数の条件をまとめて比較します。
コンジョイント分析では、価格、機能、デザインなどを組み合わせた仮想の商品案を作り、どれを選ぶか、どの程度欲しいかを回答してもらいます。その結果を統計的に分解し、各条件が選好へ与えた相対的な影響を推定します。
一言で表すと「全体を選んでもらい、後から要素ごとの価値を逆算する分析」です。 回答者に「価格は何%重要ですか」と直接聞くのではなく、選択行動に現れた優先順位を読み取ります。
なぜ普通のアンケートだけでは足りないのか
「価格、品質、接客のどれが重要ですか」と質問すると、回答者がすべてを「重要」と答えることがあります。しかし実際の購入では、予算や条件の制約があり、何かを優先して何かを譲る必要があります。
コンジョイント分析では、価格と品質などが異なる商品案を比較させることで、そのトレードオフを観察します。そのため、単純な重要度アンケートよりも、実際の選択に近い判断材料を得やすくなります。
飲食店の具体例で仕組みを理解する
新しいランチセットを検討する例で考えます。まず、分析したい要素と選択肢を次のように決めます。
| 属性 | 水準 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 価格 | 1,200円/1,600円/2,000円 | 値上げが選好へ与える影響 |
| メイン料理 | ハンバーグ/パスタ/魚料理 | 好まれるメニュー |
| 提供時間 | 10分/20分/30分 | 待ち時間の短縮価値 |
これらを組み合わせ、次のような案を回答者へ提示します。
- 価格:1,600円
- メイン:ハンバーグ
- 提供時間:10分
- 価格:1,200円
- メイン:魚料理
- 提供時間:30分
回答者に「どちらを選ぶか」を尋ねると、安さと待ち時間のどちらを優先したかが選択に現れます。このような設問を条件を変えて繰り返し、複数回答者の結果を分析すると、価格・料理・提供時間が選好へ与える影響を推定できます。
コンジョイント分析が示すのは、設定した商品案と調査条件の中での相対的な好みです。調査に含めていない立地、接客、認知度などの影響まで説明できるわけではありません。
コンジョイント分析の基本用語
| 用語 | 意味 | ランチの例 |
|---|---|---|
| 属性 | 商品を構成する評価対象の要素 | 価格、メイン料理、提供時間 |
| 水準 | 各属性に設定する具体的な選択肢 | 価格なら1,200円、1,600円、2,000円 |
| プロファイル | 各属性から一つずつ水準を組み合わせた商品案。カードとも呼ばれる | 1,600円・ハンバーグ・10分 |
| 部分効用値 | 各水準が選好へ与える相対的な寄与を数値化したもの | 1,200円はプラス、2,000円はマイナスなど |
| 相対的重要度 | 各属性が全体の選好をどの程度左右したかを示す比率 | 価格51%、提供時間31%など |
効用値と重要度は同じではない
効用値は「どの水準がどれほど好まれたか」を示し、重要度は「どの属性が選択をどれほど左右したか」を示します。価格という属性そのものに一つの効用値が付くのではなく、1,200円、1,600円、2,000円という各水準に部分効用値が推定されます。
また、効用値は同じ分析モデル内で比較する相対値です。0が「価値なし」を意味するわけではなく、異なる調査の数値をそのまま比べることもできません。
コンジョイント分析でわかること
どの属性が選択を左右するか
価格、機能、デザイン、提供時間などのうち、回答者の評価や選択を大きく動かした属性を把握できます。商品開発で優先すべき改善点を絞る材料になります。
どの水準が好まれるか
属性ごとの部分効用値を見ると、価格帯や機能の選択肢の中で、どの水準が相対的に好まれるかを確認できます。単に「価格が重要」と分かるだけでなく、どの価格帯で選好が大きく下がるかを検討できます。
商品案の組み合わせを比較できる
推定した効用値を使い、未提示の商品案を含めて総合効用を計算できます。競合案を含むシナリオを設定すれば、各案が選ばれる確率をモデル上で比較することも可能です。
シミュレーション結果は、実際の売上や市場シェアの保証ではありません。 回答者の構成、比較対象、推定モデル、ブランド認知、販売場所などによって結果は変わります。
アンケートの質問形式
評定型
一つずつ提示したプロファイルを、「購入したいと思わない」から「購入したい」までの段階で評価してもらいます。回答方法が分かりやすく、Excelの回帰分析で扱いやすい一方、実際の購入のように複数案から一つを選ぶ形式とは異なります。
順位型
複数のプロファイルを好ましい順に並べてもらいます。全体の優先順位は得られますが、カード数が増えると回答者の負担が大きくなります。
選択型(CBC)
2~4案程度を同時に提示し、「購入しない」を含めて一つ選んでもらう方法です。Choice-Based Conjointの頭文字からCBCと呼ばれます。購入場面に近い形式ですが、一般には多項ロジットモデルなどを用いるため、設計・推定には専用ソフトや統計環境を使うことが多くなります。
コンジョイント分析のやり方を7つの手順で解説
- 意思決定の目的を決める
新商品の仕様を決める、価格帯を検討する、メニューを改善するなど、調査後に何を決めるかを明確にします。 - 属性と水準を決める
回答者が理解でき、実際に提供可能で、互いに意味が重なりすぎない属性・水準を設定します。価格も一つの属性として含めます。 - 質問形式と分析方法を決める
評定型、順位型、選択型のどれを使うか決めます。質問形式によって必要な設問設計と推定方法が変わります。 - 実験計画を作る
すべての組み合わせを出すのではなく、直交表などを利用して情報を保ちながら提示数を減らします。現実には存在しない組み合わせや、明らかに一方が優れる設問がないか確認します。 - 調査票を作り、事前確認する
属性の説明、カードの見せ方、設問数を整えます。少人数でテストし、回答時間や分かりにくい表現を確認します。 - アンケートを実施して推定する
対象顧客から回答を集め、評定型なら回帰分析、選択型なら選択モデルなど、形式に合う方法で部分効用値を推定します。 - 重要度と商品案を解釈する
効用値、重要度、回答者層ごとの差を確認します。シミュレーションは前提を変えて複数案を比較し、利益や実現可能性も合わせて意思決定します。
直交表を使う理由と作り方の考え方
3属性に各3水準がある場合、すべての組み合わせは 3 × 3 × 3 = 27通り です。属性や水準が増えると組み合わせは急増し、回答者がすべてを評価するのは難しくなります。
直交表は、各水準が偏らず現れ、属性どうしの関係をできるだけ独立させるように組み合わせを配置した表です。適切な実験計画を使うことで、全組み合わせより少ないプロファイルから主効果を推定できます。
既成の直交表へ水準を機械的に当てはめればよいとは限りません。 属性数、水準数、調べたい交互作用、禁止したい組み合わせによって必要な設計が変わります。重要な調査では、実験計画法に詳しい担当者や専用ツールへ確認してください。
避けたいプロファイル
- 実際には提供できない価格・機能の組み合わせ
- 他の条件が同じで価格だけ高いなど、一方が明らかに劣る組み合わせ
- 回答者が意味を区別できないほど似た水準
- 現実離れした条件により、回答者が想定を受け入れられない組み合わせ
効用値と重要度の計算方法
次の数値は、仕組みを説明するための架空の結果です。数値が大きいほど、その水準が同じ分析内で相対的に好まれたとします。
| 属性 | 水準 | 部分効用値 | 属性内の範囲 |
|---|---|---|---|
| 価格 | 1,200円 | +1.2 | 1.2-(-1.4)=2.6 |
| 1,600円 | +0.2 | ||
| 2,000円 | -1.4 | ||
| 提供時間 | 10分 | +0.8 | 0.8-(-0.8)=1.6 |
| 20分 | 0.0 | ||
| 30分 | -0.8 | ||
| メイン料理 | ハンバーグ | +0.4 | 0.4-(-0.5)=0.9 |
| パスタ | +0.1 | ||
| 魚料理 | -0.5 |
加法型モデルでは、商品案に含まれる水準の効用値を合計して総合効用を求めます。たとえば「1,600円・ハンバーグ・10分」の総合効用は次のとおりです。
総合効用 = 0.2 + 0.4 + 0.8 = 1.4相対的重要度は、各属性内の最大効用値と最小効用値の差を求め、その範囲が全属性の範囲合計に占める割合として計算する方法があります。
属性の重要度 = その属性の効用値の範囲 ÷ 全属性の範囲合計 × 100例では範囲合計が 2.6+1.6+0.9=5.1 なので、価格は約51%、提供時間は約31%、メイン料理は約18%です。価格の重要度が最も高い一方、1,600円でも待ち時間や料理の組み合わせによって総合評価を補える可能性があると読めます。
効用値の基準化や重要度の算出方法は、使用するモデルやソフトによって異なります。結果を見るときは数値だけでなく、符号化の方法、基準水準、推定誤差も確認します。
Excelでコンジョイント分析を行う方法
評定型の簡単なコンジョイント分析であれば、Excelの回帰分析を利用できます。ここでは、ランチ案を1~10点で評価してもらった場合の基本的な流れを説明します。
1.回答データを表にする
1行を1件の回答とし、回答者ID、プロファイル番号、各属性の水準、評価点を列にします。文字のままでは回帰分析に使えないため、カテゴリの水準はダミー変数へ変換します。
| 回答者ID | 価格1,600円 | 価格2,000円 | パスタ | 魚料理 | 提供20分 | 提供30分 | 評価点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 001 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 |
| 001 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 5 |
| 001 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 4 |
上の例では、価格1,200円、ハンバーグ、提供10分をそれぞれ基準水準として列を作っていません。このように一つを基準にするダミーコーディングでは、各係数は基準水準との差として解釈します。
2.分析ツールを有効にする
デスクトップ版Excelで「データ」タブに「データ分析」がない場合は、オプションから「分析ツール」を有効にします。データ分析から「回帰分析」を選び、入力Y範囲に評価点、入力X範囲にダミー変数を指定します。
3.回帰係数を効用値として解釈する
単純な評定型では、各ダミー変数の回帰係数から、基準水準に対する評価の上がり下がりを読み取ります。必要に応じて水準内の効用値の合計が0になるよう再基準化し、属性内の最大値と最小値の差から相対的重要度を求めます。
4.当てはまりと統計的な不確実性を確認する
係数だけでなく、決定係数、標準誤差、有意確率、予測値と実測値の差も確認します。回答者をまとめて分析すると個人差が平均化されるため、顧客層別の分析や階層モデルが必要になる場合もあります。
Excelだけで扱いやすいのは、主に基本的な評定型です。 選択型コンジョイントでは選ばれた案が0・1になるため、通常の線形回帰ではなく、ロジットモデルなど質問形式に合った推定方法が必要です。また、Excel for the webでは回帰分析ツールを作成できないため、デスクトップ版または別の統計ツールを使用します。
価格設定と支払意思額への活用
価格を属性に含めると、価格が上がったときに選好がどの程度下がるかを他の属性と同時に推定できます。新機能や待ち時間短縮による効用の増加を、価格の係数で割って金額へ換算する考え方は、限界支払意思額の推定に使われます。
ただし、価格係数の符号や関係が妥当であること、価格を連続変数として扱えることなど、モデル上の前提が必要です。算出値をそのまま最適価格とせず、原価、競合価格、ブランド、回答者の予算、実売データと合わせて判断します。
コンジョイント分析の活用事例
| 分野 | 属性の例 | 活用する判断 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 価格、料理、量、提供時間、予約可否 | ランチセットやコースの構成、値付け |
| 食品・日用品 | 容量、原材料、パッケージ、価格 | 新商品の仕様、棚に並べる商品案 |
| 家電・デジタル製品 | 機能、サイズ、電池、保証、価格 | 搭載機能と価格帯の組み合わせ |
| ホテル・旅行 | 立地、部屋、食事、取消条件、価格 | 宿泊プランの設計、追加サービス |
| BtoBサービス | 機能、導入支援、契約期間、料金 | 料金プラン、機能パッケージ |
メリット
- 条件間のトレードオフを捉えられる:価格を下げずに、どの機能や体験で評価を補えるか検討できる。
- 直接質問では見えにくい優先順位を推定できる:商品全体の評価・選択から、属性と水準の影響を分解できる。
- 複数の商品案を同じ基準で比較できる:効用値を合計し、候補となる組み合わせをシミュレーションできる。
- 企画段階でも調査できる:まだ販売していない仕様や価格の仮想案を比較できる。
デメリットと注意点
- 属性と水準の設計が結果を左右する:重要な条件を外すと、その条件の影響は推定できない。
- 設問が多いと回答負担が増える:疲労により、後半の回答が雑になる可能性がある。
- 仮想回答と実際の購入は一致しないことがある:ブランド、売場、在庫、競合など実際の環境も影響する。
- 高度な形式は専門知識が必要:CBC、個人別推定、交互作用の検討には統計モデルや専用ソフトが必要になる。
- 市場シェアを断定できない:シミュレーションは設定した比較案とモデルの範囲内の予測である。
他の分析手法との違い
| 手法 | 主な目的 | コンジョイント分析との違い |
|---|---|---|
| 単純なアンケート | 満足度や重要度を直接質問する | コンジョイント分析は、組み合わせの評価・選択から要素ごとの価値を推定する |
| 重回帰分析 | 複数の説明変数と結果の関係を推定する | 回帰分析は推定手段の一つ。コンジョイント分析は実験計画、調査、効用推定を含む調査手法 |
| A/Bテスト | 実際に提示した案の成果を比較する | A/Bテストは実環境の行動を測る。コンジョイント分析は販売前の多数の組み合わせも比較しやすい |
| CVM | 商品・環境などへの支払意思額を直接または段階的に尋ねる | コンジョイント分析は複数属性の組み合わせを評価し、属性別の価値を推定する |
よくある質問
必要なサンプル数は何人ですか?
一律の正解はありません。属性数、水準数、1人あたりの設問数、質問形式、分析したい顧客層の数、必要な精度によって変わります。全体傾向だけでなく年代や利用頻度別にも比較するなら、各層で十分な回答数が必要です。調査設計と推定方法を決めた上で、精度検証や事前調査から判断します。
属性はいくつまで設定できますか?
技術的に設定できる数と、回答者が現実的に比較できる数は同じではありません。属性が増えるほど情報量は増えますが、回答負担も増えます。意思決定に使う属性へ絞り、補足的な条件は全案で固定する方法を検討します。
無料で分析できますか?
小規模な評定型であれば、Excel、R、Pythonなどで分析できます。ただし、直交表の作成、回答者ごとの効用推定、CBC、市場シミュレーションまで行う場合は、R・Pythonのパッケージや専用調査ソフトの方が適しています。無料かどうかだけでなく、調査設計を正しく再現できるかで選びます。
RやPythonとExcelはどう使い分けますか?
Excelは、データ確認や基本的な評定型の回帰分析に向きます。RやPythonは、選択モデル、回答者層別の推定、反復処理、再現可能な分析に向きます。選択型や大規模調査では、専用ソフトを含めて検討します。
分析結果だけで商品を決めてもよいですか?
結果は意思決定の材料の一つです。好まれる案でも、原価が高い、提供が難しい、ブランド方針と合わない場合があります。収益性、実現可能性、定性調査、試験販売などと組み合わせて判断します。
まとめ:商品全体の選択から、顧客の優先順位を読み解く
コンジョイント分析は、属性と水準を組み合わせた商品案を評価・選択してもらい、各水準の部分効用値と属性の相対的重要度を推定する方法です。価格と機能、料理と待ち時間など、現実の選択で生じるトレードオフを捉えられます。
成功の鍵は、分析手法より前に「何を決める調査か」を明確にし、現実的な属性・水準と適切な質問形式を設計することです。 基本的な評定型はExcelでも試せますが、CBCや市場シミュレーションでは、質問形式に合う統計モデルと専門ツールを選びましょう。
