コーホート分析とは?表の見方・ExcelとGA4でのやり方を解説

コーホート分析とは?表の見方・ExcelとGA4でのやり方を解説
最初に結論

コーホート分析とは、同じ時期に利用を始めた顧客など、共通の条件を持つグループを作り、その後の継続・再購入・売上の変化を時間の経過に沿って比較する分析手法です。

月ごとの売上や再購入率を見るだけでは、その月に新しく増えた顧客と以前からの顧客が混ざります。コーホート分析では「初回購入から1か月後」「登録から3週後」のようにスタート地点をそろえるため、顧客がいつ離れやすいか、施策後に定着率が改善したかを判断しやすくなります。

コーホート分析とは? 同じ条件の集団を時間軸で比べる方法

コーホート(cohort)は、共通する出来事や条件を持つ集団を意味します。もともとは、同じ時期に生まれた世代などを追跡する人口統計や医学研究でも使われる考え方です。マーケティングでは、次のような顧客グループをコーホートとして扱います。

  • 同じ月に初めて購入した顧客
  • 同じ週に会員登録したユーザー
  • 同じキャンペーンから獲得した顧客
  • 同じ店舗やプランを利用し始めた顧客

作成したグループごとに、登録後の利用率、初回購入後の再購入率、解約率、顧客単価などを追います。これにより、「4月に獲得した顧客は、1月に獲得した顧客より3か月後も残っている」といった比較ができます。

ポイントは、カレンダー上の同じ月ではなく、開始から同じ経過期間を比べることです。 1月獲得顧客の3月実績と、4月獲得顧客の6月実績は、どちらも「獲得2か月後」として比較できます。

通常の月次集計では分からないこと

たとえば、4月の再購入者数が3月より増えたとしても、新規顧客が増えた結果なのか、以前からの顧客が定着した結果なのかは分かりません。顧客の開始時期が混ざっているためです。

コーホート分析では、1月に初回購入した顧客、2月に初回購入した顧客というように分け、各グループの1か月後、2か月後を比べます。顧客獲得数の大小と、獲得後の定着の良し悪しを分けて考えられる点が大きな特徴です。

コーホート表の見方を具体例で理解する

次の表は、初回購入月ごとに顧客を分け、その後の各月にもう一度購入した顧客の割合を示した例です。M0は初回購入月、M1は1か月後、M2は2か月後を表します。

初回購入月初回顧客数M0M1M2M3
1月100人100%42%30%24%
2月120人100%45%32%26%
3月110人100%53%40%未経過
4月130人100%55%未経過未経過

横方向に見ると、同じコーホートの再購入率が時間とともにどう変わったかが分かります。1月の顧客は、1か月後に42%、3か月後に24%が再購入しています。

縦方向に見ると、同じ経過期間におけるコーホート間の差が分かります。M1を見ると、1月の42%に対して3月は53%、4月は55%です。3月に初回体験や購入後の案内を変えたのであれば、改善が定着率を押し上げた可能性があります。ただし、季節性や獲得チャネルなど他の条件も確認してから結論を出します。

「未経過」を0%として扱わないでください。 4月コーホートのM2は、数値が悪いのではなく、まだ2か月後を迎えていない状態です。新しいコーホートほど右側が空欄になるため、コーホート表は三角形になります。

コーホート分析で何がわかる?

顧客が離れやすいタイミング

継続率が大きく下がる列を確認すると、離脱が集中する時期を見つけられます。初回購入の翌月に急落するなら、商品への理解不足、次回購入の案内不足、初回割引だけを目的にした顧客の増加などを検討します。サブスクリプションで特定の契約月に下がるなら、その直前の利用支援や更新案内を見直す候補になります。

顧客獲得施策の「その後」の質

キャンペーンで多くの顧客を獲得しても、すぐ離脱すれば長期的な成果は小さくなります。獲得月や広告チャネルをコーホートにして継続率や累積売上を比べると、顧客数だけでなく、その後も利用する顧客を獲得できたかを確認できます。

商品・サービス改善の効果

購入後の案内、アプリの使い方、予約時の説明などを変更した前後でコーホートを比較します。変更後のグループで同じ経過期間の継続率が上がっていれば、改善が定着に寄与した可能性があります。

将来の継続顧客数や売上の見通し

過去のコーホートで、初回顧客のうち何%が3か月後、6か月後も利用したかを確認すると、新しいコーホートの将来像を見積もる材料になります。ただし、価格、商品、集客方法、季節が変われば同じ推移になるとは限らないため、予測は定期的に更新します。

コーホート分析のやり方を6つの手順で解説

  1. 分析目的を決める
    再購入率を改善したいのか、解約時期を知りたいのか、集客施策の質を比べたいのかを決めます。目的によってコーホートの条件と追跡する指標が変わります。
  2. コーホートへの登録条件を決める
    初回購入月、会員登録週、契約開始月など、顧客がグループへ入る起点を一つ決めます。異なる起点を同じ表に混ぜないようにします。
  3. 追跡する行動と期間を決める
    再購入、来店、ログイン、契約継続など、何を「残っている」とみなすかを定義します。日・週・月の粒度は、通常の利用間隔に合わせます。
  4. 顧客ごとの起点と行動履歴を集計する
    顧客ID、初回日、利用日を使い、初回から何日後・何か月後に再利用したかを求めます。同じ期間に何度利用しても、継続人数を測る場合は1人として数えます。
  5. コーホート表を作って比較する
    行にコーホート、列に経過期間、セルに継続人数または継続率を置きます。条件付き書式で数値に色を付けると、低下のパターンを把握しやすくなります。
  6. 仮説を立て、施策後のコーホートで検証する
    離脱が多い時期に案内や体験を改善し、その後に始めた顧客の同じ経過期間と比較します。改善前後で顧客属性や集客方法が違わないかも確認します。

Excelでコーホート分析を行う方法

Excelで行う場合は、顧客IDと利用日を記録した履歴データを用意します。ここでは、A列に顧客ID、B列に購入日があり、2行目からデータが始まる例で説明します。

1.顧客ごとの初回購入日を求める

C列に初回購入日を作ります。MINIFS関数を使えるExcelでは、同じ顧客IDの購入日のうち最も早い日を取得します。

=MINIFS($B$2:$B$10000,$A$2:$A$10000,A2)

2.初回購入月と利用月をそろえる

D列に初回購入月、E列に各購入の利用月を作ります。月初の日付として保持すると、並べ替えや集計に使いやすくなります。

初回購入月:=EOMONTH(C2,-1)+1
利用月:=EOMONTH(B2,-1)+1

3.初回からの経過月数を求める

F列に経過月数を作ります。初回購入月と利用月が同じ場合は0、翌月なら1になります。

=DATEDIF(D2,E2,"m")

4.同じ顧客・同じ利用月の重複を除く

継続人数を測る場合、同じ顧客が同じ月に3回購入しても1人として数えます。顧客IDと利用月の組み合わせで重複を除いた集計用データを作るか、データモデルを使ったピボットテーブルで顧客IDを一意に数えます。

5.ピボットテーブルでコーホート表を作る

行に「初回購入月」、列に「経過月数」、値に「顧客IDの一意の個数」を置きます。各セルの人数を、同じ行の経過月数0の人数で割れば継続率になります。

継続率 = 各経過月の継続顧客数 ÷ M0の顧客数

完成した継続率の範囲へ条件付き書式のカラースケールを設定すると、数値が大きいセルと小さいセルを色の濃淡で確認できます。

Excelテンプレートの基本列
顧客ID/利用日/初回利用日/コーホート月/利用月/経過月数
集計表は、コーホート月を行、経過月数を列、顧客IDの一意の個数を値にします。

GA4でコーホート分析を行う方法

Webサイトやアプリの利用継続を確認する場合は、Google アナリティクス4の「コホートデータ探索」を利用できます。「探索」からテンプレートギャラリーを開き、「コホートデータ探索」を選びます。

設定では、最初にコーホートへ含める条件を決めます。たとえば初回接触、特定イベント、トランザクションなどです。次に、ユーザーが後の期間にも満たす「リピートの条件」を設定し、日・週・月の粒度を選びます。

GA4には、各期間だけを見る「標準」、その期間まで毎回条件を満たしたユーザーを見る「ローリング」、その期間までに一度でも条件を満たしたユーザーを見る「累計」があります。どの計算方法を選ぶかで同じデータでも数値が変わるため、分析目的に合わせて選びます。

GA4のコーホートはデバイスデータを基に決まり、コーホートの決定にはUser-IDが考慮されないと公式ヘルプに記載されています。複数端末を使う顧客を完全に同一人物として追えるとは限らない点に注意してください。

コーホート表・ヒートマップの読み方

横方向:同じコーホートの時間変化を見る

1行を左から右へ見ると、利用開始後にどのような速度で継続率が下がったかが分かります。特定の列で急に低下するなら、その直前の体験や案内を調べます。右に進むほど下がること自体は珍しくないため、低下した事実より、どこで大きく変わったかを見ます。

縦方向:同じ経過期間で世代を比べる

M1、M2など同じ列を上から下へ見ると、後から獲得した顧客の定着が改善しているかを確認できます。施策後のコーホートだけ数値が上がった場合、施策が影響した可能性があります。

斜め方向:特定の時期に全体へ起きた変化を探す

複数のコーホートで、同じカレンダー月に当たるセルが一斉に悪化している場合、顧客の経過期間ではなく、価格改定、休業、季節、システム障害など、その時期に共通する出来事が影響した可能性があります。

横は顧客の経過、縦はコーホート間の差、斜めはカレンダー上の共通要因を見ると、表を立体的に読み取れます。

業種別のコーホート分析活用例

業種コーホートの例追跡する指標分かること
EC・通販初回購入月再購入率、累積購入金額初回商品や獲得施策によって、その後の購入に差があるか
SaaS・定額サービス契約開始月、プラン継続率、解約率、利用機能何か月目に解約しやすいか、プラン変更後に定着が改善したか
アプリ・Webサービス初回利用週、獲得チャネル再訪率、主要機能の利用率初期体験や広告チャネルによって利用継続に差があるか
飲食店初回来店月、初回利用時間帯再来店率、来店回数、累積売上新規客がいつ再来店するか、初回来店後の案内が有効か
美容・スクール初回予約月、契約コース次回予約率、継続受講率離脱が起こる時期と、コース別の継続差

飲食店でコーホート分析を使う場合

飲食店では、初回来店月をコーホートにして、1か月後、2か月後の再来店率を追う方法が分かりやすいでしょう。新規客向けクーポンを配った月の来店数が多くても、翌月以降の再来店が少なければ、短期的な集客にとどまっている可能性があります。

一方、初回来店後にLINE登録や次回おすすめメニューの案内を始め、その後のコーホートでM1再来店率が上がれば、施策を続ける理由になります。曜日、ランチ・ディナー、予約経路などで分けると、どの顧客体験が再来店につながっているかを詳しく確認できます。

ただし、会員証や予約情報などで同じ顧客を識別できなければ、正確な再来店率は求められません。分析対象が会員や予約客に限られる場合は、全来店客の傾向と同じとは限らない点を明記します。

コーホート分析とRFM分析の違い

比較項目コーホート分析RFM分析
主な目的利用開始後の継続・離脱の変化を比較する現在の顧客状態を分類し、施策対象を決める
主な軸共通の開始条件と経過時間最終購入、購入回数、購入金額
分かりやすい問いどの時期に獲得した顧客が、何か月後まで残ったか今、優良・新規・離反リスクに当たる顧客は誰か
主な施策初期体験、継続支援、獲得施策の改善顧客状態に合わせた案内や優先順位付け

RFM分析で離反リスク顧客を抽出し、コーホート分析で「顧客が利用開始から何か月目に離れやすいか」を調べると、対象者とタイミングの両方を決められます。RFM分析の具体的な方法は、RFM分析とは?顧客の分け方とExcelでの分析方法で解説しています。

コーホート分析のメリット

  • 全体平均に隠れた変化を見つけられる:顧客獲得数と、獲得後の定着を分けて確認できる。
  • 離脱が起こる時期を特定しやすい:開始後の何週目・何か月目で継続率が下がるかを把握できる。
  • 施策前後を公平に比べやすい:同じ経過期間をそろえ、改善前後のコーホートを比較できる。
  • 長期的な顧客価値を評価しやすい:獲得直後の売上だけでなく、再購入や累積売上を追跡できる。

コーホート分析のデメリットと注意点

  • コーホートの定義で結果が変わる:初回購入月、登録月、キャンペーン参加月など、起点を変えると別の分析になる。
  • 新しいコーホートの長期結果はまだ分からない:未経過期間を0として比較しない。
  • 人数が少ないと数値が不安定になる:数人の行動で率が大きく変わるため、率と実人数を一緒に表示する。
  • 相関だけで施策効果を断定できない:季節、顧客属性、価格、獲得チャネルなど別の要因も確認する。
  • 顧客の識別とデータ整備が必要:端末や店舗ごとにIDが分かれると、継続顧客を別人として数える可能性がある。

コーホート分析についてよくある質問

コーホートとセグメントの違いは?

セグメントは、年齢、地域、購入金額などの条件で顧客を分けた集団の総称です。コーホートは、その中でも共通の出来事や開始時点を持ち、時間の経過に沿って追跡する集団です。

リテンション分析との違いは?

リテンション分析は、顧客やユーザーがどの程度継続しているかを調べる分析です。コーホート分析は、その継続率を開始時期や獲得条件ごとのグループに分け、時間軸で比較する代表的な方法です。

日・週・月のどの単位で分析すべき?

通常の利用間隔に合わせます。毎日使うアプリなら日または週、毎月更新するサービスなら月、来店間隔が長い店舗なら月や四半期が候補です。短すぎると変化がなく、長すぎると離脱のタイミングを見落とします。

継続率はどのように計算する?

基本的には、「その期間に継続条件を満たしたユニーク顧客数 ÷ コーホート開始時の顧客数」で求めます。継続条件を再購入、ログイン、契約継続のどれにするかを先に定義し、分析中は変えないことが大切です。

コーホート分析が向かないケースは?

顧客を継続して識別できない、一度しか購入しない商品である、追跡期間が短すぎる、各コーホートの人数が極端に少ない場合は、有効な比較が難しくなります。その場合は、単発の購買分析や顧客アンケートなど、目的に合う別の方法を検討します。

まとめ:開始時点をそろえると、顧客の「その後」が見える

コーホート分析は、同じ時期や条件で利用を始めた顧客をグループにし、継続率、再購入率、売上などを時間の経過に沿って比較する方法です。通常の月次集計では混ざってしまう「顧客獲得数」と「獲得後の定着」を分けて確認できます。

表を見るときは、横方向で時間変化、縦方向でコーホート間の差、斜め方向で同じ時期に起きた共通要因を確認します。 まずは初回購入月と再購入率など、目的が明確な一つの表から始め、離脱が大きい時期の施策を改善して、その後のコーホートで効果を確かめましょう。

小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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