1:5の法則とは?5:25・20:80の法則との違いと活用方法

1:5の法則とは、新規顧客を獲得するには、既存顧客を維持する場合の約5倍のコストがかかるというマーケティングの考え方です。

新規顧客を獲得するためには、広告や営業活動を通じて自社を知ってもらい、競合と比較したうえで選んでもらう必要があります。一方、既存顧客は商品やサービスをすでに理解しているため、再購入や契約継続につなげやすいことが特徴です。

ただし、すべての企業で新規顧客の獲得コストが、既存顧客の維持コストの正確に5倍になるわけではありません。実際の差は、業種、商品単価、購入頻度、広告媒体、契約期間などによって変わります。

1:5という数字は、新規顧客の獲得だけに予算を集中させず、既存顧客の維持にも取り組む必要があることを示した目安として理解しましょう。

目次

1:5の法則とは?

1:5の法則では、新規顧客の獲得にかかる費用を「5」とした場合、既存顧客の維持にかかる費用を「1」として表します。

新規顧客を獲得するためには、次のような費用が発生します。

  • 広告の出稿費用
  • ホームページやランディングページの制作費用
  • 営業担当者の人件費
  • キャンペーンや初回割引の費用
  • 問い合わせや商談への対応費用

既存顧客にも、メール配信、アフターフォロー、ポイント制度、カスタマーサポートなどの維持費用がかかります。ただし、新規顧客のように、認知から購入までの関係を最初から構築する必要はありません。

そのため、多くのビジネスでは、新規顧客を獲得するよりも、既存顧客に継続して利用してもらう方が、販売にかかる追加費用を抑えやすくなります。

なぜ新規顧客の獲得にはコストがかかるのか?

新規顧客は、自社の商品やサービスを知らない状態から検討を始めます。

企業は広告、SEO、SNS、営業活動などを通じて、自社の存在を知ってもらわなければなりません。その後も、商品の特徴や価格を説明し、競合との違いを伝え、購入に対する不安を解消する必要があります。

広告を見た人の全員が顧客になるわけではありません。多くの人に広告を届けても、実際に購入するのはその一部です。購入しなかった人にかかった広告費も含めて考えるため、新規顧客1人あたりの獲得コストは高くなります。

一方、既存顧客は、商品を購入した経験やサービスを利用した経験があります。一定の満足や信頼を得られていれば、再購入までの説明や比較にかかる負担を減らすことができます。

1:5の法則はすべての企業に当てはまるのか?

1:5の法則は、すべての企業に同じ比率で当てはまるものではありません。

新規顧客の獲得コストは、ブランドの認知度、広告媒体、競合の数、商品単価、販売方法などによって変わります。既存顧客の維持コストも、サポート体制や契約内容によって異なります。

たとえば、紹介による新規顧客が多い企業では、広告による獲得コストを抑えられる場合があります。反対に、既存顧客への個別対応に多くの人員が必要な事業では、維持コストが高くなることがあります。

したがって、「新規顧客は必ず5倍かかる」と判断するのではなく、自社の顧客獲得コストと維持コストを計測することが重要です。ベイン・アンド・カンパニーも、顧客獲得コストはブランド、商品、販売経路、顧客層などによって変わると説明しています。

1:5の法則をマーケティングに活用する目的

新規顧客と既存顧客への予算配分を見直す

新規顧客を増やさなければ、事業を成長させることはできません。ただし、新規獲得だけに予算を集中すると、購入後の顧客を維持するための施策が不足します。

新規顧客向けの広告費だけでなく、メール配信、接客改善、アフターフォロー、会員制度などにも予算を配分します。

新規顧客の獲得と既存顧客の維持を分けて管理することで、どちらに課題があるのか判断しやすくなります。

顧客生涯価値を高める

顧客生涯価値とは、1人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益や売上の総額です。LTVと呼ばれることもあります。

1回だけ購入して離れる顧客よりも、継続的に購入する顧客の方が、企業にもたらす価値は大きくなります。

ただし、単純に購入回数を増やせばよいわけではありません。割引や特典に費用をかけすぎると、売上が増えても利益が残らない場合があります。

LTVを確認するときは、売上だけでなく、原価、広告費、割引、サポート費用なども含めて判断する必要があります。

顧客が離れる原因を改善する

既存顧客の維持には、ポイント制度やクーポンだけでなく、顧客が離れる原因の改善が必要です。

商品に問題がある場合は、メール配信を増やしても離反を防げません。予約が取りにくい、問い合わせへの返信が遅い、説明がわかりにくいなどの問題も、顧客が離れる原因になります。

アンケート、口コミ、解約理由、問い合わせ内容などを確認し、顧客が不満を感じている部分から改善します。

1:5の法則と関連するマーケティングの法則

1:5の法則と関連する考え方には、5:25の法則、20:80の法則、ダブルジョパディの法則があります。

それぞれが示す内容は異なります。

法則示していること主な活用目的
1:5の法則新規顧客の獲得には、既存顧客の維持より大きなコストがかかる集客予算の配分
5:25の法則顧客維持率の改善が利益に大きく影響する離反防止と利益改善
20:80の法則一部の顧客や商品が、成果の多くを生み出す傾向がある重点顧客や重点商品の特定
ダブルジョパディの法則小規模なブランドは顧客数が少なく、顧客の購買頻度もやや低い傾向がある新規獲得と顧客維持の配分

5:25の法則とは?

5:25の法則とは、顧客維持率を5%高めることで、利益が25〜95%増加する可能性があるという考え方です。

既存顧客は、商品やサービスについてすでに理解しています。そのため、新規顧客よりも再購入や追加購入につなげやすく、販売にかかる費用を抑えられる場合があります。

継続期間が長くなることで、購入回数の増加、対応コストの低下、紹介の発生などにつながる可能性もあります。

ただし、利益の増加率は、業種や顧客構成によって異なります。顧客維持率を5%高めれば、すべての企業の利益が必ず25〜95%増えるという意味ではありません。

1:5の法則が新規獲得と顧客維持のコスト差を示すのに対して、5:25の法則は、顧客維持が利益に与える影響を示しています。

20:80の法則(パレートの法則)とは?

20:80の法則とは、全体の約20%にあたる要因が、結果の約80%を生み出す傾向があるという考え方です。パレートの法則とも呼ばれます。

マーケティングでは、次のような形で使われます。

  • 上位顧客が売上の多くを生み出している
  • 一部の商品が売上や利益の多くを生み出している
  • 一部の記事がWebサイトへの流入の多くを生み出している
  • 一部の広告が問い合わせの多くを生み出している

ただし、20%と80%は固定された数値ではありません。実際の割合が10:90や30:70になることもあります。

パレートの法則を使うときは、売上や利益が必ず20:80に分かれると決めつけず、自社の顧客別売上、商品別利益、広告別成果などを調べます。

成果を生み出している顧客や商品を特定したうえで、在庫、広告費、人員などの配分を見直すために活用します。

ダブルジョパディの法則とは?

ダブルジョパディの法則とは、市場シェアの小さいブランドは、大きなブランドより顧客数が少ないだけでなく、顧客の購買頻度や継続率もやや低くなる傾向があるという法則です。

既存顧客を維持することは、利益を安定させるために重要です。ただし、既存顧客への施策だけで、ブランドを大きく成長させられるとは限りません。

認知度が低い企業や販売場所が少ない企業は、既存顧客の離反を防ぐだけでなく、新しい顧客との接点も増やす必要があります。

つまり、1:5の法則は「新規顧客を獲得する必要はない」という意味ではありません。

新規顧客の獲得と既存顧客の維持は、どちらか一方を選ぶものではありません。既存顧客が離れる原因を改善しながら、新規顧客にも継続してアプローチすることが重要です。

1:5の法則を活用する具体例

飲食店の場合

飲食店では、Googleマップ、グルメサイト、SNS、Web広告などを使って新規顧客を集めます。

来店後は、料理や接客の品質を高め、再来店しやすい店舗をつくる必要があります。LINE公式アカウント、会員制度、次回予約、季節メニューの案内なども再来店を促す方法です。

ただし、クーポンを大量に配布すると、割引がないと来店しない顧客が増える場合があります。再来店率だけでなく、客単価や利益も確認しましょう。

ECサイトの場合

ECサイトでは、検索広告、SNS広告、アフィリエイト、SEOなどを使って新規顧客を獲得します。

一度購入した顧客には、購入した商品に応じた情報提供、消耗時期に合わせた案内、関連商品の提案などができます。

すべての顧客に同じメールを配信するのではなく、購入商品、購入日、購入回数などによって内容を分けることで、不要な案内を減らせます。

BtoBビジネスの場合

BtoBビジネスでは、広告、展示会、営業活動、問い合わせ獲得用コンテンツなどに費用がかかります。商談期間が長い場合は、契約までの人件費も大きくなります。

契約後は、定期的に利用状況を確認し、問題が発生する前に対応します。顧客の成果や活用状況を確認することで、契約終了の原因を把握しやすくなります。

追加提案を行う場合も、顧客が必要としている内容を確認してから提案します。不要な提案を繰り返すと、関係を悪化させることがあります。

1:5の法則を活用する手順

1.新規顧客の獲得コストを計算する

一定期間の広告費、制作費、営業人件費などを合計し、その期間に獲得した新規顧客数で割ります。

新規顧客獲得コストは、次の式で計算できます。

新規顧客獲得コスト=新規顧客獲得に使った費用÷獲得した新規顧客数

広告媒体ごとに計算すると、どの方法で効率よく顧客を獲得できているか確認できます。

2.既存顧客の継続率と離反率を確認する

既存顧客のうち、一定期間後も取引を継続している顧客の割合を確認します。

定期契約や会員制サービスでは、継続率や解約率を計測できます。小売店や飲食店では、会員情報やPOSデータを使って再購入率や再来店率を確認します。

3.顧客ごとの売上と利益を分析する

売上だけでなく、原価、割引、サポート費用なども確認します。

購入額が大きくても、対応コストが高い顧客は、利益への貢献が小さい場合があります。反対に、購入額がそれほど大きくなくても、継続期間が長く、対応コストが低い顧客は重要です。

4.離反の原因に合わせて改善する

価格、品質、接客、納期、予約、問い合わせ対応など、顧客が離れる原因を特定します。

原因が商品やサービスにある場合は、ポイント制度を導入するだけでは改善できません。顧客の不満を確認し、問題のある部分を直接修正します。

5.新規獲得と顧客維持の両方を継続する

既存顧客の維持だけに集中すると、顧客数を大きく増やすことが難しくなります。

反対に、新規顧客の獲得だけに集中すると、獲得した顧客が短期間で離れ、広告費を回収できない可能性があります。

新規獲得コスト、継続率、購入回数、LTV、利益などを確認し、両方の施策を調整します。

1:5の法則を活用するときの注意点

1:5の法則は、既存顧客だけを優遇するための法則ではありません。

新規顧客に極端な初回割引を提供すると、既存顧客が不公平だと感じる場合があります。反対に、既存顧客だけに特典を集中すると、新規顧客が利用しにくくなることがあります。

また、すべての既存顧客を同じ方法で維持する必要もありません。購入履歴や利用状況を確認し、必要な顧客に必要な対応を行います。

重要なのは、1:5という数字をそのまま経営判断に使うことではありません。自社のデータを確認し、新規顧客の獲得と既存顧客の維持に、適切に予算を配分することです。

まとめ

1:5の法則とは、新規顧客を獲得するには、既存顧客を維持する場合の約5倍のコストがかかるというマーケティングの考え方です。

ただし、5倍という数字はすべての企業に当てはまる固定値ではありません。業種、商品、販売経路、広告媒体、顧客対応の方法によって、実際のコスト差は変わります。

1:5の法則を活用するときは、次の項目を確認します。

  • 新規顧客の獲得コスト
  • 既存顧客の継続率と離反率
  • 顧客ごとの売上と利益
  • 顧客が離れる原因
  • 新規顧客と既存顧客への予算配分

5:25の法則や20:80の法則は、既存顧客や重点顧客の重要性を示しています。一方、ダブルジョパディの法則は、事業の成長には新規顧客の獲得も必要であることを示しています。

既存顧客の維持は重要です。ただし、新規顧客の獲得を止めてよいわけではありません。両方の成果を計測し、利益につながる配分へ調整していきましょう。

小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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