WordPressで通販サイトを作るのはあり?おすすめしない理由を解説

最初に結論

WordPressで通販サイトを構築することは、おすすめしません。

  • 「サーバーがあるから安く作れる」だけでは判断できません。
    顧客情報を守るための保守・監視・障害対応は、公開後も必要です。
  • WordPress本体に加え、通販・決済など複数の要素を管理します。
    プラグインの更新と動作確認を、継続して行う体制が求められます。
  • 当社は、自社で保守するサーバーに顧客情報を保管しない方針です。
    運営基盤とセキュリティ体制を確認できるShopify・BASE・STORES ネットショップなどを検討します。

特に、ECサービスの月額料金を節約するためにWordPressを検討している企業に向けて、その理由を解説します。

「会社のホームページでWordPressを使っている」「レンタルサーバーも契約している」。それなら、通販機能を追加すれば、ECサービスに月額料金を払わずに済むのではないか。そう考えることもあるでしょう。

しかし、通販機能を追加することは、お客様の個人情報を扱うシステムを新たに運営することでもあります。ホームページを更新する仕事に加えて、受注や顧客情報を守る仕事が発生します。

当社では、月額料金を抑えるためのWordPressによる通販サイト構築は、おすすめしていません。この記事では、保守の負担と個人情報の保管先を軸に、その理由と当社の選定方針を説明します。

サーバーがあるから、通販サイトも安く作れる?

WordPressに通販用のプラグインを追加すれば、既存のホームページに商品ページやカートを設けることは可能です。ただし、無料のプラグインを使い、サーバー代が大きく変わらなくても、通販サイト全体の運営費が無料になるわけではありません。

公開後には、ソフトウェアの更新、不正アクセスへの対策、バックアップ、障害時の復旧などが必要です。外注すれば委託費がかかり、社内で行えば担当者の時間と専門知識が必要になります。

ECサービスの月額料金をなくしても、安全に運営するための仕事は残ります。その仕事を誰が担い、いくらかけて継続するのかまで考える必要があります。

月額料金を払いたくないという理由で構築方法を選ぶと、公開後の保守に必要な予算まで削ってしまいかねません。当社が、この動機でのWordPress通販を勧めない理由です。

構築前に見えやすい費用と、公開後に必要な対応
判断しがちな点合わせて考えること
すでにサーバーを契約しているその上で動くWordPressや通販機能を、誰が保守するか
無料のプラグインで始められる更新・動作確認・脆弱性対応にかかる作業と費用
ECサービスの月額料金を省ける監視や障害復旧を含め、自社で手配する範囲と総費用
制作会社が構築してくれる公開後の契約に、セキュリティ対応や緊急対応が含まれるか

個人情報を保管すれば、守り続ける必要がある

通販サイトでは、お客様の氏名、配送先住所、電話番号、メールアドレス、購入履歴などを扱います。これらを自社で保守するサーバーに保存すれば、その保管環境を守り続ける必要があります。

個人情報保護委員会の令和6年度年次報告によると、個人情報取扱事業者等に関する漏えい等報告の処理件数は19,056件で、前年度の12,120件から増加しています。通販サイトへのサイバー攻撃だけを集計した数字ではありませんが、個人情報の取扱いが幅広い事業者にとって課題であることが分かります。[1]

IPAも、2023年公開のECサイト向けガイドラインの案内で、個人情報やカード情報の流出被害の大半を、中小企業の自社構築サイトが占めていると説明しています。[2]

一度対策を施しただけで、その後の安全が保証されるわけではありません。新たな脆弱性への対応や、運用上のミスを防ぐ管理も必要です。万全を目指しても、漏えいの可能性をゼロにすることはできません。

だからこそ当社は、自社で保管する場所を増やさず、守らなければならない範囲をできるだけ小さくする方針を取っています。

WordPressの通販サイトは保守する対象が多い

WordPressで通販サイトを構築する場合、WordPress本体だけで運営が完結するとは限りません。通販機能、決済連携、配送設定、テーマなど、複数の要素を組み合わせます。

代表的な通販プラグインであるWooCommerceの公式資料でも、WordPress本体、WooCommerce、導入したプラグインの更新や、安全性を考慮したテーマ・プラグインの選定を求めています。[3]

更新と、注文・決済の動作確認を両立する

セキュリティ上の修正が公開されたら、内容を確認して対応します。同時に、更新によって注文や決済に問題が起きていないかを確かめる必要もあります。WooCommerceの公式資料は、更新や新機能の安全性を検証するためのテスト環境も挙げています。[3]

「更新通知が来たらボタンを押す」という作業だけでは済みません。問題が起きた場合に原因を調べ、販売を再開できる状態へ戻すところまで、担当と手順を決める必要があります。

制作と保守では、契約する仕事が異なる

制作会社に依頼する場合も、「作ってもらったから、その後も守ってもらえる」とは限りません。保守契約に含まれる対応範囲、対応時間、追加費用を確認します。

IPAは、運用時の対策としてソフトウェアの最新化、定期的な脆弱性診断、改ざんの監視などを挙げています。通販サイトの安全を保つには、こうした継続的な作業を担える技術と予算が必要です。[2]

自社で顧客情報を保管する構成を避ける

当社では、レンタルサーバーを含め、自社で保守するオンライン環境には、顧客の個人情報を原則として保管しません。顧客情報や注文情報の保管先は、外部のECサービスに集約する構成を優先します。

サーバーそのものを所有していなくても、自社が契約したサーバー上でWordPressや通販機能を運用すれば、保守すべき範囲が生まれます。サーバー会社がどこまで対応するかは契約によって異なり、通販システムまで一括して守ってくれるとは限りません。

外部のECサービスに集約する目的は、個人情報をインターネット上からなくすことではありません。サーバーや通販システムの保守を専門の事業者に任せ、自社で保守する範囲を減らすことです。

商品紹介・記事自社ホームページから購入先へ案内
注文・決済・顧客情報外部のECサービスで受け付け・保管

WordPressを商品紹介や記事の発信に使う場合も、購入手続きは外部サービスで行う方法があります。その際は、連携機能や通知メールによって、顧客情報が自社サーバー側にも保存されていないかを確認します。

外部のECサービスは運営基盤と対策で選ぶ

外部のECサービスなら、どこでもよいわけではありません。当社は、セキュリティ対策へ継続して投資できる運営基盤を重視します。

資本が小さく、保守体制や継続的な投資の裏づけも確認できないサービスは、採用しない方針です。安い料金や目新しい機能だけで、お客様の情報の保管先を決めるべきではないと考えています。

ただし、資本金がセキュリティ予算を直接示すわけではありません。会社の規模に加え、公開されている対策や監査、事故対応の体制を確認します。規模が大きいことだけで安全を保証できるわけでもありません。

  • 運営の継続性:運営実績、財務情報、継続してサービスを提供できる事業基盤。
  • 対策の説明と外部評価:セキュリティ方針、第三者認証・監査と、その対象範囲。
  • 日々の管理機能:多要素認証、担当者ごとの権限設定、操作履歴の確認。
  • 事故や障害への対応:監視、連絡窓口、バックアップ、復旧の体制。
  • 自社との役割分担:契約上の責任範囲、連携アプリや追加機能の管理範囲。

月額料金だけを比べるのではなく、どの保守や対策を任せられるのかまで確認して選びます。

では何を導入する?候補となる3つのECサービス

WordPressで通販機能を自社運用する代わりに、Shopify、BASE、STORES ネットショップを候補として紹介します。いずれも、自社でレンタルサーバーに通販システムを設置せずに、ネットショップを運営できるサービスです。

必要な機能を拡張していきたいのか、まずは費用を抑えて販売を始めたいのか、実店舗と一緒に管理したいのか。自社の販売方法と担当者の運用に合わせて選びましょう。

機能の拡張・海外販売も視野に入れるなら

Shopify(ショッピファイ)

Shopifyは、テーマによるショップ制作に加え、アプリを使った機能追加や海外向けの販売に対応するECサービスです。販売方法や運用を段階的に広げたい企業の候補になります。

サーバーやEC基盤の保守をサービス側に任せながら、必要な販売機能を追加していく構成を取れます。機能や料金、セキュリティの概要は、以下の解説記事で紹介しています。

検討時のポイント:標準機能で足りる部分とアプリが必要な部分を整理し、基本プラン、アプリ、決済、制作・運用支援の費用を合わせて見積もります。拡張する際は、連携先に渡す顧客情報と管理権限も確認します。

月額の固定費を抑えて始めたいなら

BASE(ベイス)

BASEは、ショップのデザイン、決済、解析など、ネットショップ運営に必要な機能を備えたサービスです。専門的なWeb制作の知識がなくても始めやすく、シンプルな操作で運用できることを特徴としています。

スタンダードプランは初期費用・月額費用0円で利用できます。「月額料金を抑えたい」という場合も、自社サーバーに通販システムを作る前に検討したい選択肢です。販売時には決済手数料やサービス利用料がかかります。

検討時のポイント:想定する売上と注文件数から販売時の費用を計算し、有料プランや追加機能も含めて比較します。固定費を抑えて始めたい企業や、小規模な運営体制で販売したい企業の候補です。

ネット販売と実店舗の運営を考えるなら

STORES ネットショップ(ストアーズ)

STORES ネットショップは、デザインを選んでショップを開設でき、予約販売や定期便などにも対応するサービスです。STORESのレジとネットショップの在庫連携も案内されているため、実店舗で商品を販売している企業にも候補になります。利用する機能の条件は導入時に確認します。

月額料金0円のフリープランがあり、販売時には決済手数料がかかります。SSLと3Dセキュア2.0にも対応しています。なお、通信の暗号化やカード利用時の本人認証は対策の一部であり、サービス全体の安全性は運営体制も含めて確認します。

検討時のポイント:必要な販売機能が使えるプラン、決済手数料、実店舗との連携範囲を比較します。ネットショップ単独の費用だけでなく、店舗と合わせた業務全体の管理のしやすさで判断しましょう。

自社の販売方針から考える候補
サービス検討する場面比較する費用・条件
Shopifyアプリによる拡張や海外販売も視野に入れる基本プラン・アプリ・決済・制作や運用支援
BASE月額の固定費を抑え、シンプルに販売を始める販売時の手数料・有料プラン・追加機能
STORES ネットショップネット販売と実店舗の運営を合わせて考えるプラン・決済手数料・店舗との連携条件

月額0円で始めることと、自社で通販システムを保守することは別です。BASEやSTORES ネットショップの無料プランも含め、外部サービスを使いながら固定費を抑える方法があります。販売時の手数料を含めた総費用と、任せられる保守範囲を確認しましょう。

サービスの特徴・プラン情報の確認日:2026年10月16日。上記の使い分けは機能に基づく当社の提案です。契約前には最新の料金・利用条件とセキュリティ情報を確認してください。

外部サービスを利用しても必要な自社の管理

外部のECサービスを利用しても、自社の管理が不要になるわけではありません。サービス側に基盤の保守を任せても、管理画面のアカウントや、出力した顧客情報は自社で管理する必要があります。

管理画面には多要素認証を設定し、担当者の役割に応じて権限を付与します。退職や異動があれば不要な権限を削除し、外部アプリを連携する際は、取得する情報と利用目的を確認します。

顧客情報をCSVなどで出力し、共有フォルダーやメールへ残す運用にも注意が必要です。保管先を集約していても、日常業務で複製を増やせば、管理する場所は再び増えてしまいます。

外部のECサービスに保管先を集約し、自社では必要な情報だけを扱う。そのうえで、アカウントと日々の業務を管理することが、当社の基本方針です。

月額料金より、個人情報を守る仕組みを優先する

「すでにサーバーがある」「月額料金を払いたくない」。その理由でWordPressによる通販サイト構築を検討しているなら、当社はおすすめしません。

通販サイトでは、公開後も保守とセキュリティ対策に費用がかかります。その費用を十分に確保しないまま顧客情報を保管することは、事業にもお客様にもリスクを生みます。

当社は、自社で保守するサーバーに顧客情報を保管する構成を避け、運営基盤とセキュリティ体制を確認できる外部のECサービスを選びます。

導入候補はShopify、BASE、STORES ネットショップです。月額の固定費を抑えたい場合も、外部サービスの無料プランを含めて比較し、自社で通販システムを保守しない方法を検討しましょう。

通販サイトの運営費は、お客様から預かる情報を守るための費用でもあります。初期費用や月額料金の安さだけでなく、継続して守れる仕組みを基準に判断しましょう。

参考資料

漏えい等の統計は令和6年度の報告、IPAの被害傾向は2023年公開資料に基づきます。運営方針・推奨は当社の見解です。

  1. 個人情報保護委員会:令和6年度 年次報告(漏えい等報告の処理件数)
  2. IPA:ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン(被害傾向・構築時と運用時の対策)
  3. WooCommerce:セキュリティ対策の公式資料(更新・プラグイン選定・テスト環境)
小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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