「ドリンク一杯無料」で口コミを集めるのは違法?ステマ規制とMEOの注意点

結論

「ドリンク一杯無料」と引き換えに口コミを集める施策は、Googleマップでは明確に禁止されています。

景品表示法上は、特典を付けただけで一律にステマ告示違反になるわけではありません。しかし、店内でスタッフが投稿を確認してから特典を渡す、高評価を期待させる案内をする、星の数や文章に事実上の圧力をかけるといった運用では、明示的に「星5を付けてください」と言わなくても違反となる可能性があります。

さらに、無料で提供するドリンクの価額によっては、ステマ規制とは別の「総付景品規制」に違反する可能性もあります。

ドリンク一杯無料が問題になる3つの理由

POINT 1ステマ告示違反店舗が口コミ内容の決定に関与し、その事実が利用者に分からない場合は景品表示法違反となります。
POINT 2景品規制違反無料ドリンクが総付景品に当たり、取引価額に応じた上限を超える可能性があります。
POINT 3Googleポリシー違反無料商品や割引と引き換えにGoogleの口コミを集める行為は禁止されています。

この3つは別々の問題です。「Googleから削除されていないから合法」「飲食店で処分事例がないから問題ない」と判断することはできません。

報酬が発生した口コミにはPR表示が必要?

ステルスマーケティングは、景品表示法第5条第3号に基づく告示で規制されています。違反となる中心的な条件は、次の2つです。

  • 店舗が口コミ内容の決定に関与した「事業者の表示」であること
  • 一般消費者が、店舗の表示であると判別しにくいこと

報酬、無料提供、割引などは、店舗が表示内容の決定に関与したかを判断する重要な要素です。ただし、消費者庁は「口コミ投稿だけ」を条件として小さな割引を一律に行い、投稿内容を指定していない場合は、通常、事業者の表示には当たらないと説明しています。

報酬が発生したら、自動的にステマになるわけではありません。

一方、対価の内容、提供目的、店舗と投稿者のやり取りなどから、投稿者が自由に内容を決めたとはいえない場合は「事業者の表示」になります。その場合は、特典付きの広告であることを明瞭に示さなければステマ告示違反となります。

つまり「星5とは言っていない」「文章はお客様が自分で書いた」という形式だけで、適法性が決まるわけではありません。実際の案内方法や店内でのやり取りを含めて判断されます。

明示しなくても「高評価の依頼」と判断される可能性がある

飲食店の口コミキャンペーンでは、客が店内にいる間に投稿し、スタッフが投稿画面を確認してから無料ドリンクを提供するケースが少なくありません。

この状況では、客が「低評価を書いたら気まずい」「悪い内容では特典を受け取れないかもしれない」と感じる可能性があります。店舗が星の数を直接指定していなくても、客観的な状況から投稿内容に影響を与えていたと判断される余地があります。

実質的な内容関与と判断されやすい運用

  • スタッフが星の数や投稿文を確認した上でドリンクを提供する
  • 「良い口コミをお願いします」と伝える
  • 星5の画面や好意的な記入例を卓上POPに載せる
  • AIで作成した好意的な口コミ文を選ばせる
  • 不満のある客には口コミ投稿を案内しない
  • 高評価の投稿者だけに特典を提供する
  • 飲食代に比べて、無料提供する特典の価値が大きい

「星5と言っていない」は免責にはなりません。

消費者庁は、明示的な指示がない場合でも、具体的なやり取り、対価の内容、対価の提供理由、店舗と投稿者の関係性などを総合的に考慮するとしています。

もっとも、店内で投稿したという一点だけで、直ちに違法と断定することもできません。問題になるのは、店内での案内や確認方法を含め、投稿者が本当に自由な内容を選べたといえるかです。

Googleのポリシー違反だけでは終わらない

Googleは、金銭、割引、無料の商品・サービスなどと引き換えに口コミを集める行為を禁止しています。したがって「ドリンク一杯無料でGoogle口コミを投稿してもらう」施策は、投稿内容を指定していなくてもポリシー違反です。

ただし、通報されたからといって、直ちに口コミ削除やビジネスプロフィールの制限が行われるとは限りません。Google側が違反を確認できるだけの情報を取得できなければ、表面上は何も起こらない場合もあります。

処分されていないことと、適法であることは別です。

店内POP、キャンペーン案内、スタッフとのやり取り、投稿と特典提供の記録などが確認されれば、単なる口コミの内容だけでは分からなかった実態が明らかになることがあります。

また、Google口コミでは、店舗が個々の投稿に「この口コミはドリンク無料と引き換えに投稿されました」と表示させる公式機能はありません。仮に投稿者が口コミ本文で特典を明示しても、Googleのインセンティブ付き口コミ禁止は解消されません。

そのため、この記事では「Googleポリシー違反だから危険」という点だけを根拠にしていません。店内での実質的な口コミ誘導、ステマ告示、景品規制を含めて判断する必要があります。

ドリンクの金額によっては「総付景品規制」にも違反

口コミを投稿した人全員に無料ドリンクを提供する場合、そのドリンクは景品表示法上の「総付景品」に当たる可能性があります。

消費者庁は、特定の商品・サービスとだけ交換できる「ドリンク一杯無料券」について、総付景品の規制対象になると説明しています。

取引価額提供できる総付景品の上限
1,000円未満200円まで飲食代800円の場合、原則として200円まで
1,000円以上取引価額の20%まで飲食代2,000円の場合、原則として400円まで

例えば、2,000円の飲食に対して通常価格600円のドリンクを無料にした場合、総付景品の上限400円を超える可能性があります。

実際の景品価額や取引価額の算定は、提供方法や通常の販売価格などによって変わりますが、「一杯だけだから大丈夫」「原価が安いから問題ない」とは限りません。

医療法人では、割引付きGoogle口コミが公表されている

2024年6月、消費者庁は医療法人社団祐真会に対し、ステマ告示違反として措置命令を行いました。

同法人は、Googleマップで「星5」または「星4」を投稿することを条件に、インフルエンザワクチンの接種費用を割り引いていました。消費者庁は、法人が口コミの表示内容の決定に関与し、その事実が一般消費者に分からない状態だったとして、景品表示法第5条第3号違反を認定しています。

これは、特典の金額が小さければ問題にならないわけではないことを示しています。

現在、飲食店について同様の措置命令が広く公表されていないとしても、それだけで飲食店の施策が適法とはいえません。飲食店が公表に至っていない理由について、違反件数が多すぎるから、金額が小さいからなどと推測することはできますが、行政機関が明らかにしていない以上、原因は断定できません。

ステマ告示に違反するとどうなるの?

消費者庁や都道府県の調査により違反が認められると、店舗を運営する事業者に対して措置命令が行われることがあります。

STEP 1調査・事情聴取関係資料の収集、報告要求、事業者への事情聴取などが行われます。
STEP 2措置命令表示の中止、誤認の排除、再発防止、社内周知などを命じられます。
STEP 3店舗・法人名の公表違反内容と事業者名が公表され、検索結果やSNSにも広がる可能性があります。

ステマ単独では課徴金の対象外

景品表示法第5条第3号のステマ告示違反だけであれば、課徴金納付命令の対象ではありません。ただし、同じ表示に優良誤認または有利誤認が含まれる場合は、課徴金の対象となることがあります。

また、措置命令に従わない場合は刑事罰の対象となり得ます。「最初は公表だけで、改善しなければ課徴金」という仕組みではありません。

MEO業者に提案されても、責任は店舗側にある

飲食店で危険な口コミ施策が広がる背景には、Googleのポリシーや景品表示法を十分に確認せず、口コミ件数だけを増やそうとするMEO支援の存在があります。

しかし、MEO業者から「他店もやっている」「星5と指定しなければ問題ない」と説明されたとしても、それだけで店舗が免責されるわけではありません。

ステマ告示の規制対象は、原則として自己の商品・サービスについて表示内容の決定に関与した事業者です。飲食店の場合は、口コミ施策を実施した店舗または運営会社が責任を問われます。

飲食店が口コミを集める際に避けるべきケース

口コミ施策景品表示法上の評価Google上の評価主な問題
投稿でドリンク一杯無料個別判断禁止店内運用によってステマとなる可能性。景品の金額上限にも注意。
星5投稿でドリンク一杯無料違反リスク大禁止店舗が星の数を決めており、事業者の表示と判断されます。
「良い口コミ」で会計を割引違反リスク大禁止好意的な内容と経済的利益を直接結び付けています。
スタッフの前で投稿し、内容を確認リスクあり禁止低評価を書きにくい圧力が生まれ、実質的な内容関与となる可能性があります。
AIで高評価文を作って投稿させる違反リスク大禁止店舗側が口コミ内容を作成・誘導しています。
満足した客だけGoogleへ誘導個別判断禁止肯定的な口コミだけを選択的に集めるレビューゲーティングです。
特典なしで全ての客に率直な口コミを依頼原則問題なし実施可能星や内容を指定せず、投稿しない客にも不利益を与えないことが重要です。

※法的評価は、案内文、対価の価値、投稿確認の方法、店舗と投稿者のやり取りなど、個別の事情によって異なります。

口コミは「報酬」ではなく、投稿しやすい導線で集める

飲食店が安全に口コミを増やすために、ドリンクや割引を付ける必要はありません。

  • 全ての来店客に同じ案内をする
  • 特典を付けずに率直な感想を依頼する
  • Googleの口コミ投稿画面へ移動できるQRコードを設置する
  • 星の数や記載内容を指定しない
  • スタッフが投稿内容を確認しない
  • 低評価を含む口コミにも、事実確認をした上で丁寧に返信する
  • AIは返信案の補助に使い、客の口コミ本文を作らせない

口コミ対策の目的は、評価を操作することではありません。

料理、接客、待ち時間、予約導線などを改善し、その結果として生まれた利用者の声を投稿しやすくすることです。

MEO対策で違和感を感じたらご相談ください

MEO対策では、特典と引き換えにGoogleの口コミを集める施策や、星の数・好意的な文言の指定、AIで作成した口コミ文の投稿誘導などが広まっています。これらはGoogleのポリシーに反し、実際の運用によっては景品表示法にも違反する可能性があります。業者から提案された方法でも、責任を問われるのは店舗側です。少しでも違和感があれば、実施する前に集客のカチプロへご相談ください。

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参考資料

本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別案件に対する法律上の助言ではありません。具体的な法的判断が必要な場合は、弁護士または所管行政機関にご相談ください。

小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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