シナリオグラフとは?作り方・具体例・テンプレートを図解で解説

シナリオグラフは、人物・時間・場所・行動などの候補を組み合わせ、利用場面を描くことで新しいアイデアを考える発想法です。
「誰が、いつ、どこで、何をするか」を具体化すると、その人が求めることや、サービスを提供する機会が見えてきます。意味と目的、具体例、作り方を順に紹介します。
シナリオグラフとは?意味と目的
シナリオグラフでは、誰が・いつ・どこで・何をするかという要素の候補を並べ、選んだ項目を線でつないで一つの場面を作ります。さらに、そこでの気持ちや実現したいことを考え、サービスの案へ展開します。
ここでの「シナリオ」は、ある人物が特定の状況で行動する短い場面を指します。要素の組み合わせを変えることで、別の利用場面を考えられます。
人物や場面の組み合わせを変え、企画の候補を増やします。
誰がどんな状況で使うのかを、チームで共有します。
その場面で実現したいことを、サービス案へつなげます。
サービス企画やアイデア出しの初期段階で活用できます。公的な実践ガイドでも、利用者の状況を組み合わせて発想する手法として紹介されています。
具体例:飲食店のサービスを考える
ここからは、説明用に作成した架空の例です。テーマを「利用場面に合う飲食店のサービスを考える」とし、各要素に3つずつ候補を出します。
シナリオA:出勤前に朝食を買う会社員
「通勤する会社員が、出勤前に、駅前の店で、朝食を買う」という場面を作ります。ここで「時間どおりに受け取りたい」という希望を仮定すると、事前注文や受け取り時間を指定するサービスが案になります。
会社員が出勤前に駅前で朝食を買う。
短い時間で受け取り、予定どおりに出発したい。
事前注文と、受け取り時間の指定。
シナリオB:公園の近くで飲み物を買う親子
「子ども連れの親が、休日の午後に、公園の近くで、飲み物を買う」という場面なら、親子で休憩したいという希望を仮定できます。持ち運びやすい飲み物や、短時間でも利用しやすい休憩スペースなどが案になります。
場面を変えると、必要なサービスも変わります。案ができたら、実際の利用者への聞き取りや観察を通じて、求めることを確かめましょう。
シナリオグラフの作り方・書き方
紙、付箋、ホワイトボード、表計算ソフトなどで作れます。次は、初めて使う人向けに整理した進め方です。
テーマを一つ決める
「店舗の新サービス」「英語学習の利用場面」など、考えたい範囲を定めます。対象が決まっている場合は、その条件も書いておきます。
人物・時間・場所・行動の候補を出す
4項目ごとに候補を並べます。まず各3つ程度から始めると、組み合わせを試しやすくなります。利用者への聞き取りや問い合わせの内容も材料にできます。
各項目から一つずつ選び、線でつなぐ
選んだ候補を一文にして、場面を描きます。最初は身近な組み合わせから始め、次に時間や場所を入れ替えてみましょう。
気持ちや実現したいことを考える
「早く済ませたい」「家族と楽しみたい」など、場面に合う希望を仮定します。気持ちを独立した項目にして候補を並べる進め方もあります。
サービス案を出し、試す案を選ぶ
一つの場面から複数案を考えます。利用者にとっての価値、試しやすさ、運用の負担などを見て、次に確かめる案を選びましょう。
Gov-ToolBoxの実践ガイドでは、人物・時間・場所・行動に「気持ち」を加えた5つの軸で紹介されています。この記事は4項目で場面を作り、その後に気持ちを考える構成です。
コピーして使えるテンプレート
次の表をコピーし、各候補を書き換えて使えます。ExcelやGoogleスプレッドシートでは、表の下に選んだ組み合わせを記録しておくと、案を比較しやすくなります。
| 項目 | 候補1 | 候補2 | 候補3 |
|---|---|---|---|
| 誰が | 人物・利用者① | 人物・利用者② | 人物・利用者③ |
| いつ | 時間・タイミング① | 時間・タイミング② | 時間・タイミング③ |
| どこで | 場所・環境① | 場所・環境② | 場所・環境③ |
| 何をする | 行動① | 行動② | 行動③ |
作ったシナリオとアイデアを記録する
| 利用場面 | 求めることの仮説 | サービス案 | 次に確かめること |
|---|---|---|---|
| 誰が・いつ・どこで・何をする | 気持ち、困りごと、実現したいこと | 提供する機能や対応 | 聞き取り、観察、小さな試作 |
各4項目に3候補ずつ用意すると、組み合わせは3×3×3×3=81通りです。テーマに合う場面を選び、気になる組み合わせから考えていきましょう。
マーケティングでの活用例
商品やサービスの利用場面が具体的になると、伝える価値や情報を届けるタイミングを検討できます。以下は、シナリオグラフから発想する説明用の例です。
| 用途 | 想定する場面 | 企画する内容の例 |
|---|---|---|
| 商品・サービス企画 | 会社員が出勤前に駅前で朝食を買う | 受け取り時間を指定できる朝食セット |
| 広告・訴求 | 親子が公園で遊んだ後に休憩する | 親子で休憩できることを伝える広告 |
| コンテンツ制作 | 初めての来店者が自宅でメニューを調べる | 注文方法・価格・持ち帰りを紹介する記事 |
| 販売チャネル | 近所の住民が帰宅中に夕食を注文する | 帰宅時間に合わせた予約受け取り |
実務では、案ごとに「確かめたいこと」を添えましょう。朝食の事前注文なら、受け取り希望時間、注文に使う端末、許容できる価格などを聞くと、サービスの条件を具体化できます。
実際の活用例:横浜市の子育て支援サービス
横浜市の子育て応援サイト・アプリ「パマトコ」の企画では、シナリオグラフがアイデア出しの方法の一つとして使われました。
公開された事例では、子育て中の状況や気持ちを組み合わせ、相談サービス、公園やイベントの情報提供などの案へ展開しています。時間や場所を変えることで、安心や負担の軽減に加えて、遊びや楽しさの視点も取り入れています。
この事例は、利用者の生活場面を広く捉え、提供する価値を考える使い方を示しています。
出典:横浜市のサービス企画・設計に関する公開事例。上の飲食店の例は、本記事で作成した架空の記入例です。
アイデアを広げるためのコツ
人物を、行動が想像できる言葉で書く
「会社員」を「朝の移動時間が短い会社員」のように詳しくすると、場面が描きやすくなります。属性と一緒に、生活上の条件も考えてみましょう。
一つの要素を変えて比較する
人物と行動を同じにして、場所だけを店内から自宅へ変えると、必要な情報や受け取り方の違いを考えられます。比較したい条件を一つ選ぶと、変化を捉えやすくなります。
意外な組み合わせにも、背景を添える
一見意外な組み合わせも、「どんな事情ならこの場面が起きるか」と考えると発想の材料になります。たとえば深夜の学習なら、交代勤務の生活や海外との時差など、成立する条件を探れます。
気持ちの仮説を、利用者の声で確かめる
思いついた希望や困りごとに「仮説」と記しておき、利用者の声を集めて具体化しましょう。案を試した結果も記録すると、次の企画に生かせます。
マンダラート・カスタマージャーニーとの違い
手法ごとに、考えを広げる起点が異なります。次の表は、各手法の基本構造をもとに、実務での使い分けを整理したものです。
| 手法 | 考える起点 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| シナリオグラフ | 人物・時間・場所・行動の組み合わせ | 複数の利用場面からサービス案を考える |
| マンダラート | 中央のテーマから広がる関連項目 | 発想を広げ、要素を掘り下げる |
| カスタマージャーニーマップ | 一連の体験を時系列で整理する | 各場面の行動・感情・接点を捉え、課題を考える |
たとえば、マンダラートで企画のテーマを広げ、シナリオグラフで利用場面を考え、選んだ案の体験をジャーニーマップで詳しく整理する、という使い方ができます。これは本記事で提案する組み合わせ方です。
シナリオグラフについてよくある疑問
一人でも作れる?
一人でも取り組めます。チームで行う場合は、候補を出してから互いの視点を共有すると、場面の幅を広げられます。
項目は何個用意する?
まず人物・時間・場所・行動の4項目から始めると、場面を組み立てやすくなります。目的に応じて気持ちなどを追加できます。候補は各3つ程度を出発点に、必要な項目を増やしましょう。
ランダムに選んでもよい?
候補をランダムに選ぶ方法も発想に使えます。できた場面の背景を考え、その人が求めることや価値へつなげてみましょう。
作った後はどうする?
気になる案を選び、利用者への聞き取りや小さな試作で確かめます。結果を受けて、場面の条件やサービス案を更新します。
まず一つの場面を作ってみましょう。テーマを決め、人物・時間・場所・行動を一つずつ選びます。その人が実現したいことを考え、サービス案を一つ書くと、企画の検討を始められます。
- Gov-ToolBox:シナリオグラフ実践ガイド(定義、基本手順、5つの軸)
- Gov-ToolBox:横浜市「パマトコ」の企画・設計事例(実際の活用例)
- 特許庁:AI・知財活用に関する調査報告書(マンダラートの基本構造)
