立地が悪い飲食店の集客はどのようにすれば良いのか?

飲食店では、立地の悪さは致命的とされていますが、特徴と強みを理解することで対策が取れる場合もあります。

ほとんどの飲食店は、例外的な立地の悪い店舗からスタートすることが多いので、立地が悪いなりに地域の特徴を把握して、戦略立てて経営のスタイルを決める必要があります。立地が悪い店舗ほど、「そのお店に行きたい!」という強い来店動機が非常に重要です。

なお、飲食店でよく使われる集客方法は、「飲食店の集客方法15選!新規客とリピート客を増やすコツを解説」で解説をしています。立地の悪さで集客の施策は多少異なりますが、最重要ではありません。

目次

飲食店の「立地が悪いとは?」

いわゆる飲食店にとっての立地が悪いというのは、対策をしないと自然な来店が期待できない立地を指します。

具体的には以下のどれかに該当する立地は、集客に不利とされています。

  1. 人通りが少ない立地
  2. 交通の便が悪い立地
  3. 都市部が近い住宅街
  4. 平均給与が低い立地
  5. 空中店舗・地下店舗

①人通りが少ない立地

いわゆるメイン通りから外れるだけで集客の難易度が急激に上がります。視認性が低いため、何もしないと飲食店の存在が気付かれることがありません。

②交通の便が悪い立地

人通りが少ない立地でも、交通の便が良ければ足を運ぶことが可能です。しかし、人通りの少ない立地に交通の便が悪くなると、誰でも足を運べるわけではないので、集客の難易度が一気に跳ね上がります。

③都市部が近い住宅街(ベットタウン)

都市部近隣の住宅街は、平日は閑散としており、週末には需要が集中しがちです。つまり、集客が金土に集中しますが、(日)月火水木は集客の難易度が上がるような立地でもあります。この立地では小規模な店舗が向いていますが、雇用が必要な客席数の店舗では、集客に難儀しやすいです。

④平均給与が低い立地

給与水準が低い立地では、顧客単価が上げづらいデメリットを抱えます。FLコストが上がっている現在では、値上げをしなければなりませんが、集客がモロに影響するため、値上げがしづらい問題点が挙げられます。

⑤空中店舗・地下店舗

繁華街の中でも空中店舗と地下店舗のテナントは、対策をしないと集客が難しいとされています。

実際にあった相談例で話すと、一等地に分類される立地でも、通常はそのビルの飲食フロアを使わないフロアにテナントに入っている場合があります。商業用ビルは、広告規制もあるため、外部から見ても、そのビルの中に飲食店があるとわからない場合があります。

人通りが多くても、看板などを外に出すことができず、誰にも気づかれず、集客ができないパターンです。しかも、この立地は、地価が高いので、テナント料も高いことが特徴として挙げられます。

立地が悪い飲食店の集客対策の考え方

立地が悪い飲食店を集客すると考えた時に、以下の考えを原則とします。

  1. 人通りの少ない立地にある場合は、近隣のメインの通りから誘導する
  2. 観光地の近隣や景観の良い強みがあれば、その強みを活かす
  3. 近隣から集客することができない立地ではケータリングや催事出店を原則とする
  4. 住宅地は地域に密着した小規模経営を基本にする
  5. 平均給与が低い立地はおひとり様を前提にした飲食店にする
  6. 空中店舗・地下店舗の場合は、その近隣での視認性を高める

①人通りの少ない立地にある場合は、近隣のメインの通りから誘導する

人通りの少ない立地にある場合は、近隣のメインの通りに看板を設置して誘導します。また、近隣をターゲティングできるSNS広告やグルメサイトでの集客も効果的です。近隣で行動する人に情報を継続的にリーチさせることで、興味関心を惹き、1度行ってみるという行動を作れば、それ以降の集客に繋がります。

②観光地の近隣や景観の良い強みがあれば、その強みを活かす

観光地の近隣であれば、観光客向けにその土地の名産を活用・大人数の客席を用意・広い駐車場を用意ことで、バスツアーのプログラムに組み込むことが簡単になります。

また、山の上の立地の場合、その景観を生かしたカフェなどは、店舗自体が観光地化されるため、口コミの拡散も一般的な店舗よりもされやすくなります。

③近隣から集客することができない立地ではケータリングや催事出店を原則とする

どうしても集客が難しい立地はあります。飲食店の商圏内の人通りが少ない地域では、顧客に近づくのが原則です。そのため、人がいる場にケータリングや催事出店をしたり、宅配をすることで利便性を上げて、地域に密着する手段を取ります。宅配は、メニュー表を近隣にポスティングし、ホームページに宅配ができる旨とメニュー表を掲載することで対策をとることができます。

④住宅地は地域に密着した小規模経営を原則とする

特に都市部近隣の住宅街では、あまり大きくはせずに、小さな規模で地域に愛される飲食店にすることが重要です。常連は、毎日、毎週来るような関係性ができるお店であれば、雇用をせずとも十分ですし、集客の必要性が薄れます。

出前サービスも、立地の悪さを克服する有効な手段です。最近では、UberEatsやDemaecanなどのデリバリーサービスの普及により、出前の需要が急増しています。これらのサービスを活用することで、店舗の立地に関係なく、広範囲の顧客にアプローチすることが可能になります。また、独自の出前サービスを展開することで、顧客との直接的な関係を構築し、リピーターを増やすこともできます。

⑤平均給与が低い立地はおひとり様を前提にした飲食店にする

平均給与水準が低いビジネス街や住宅街では、顧客単価の高い店舗は流行らず、ランチタイムや営業が重要になります。おひとり様を前提にした店内のレイアウトにし、名物メニューを基軸にしたメニューを用意します。

最初からおひとり様をターゲットにすることで、家で料理をしない単身者に絞り込むことができますので、ランチもディナーもランチタイム型の集客に絞り込むことができ、集客にかかるコストも節約することができます。

⑥空中店舗・地下店舗の場合は、その近隣での視認性を高める

空中店舗・地下店舗の場合は、人通り自体は近くにあるので、集客すること自体は簡単です。近隣の人から視認され、かつ、興味を持たれれば良いわけです。これは、駅看板や野外広告に限らず、その地域の人に知られれば良いので、SNSなどでバズり、メディアに取り上げられることも有効です。来店時のヒントになるような目印になる画像を用意して、問題なく来店できるように工夫するのも有効です。

居抜き物件を選択する問題点

立地の悪い飲食店の多くは、コスト削減のために居抜き物件を選択することがあります。しかし、この選択には注意が必要です。

居抜き物件は確かに初期投資を抑えられるメリットがありますが、同時に前店舗の失敗の原因を引き継ぐリスクも高いのです。例えば、前店舗が立地の悪さを克服できずに閉店した場合、同じ場所で同じような業態で開業しても同じ結果に陥る可能性が高くなります。

また、居抜き物件は内装や設備が既に決まっているため、自店のコンセプトや個性を十分に表現できない場合があります。立地の悪さを克服するためには、店舗の独自性や魅力を最大限に引き出すことが重要です。そのため、居抜き物件を選択する際は、単にコストだけでなく、自店の戦略に合致するかどうかを慎重に検討する必要があります。

立地が悪くても集客できる飲食店の特徴とは?

立地が悪くても集客ができる飲食店の特徴は、口コミが直接来店動機になりやすい店舗です。具体的には、以下のような店舗を指します。

  1. 田舎の観光地にあるA級料理店
  2. 古民家の蕎麦屋のような雰囲気を味わう目的の飲食店
  3. 名物料理に特化した飲食店

立地の悪さを補える飲食店は、それ以上に、提供している料理やロケーションで勝負ができ、話題性を提供している店舗です。

①田舎の観光地にあるA級料理店

A級料理とは、その土地でしか味わうことのできない品質にこだわりのあるメニューのことで、一般大衆向けのB級料理と対比されます。A級料理は邑南町での話題です。この町は、島根県にある人口1万人弱の小さな町です。

この地域は、豊富な地元食材を活用して、一級品を提供する里山イタリア料理店Ajikuraをはじめとする飲食店が多いそうです。ここをお目当てに、大阪などの遠方からもドライブの次いでに訪れる人が多いです。

また、山形県にも数年前に話題になったイタリア料理店アルケッチャーノがあります。地産地消をうまく活用してメディアでブランディングに成功し、一時期は観光バスで駐車場がいっぱいになるくらいの繁盛ぶりでした。

これらの飲食店は、立地が悪いにも関わらず、普段食べることができない料理を食べることができる点で、集客ができる店と呼べます。

②古民家の蕎麦屋のような雰囲気を味わう目的の飲食店

蕎麦屋やうどん屋のような店舗でこだわりが強いお店には立地はあまり関係がなく、古民家のような雰囲気が重要です。

古民家を選択するメリットは、蕎麦を食べる雰囲気作りによる単価のアップ、広い客席の確保、駐車場の確保がしやすいなどがあります。また、美味しい蕎麦は車で食べに行くことも定着している地域も多く、多くの人がドライブコースに使っている通りに近い立地を狙うのが良いでしょう。

③名物料理に特化した飲食店

食べログの百名店に入るような店舗は、実はそこまで立地が良くない店舗も多いです。現在は、SNSなどもあり、フリークが新しいお店を探している傾向がありますので、多少立地が悪くても、期待以上の一杯が提供できれば、ここが起点になり、口コミで集客が増え出します。

興味を持たれるコンセプトは、わかりやすく、美味しそうだと思われるものが良いです。例えば、最近テレビで紹介されているお店に、「元和食料理人が出汁にこだわって作る一期一会の日替わりラーメン」「ここでしか食べることができない、ホッキ貝をふんだんに使ったカレー」などがありましたが、こういったことが直接集客力に添加されます。

立地が悪い飲食店におすすめの集客方法

①SNS広告

SNS広告は、画像や動画で訴求することができ、特定の国、都道府県、市町村、特定の住所の半径○キロ圏内にのみ広告を表示させることができます。

また、SNSの運用と組み合わせることで、興味を持った人のフォローを獲得しつつ、集客をすることができます。

通常の飲食店では、自店舗を基準として広告を表示するエリアを決定しますが、立地が悪い飲食店の場合は、来店可能性が高く、かつ、人口の多いエリアを指定して広告を出稿します。これによって、次回近隣を訪れた時に、顧客を呼び寄せることができます。

②看板

立地が悪い飲食店が不利な原因の一つは、人通りからの視認性の低さです。

かちプロジェクトの受注案件で過去にあった話題ですが、利用者数の多い駅に近接する商店街を管理する市の条例で、通行していれば自然に目につく高さに看板を設置することができなくなりました。その結果、その空中店舗の視認性が悪化し、集客が極端に落ち込む結果となりました。

この場合、視認性を確保するために、別の場所に看板を出さないと、一見すると「閉店した」と勝手に通行人が思い込んでしまいます。

③ローカル検索広告

ローカル検索広告とは、Googleマップなどで地図検索をした時に、上位にビジネスプロフィールを表示することができる広告のことです。

ローカル検索広告を使うことで、特定のエリアの特定のキーワードを検索した時に上位に表示することができるため、立地が悪くても住所を含めて視認してもらうことができます。

MEO対策は、検索者の現在地からの店舗の距離で順位が変動します。一般的な立地が悪い飲食店は、立地の良い飲食店に比べると、人通りからの距離がありますので、MEO対策では不利になることが多いです。

④ポスティング広告

ポスティング広告とは、指定した範囲にチラシを投函してもらう広告のことを言います。

SNS広告と同様、地域を指定することができるため、来店可能性が高く、かつ、人口の多いエリアを指定して広告を出稿します。

ただし、ポスティング広告は、都市部のように密集している地域ではコストを抑えることができる反面、地方のように戸建てが多く点在している地域ではコストが高くなります。

この場合は、ポスティング型のコミュニティペーパーで代用するなどが候補に挙がります。ただし、コミュニティペーパーにチラシを挟み込むことができないのであれば、裏表紙以外は視認されづらいですので、出稿を取りやめます。

⑤LINE公式アカウント

LINE公式アカウントを使うことで、リピーターにリアルタイムに情報を提供することができるようになります。

LINEは、日本国内のユーザー数は9,000万人を超えており、メールマガジンよりも情報を届けることができます。来店動機になる情報を届けることで、来店を促すことができます。

広告費で悩む飲食店は、リアルタイムで情報を届けるツールの用意および育成を怠る傾向があります。一度来店した人が積極的にLINE公式アカウントにお友だち登録する仕組みをつくれば、次第に集客が楽になります。

まとめ

立地が悪い飲食店であっても、適切な戦略と努力次第で成功を収めることは十分に可能です。本記事で紹介した方法、すなわちオリジナリティのあるメニューの開発、SNSを活用した効果的な情報発信、リピーター獲得への注力、そして催事出店や出前サービスの積極的な展開などを組み合わせることで、立地の悪さというハンデを克服し、繁盛店への道を切り開くことができるでしょう。

重要なのは、立地の悪さを単なる障害として捉えるのではなく、独自の魅力を生み出すきっかけとして活用することです。静かな環境や自然豊かな景観など、立地ならではの特徴を強みに変える発想が求められます。また、常に顧客のニーズに耳を傾け、時代の変化に柔軟に対応していく姿勢も不可欠です。

立地が悪くても成功している飲食店には、必ず「人の心が感じられるおもてなし」があります。最後に、どんなに優れた戦略を立てても、心のこもったサービスや特別な体験の提供がなければ、真の成功は望めません。立地の悪さを克服する努力と同時に、顧客に寄り添った丁寧な接客を心がけることで、必ず道は開けるはずです。皆さんの飲食店が、立地を超えた魅力あふれる場所となることを願っています。

最終更新日 2025年2月11日

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この記事を書いた人

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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