chocoZAPのマーケティング戦略|低価格・短時間・複合サービスで来店の入口を広げた仕組み

chocoZAPのマーケティング戦略|低価格・短時間・複合サービスで来店の入口を広げた仕組み

成長企業のマーケティング分析

chocoZAPのマーケティング戦略低価格・短時間・複合サービスで、来店の入口を広げた仕組み

分析の結論

chocoZAPの特徴は、運動初心者の入会ハードルを下げ、美容や生活関連サービスによって来店のきっかけを増やしたことです。店舗網の拡大後には、設備・清掃などの品質改善と収益基盤の整備を進め、再び成長投資へ移っています。本記事では、この戦略の変化と、他の店舗型企業が応用できる考え方を整理します。[1][2]

店舗数

2,056店舗

国内の直営・FCおよび海外
2026年8月14日時点

会員数

116.7万人

2026年8月14日時点

月額会費

3,278円

税込・月額定額プラン
2026年10月8日確認

店舗数・会員数:[6] / 料金:[12]。サービス・設備は店舗によって異なり、予約が必要なサービスがあります。

調査日:2026年10月8日対象:chocoZAP運営:RIZAP株式会社

企業の現状と成長実績

事業の規模拡大と、収益性の改善を分けて捉える

chocoZAPは、RIZAP株式会社が運営する店舗ブランドです。親会社のRIZAPグループは小売・美容関連などの事業も展開しているため、グループ全体の売上や利益と、chocoZAPの実績を区別する必要があります。

店舗ブランド

chocoZAP

本記事の分析対象。運動初心者向けジムに、美容・生活関連のセルフサービスを組み合わせています。

運営会社

RIZAP株式会社

chocoZAPのほか、パーソナルトレーニングジムRIZAPなども運営しています。

親会社

RIZAPグループ

複数事業を含む企業グループ。連結業績にはchocoZAP以外の事業も含まれます。

企業・事業の区分:[1][2]

直近3年間の業績推移

親会社の連結業績は、2025年3月期に営業黒字へ転換し、2026年3月期には営業利益が拡大しました。一方、2026年3月期の売上収益は前期を下回っています。

RIZAPグループの連結業績(単位:億円)
決算期売上収益営業利益・損失
2024年3月期1,626.04−6.48
2025年3月期1,710.9018.82
2026年3月期1,672.57110.86

表が画面に収まらない場合は、横にスクロールできます。

chocoZAP単独の業績ではありません。各期は前年4月~当年3月。2024年3月期は、非継続事業の分類を反映した2025年3月期決算短信の比較数値を使用しています。出典:[1][2]

2026年3月期の決算では、chocoZAPにおける出店・広告投資の最適化、店舗運営の内製化やDXによる収益性改善が説明されています。ただし、他のグループ事業も利益に寄与しており、連結増益のすべてをchocoZAPの集客施策に結び付けることはできません。[2]

店舗数の拡大と、成長の捉え方

chocoZAPの店舗数:基準日を明示した公表値
基準日店舗数集計・資料上の条件
2024年3月末1,383親会社の経営情報に掲載
2025年3月末1,791フィスコの企業調査レポートに掲載
2026年8月14日2,056国内の直営・FC、および海外を含む

出典:[4][5][6]。基準日・集計範囲が完全には揃わないため、同一条件の3期末比較や成長率の計算には使用していません。

2024年3月期は904店舗の出店が公表されており、店舗網の拡大が事業規模を広げる要素となりました。その後は品質改善と収益性を重視する期間を経ています。既存店成長、新規出店、M&Aそれぞれの売上寄与を厳密に分解できるchocoZAP単独データは、今回の調査では確認できていません。[4][1]

主要競合との規模比較

各ブランドの公表時点における店舗数・会員数
ブランド店舗数会員数基準日・対象範囲
chocoZAP2,056116.7万人2026年8月14日
店舗数は国内外を含む
エニタイムフィットネス1,242110万人超2026年1月末
国内
女性向けカーブス2,00190.8万人2025年11月末・国内
メンズ・カーブスは別枠

出典:[6][7][8]。時点・地域・顧客層が異なる参考比較です。この表から調査日現在の順位や、店舗当たりの生産性の優劣は判断できません。

分析のポイント
店舗数・会員数による規模拡大と、会費収益・運営コストによる採算改善を分けて見ると、chocoZAPの戦略の変化を捉えやすくなります。

マーケティング施策の変遷

入会の入口を広げた後、継続利用を支える店舗へ

chocoZAPは2022年7月に開始したブランドです。ここでは過去10年の枠に合わせて情報を埋めず、開始から2026年までの約4年間の主要施策を整理します。[6]

1. 入会障壁を下げる初心者・短時間利用を想定
2. 来店動機を増やす美容・生活サービスを拡充
3. 品質と採算を整える修繕・巡回・運営改善
4. 拡大を再開する出店・広告・FC展開

上図は、公開された施策の経過を整理した本記事の分析です。企業の公式な段階区分をそのまま示したものではありません。

  1. 2022年7月~|ブランド開始

    運動初心者が入りやすいサービスを設計

    短時間で利用できる運動初心者向けジムとして展開しました。マーケティングの観点では、ジムを本格的に使う前提を緩め、日常の中で試しやすい入口を作ったと考えられます。

    確認できる範囲:ブランド開始とその後の規模拡大。短時間訴求だけの獲得効果は確認できていません。[6]

  2. 2023年9月|美容・リフレッシュサービスを拡充

    運動以外の来店理由を加える

    セルフホワイトニング、セルフネイル、マッサージチェアなどの新サービスを導入しました。運動への関心だけに依存せず、美容やリフレッシュをきっかけに店舗を利用する入口を広げた施策と解釈できます。

    会社が説明する成果:2024年の公式発表では、来館回数・利用者数・入会者数の向上が示されています。ただし、新サービスだけの因果効果としては断定できません。[9]

  3. 2024年3月28日|新サービス7種の導入を発表

    日常の用事とジムの利用を結び付ける

    カラオケ、ランドリー、ピラティス、セルフフォト、キッズパーク、トレサポ、医療連携の7種を発表し、「スマートライフジム」への展開を示しました。複数の利用目的を一つの会費にまとめる設計は、来店理由と利用価値の幅を広げるものです。

    確認できる範囲:新サービスの導入決定。発表内容は、現在も全サービスが全店舗で提供されていることを意味しません。[9]

  4. 2025年3月期|店舗品質の改善

    設備の故障や店舗環境に向き合う

    故障連絡システム、設備の入れ替え・修繕、巡回スタッフ、マニュアル整備などを進めました。無人店舗でも安心して継続利用できる環境を整える取り組みです。決算では、想定を超えた設備故障と緊急対応の支出も説明されています。

    確認できる範囲:品質改善への投資と運営上の課題。退会率の改善幅や、施策別の売上効果は確認できていません。[1]

  5. 2026年3月期|収益基盤の整備と投資再開

    集客と店舗運営の採算を整える

    上期には出店・広告投資を最適化し、運営の内製化・DX、FC出店モデルの開発を進めました。その後、下期から出店と広告投資を再開しています。

    会社が説明する成果:店舗当たりの損益分岐点が低下し、会員数が増加傾向へ転換。ただし、広告やDXの個別効果を分離した成果ではありません。[2]

  6. 2026年|特典と顧客接点の見直し

    配布物とアプリを、利用実態に合わせて更新

    6月からヘルスウォッチの提供を順次終了し、体組成計を軸としたスターターキットへ移行する方針を発表しました。また、8月の決算開示では、アプリ上で店舗の状態を点数とコメントで集める「店舗体験スコア」への刷新が説明されています。

    確認できる範囲:提供内容の変更と、顧客の声を店舗改善に結び付ける仕組み。継続率への効果は確認できていません。[10][3]

会員獲得と収益化の間には時間差がある

2027年3月期第1四半期の開示では、会員数の増加に対し、無料キャンペーンなどによって売上収益化までに時間差が生じたことが説明されています。ヘルスケア・美容セグメントの業績も、前年同期比で減収減益でした。会員獲得の成果と、会費として収益に反映される時期は分けて評価する必要があります。[3]

複合サービスの訴求には、利用条件の説明も必要

2024年8月8日、消費者庁はRIZAP株式会社に対し、chocoZAPの表示に関する優良誤認およびステルスマーケティング告示違反を理由として措置命令を行いました。公表日は8月9日です。[11]

サービスの種類を増やすと訴求できる価値も増えますが、予約、利用枠、店舗ごとの設備差まで含めて伝えることが欠かせません。また、SNS施策の実施と売上への寄与は別の情報です。今回の調査では、SEO・MEO・広告媒体別の獲得単価や、SNSからの入会貢献を特定できていません。

他社が読み取れること
利用目的を広げる施策は、提供後の品質管理と一体で設計する必要があります。入会者を増やす段階と、期待どおりに利用できる環境を整える段階を、両方見ることが実務上の参考になります。

フレームワークで見る戦略の構造

ここからは、前半で確認した事実を使ってSTP、3C、4Pの順に分析します。顧客像や位置づけは本記事の考察であり、企業の公式なターゲット定義や戦略表現そのものではありません。

① STP分析

誰の、どの利用障壁を取り除くのか。

市場細分化

運動経験、使える時間、会費の負担、利用目的で顧客を分けます。運動・美容・日常の用事など、来店動機の違いも軸になります。

ターゲット顧客

運動初心者を中心に、まとまった時間を取りにくい人や、複数の目的で気軽に店舗を使いたい人が対象と考えられます。

市場での位置づけ

月額定額で短時間の運動とセルフサービスを利用できる、日常に組み込みやすい店舗として捉えられます。

分析の要点:年齢や性別だけで顧客を区切るより、「時間・費用・利用目的のどこに負担があるか」で見ると、サービス設計とのつながりが明確になります。根拠:[1][9][12]

② 3C分析

顧客・競合・自社の関係から、価値と運営条件を捉える。

CUSTOMER

顧客・市場

運動への関心があっても、会費、準備、時間、継続の負担を感じる顧客を想定できます。商品設計からの推論であり、市場全体の調査結果ではありません。

COMPETITOR

競合

エニタイムフィットネス、女性向けカーブスなども大規模な店舗・会員基盤を持っています。規模だけでなく、利用目的やサービス形式の違いで比較する必要があります。

COMPANY

自社

店舗網、月額料金、複合サービスを組み合わせて接点を増やしています。その価値を維持する条件が、設備・清掃などの店舗品質です。

分析の要点:店舗網とサービスの幅を評価する際は、その利用を支える日々の運営も合わせて見る必要があります。根拠:[1][3][7][8]

③ 4P分析

商品・価格・販売接点・訴求を、同じ顧客像につなげる。

PRODUCT

商品・サービス

運動に美容・生活関連サービスを組み合わせています。提供設備とサービスは店舗ごとに異なります。

PRICE

価格

月額3,278円(税込)。年額プランは32,780円(税込)です。初回入会と再入会では条件が異なります。

PLACE

店舗・販売接点

多店舗展開に加え、直営・FC・海外を組み合わせる方向へ広がっています。店舗ごとの利用条件も価値の一部になります。

PROMOTION

広告・販売促進

短時間利用と複合サービスの価値を訴求しています。無料キャンペーンは、獲得後の有料化まで含めて評価する必要があります。

分析の要点:会費とサービス数だけでなく、「どこで・どの条件で・どのくらい使えるか」まで示すことで、利用前の期待と実際の体験を合わせやすくなります。根拠:[3][6][12]

他社が参考にできる施策

企業規模に合わせて、試しやすさと継続利用を設計する

中小企業が応用する際は、付加サービスを一つ試す、短時間の体験メニューを作るなど、運営できる範囲から始められます。以下のKPIは他社への提案であり、chocoZAPが公表した管理指標や成果ではありません。

施策 01

利用の入口を小さくする

美容・運動・学習サービスなどで、短時間、少ない準備で試せるメニューを設けます。初回の利用に必要な時間や手間を具体的に減らす方法です。

応用方法
初回メニューを一つに絞り、申込方法・所要時間・必要な持ち物を明示する。
測定するKPI
初回体験率、体験後の購入率、2回目利用率。
実施条件
短時間化しても、サービス本来の価値を提供できること。
施策 02

来店目的を一つ増やす

本業との相性がよい付加サービスを試します。新たな目的で来店した人が、本来のサービスにも関心を持つ接点を作ります。

応用方法
既存顧客の要望を確認し、一店舗・一サービスから試行する。
測定するKPI
付加サービス利用率、来店頻度、利用者の継続率。
実施条件
設備費、管理負担、混雑も含めて採算を確認すること。
施策 03

品質改善を継続施策にする

故障、清掃、接客への声を集め、改善までの担当者と期限を決めます。評価点を集めるだけで終わらせず、現場の対応へつなげます。

応用方法
簡単なフォームで問題を受け付け、対応状況を一つの一覧で管理する。
測定するKPI
不具合解消時間、再発率、退会・離脱理由。
実施条件
改善を実行できる担当者と時間を確保すること。
施策 04

無料体験の終了後まで測る

体験申込数と、その後の有料利用を分けて追います。無料期間が終わった後に、どのくらい継続されるかで施策を評価します。

応用方法
開始月・キャンペーンごとに顧客を分け、終了後の利用を確認する。
測定するKPI
有料転換率、3か月・6か月継続率、獲得費回収期間。
実施条件
申込者、無料利用者、有料利用者を区別できること。
施策 05

利用条件を訴求と一緒に伝える

予約、対象店舗、利用回数、追加費用を、申込前に確認できる場所へ記載します。実際に使える範囲を伝えることが、顧客の期待と店舗体験のずれを減らす基本になります。

応用方法
主要な訴求の近くに利用条件を配置し、広告・申込ページ・現場案内を揃える。
測定するKPI
条件の誤認による問い合わせ件数、キャンセル率。
実施条件
変更時に広告と店舗の案内を更新できること。

集客と継続利用を、同じサービス設計で考える

chocoZAPの取り組みから読み取れるのは、入会しやすい入口と、繰り返し使える店舗環境の両方を整える必要があることです。自社に応用する際は、顧客の負担を一つ減らす施策から始め、継続利用と採算まで確かめることが実務に役立ちます。

参考資料・出典
  1. 2025年3月期 決算短信RIZAPグループ/2025年5月15日。2024・2025年3月期連結業績、店舗品質改善。
  2. 2026年3月期 決算短信RIZAPグループ/2026年5月14日。連結業績、収益基盤の整備、投資再開。
  3. 2027年3月期 第1四半期決算短信RIZAPグループ/2026年8月14日。店舗体験スコア、キャンペーンと収益化の時間差。
  4. 経営情報:2024年3月期を説明する社長メッセージRIZAPグループ/2024年3月末店舗数・当期出店数。掲載内容を2026年10月8日確認。
  5. RIZAPグループ 企業調査レポートフィスコ/2025年9月。2025年3月末店舗数の補助資料。
  6. マレーシア2号店「chocoZAP SS15店」オープンRIZAPグループ/2026年10月1日。開始時期、2026年8月14日の店舗数・会員数。
  7. 春季全国プロモーションに関する発表Fast Fitness Japan/2026年3月26日。2026年1月末の国内店舗数・会員数。
  8. フードドライブ実施に関する発表カーブスホールディングス/2026年1月14日。2025年11月末の国内規模。
  9. 新サービス7種の本格導入を決定RIZAPグループ/2024年3月28日。2023年のサービス拡充、2024年の導入内容。
  10. スターターキットの提供構成見直しおよびサービス品質向上の取組chocoZAP/2026年3月16日。2026年6月以降の提供内容の変更。
  11. RIZAP株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について消費者庁/2024年8月9日公表。命令日は8月8日。
  12. chocoZAP 公式料金chocoZAP/2026年10月8日確認。月額・年額プランと利用条件。

本記事は公開情報に基づくマーケティング分析です。確認できた事実と本記事の考察を区別し、施策の実施と業績改善の因果関係は断定していません。chocoZAP単独の売上・営業利益の3年分、同一条件の3期末店舗数、既存店売上や退会率の継続的な系列、媒体別広告成果は、今回の調査では揃っていません。一般用語・仕組みの解説用の参考リンクは省略しています。

小形 洸太

この記事を書いた人

小形 洸太

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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