ステマ(ステルスマーケティング)とは?具体的な内容と事例解説

ステマは、SNSやニュースで度々世間を騒がせます。ステマは、消費者の立場を偽ったり、広告であることを秘匿して、商品やサービスの購入を促しますので、世間一般的には、騙された感情が強いものとされています。

また、取り締まる法律が存在しなかったのですが、近年景品表示法の第五条三号の「内閣総理大臣が指定するもの」に含まれることが告示され、違法行為になりました。これに違反すると、措置命令後、行政罰に処される可能性があります。

目次

ステルスマーケティングとは?

ステルスマーケティング(ステマ)とは、広告であることを隠して行う宣伝活動です。消費者に自然な口コミやレビューと錯誤(誤認)させることで、製品やサービスを宣伝します。

具体的には、以下のことが該当します。

  1. ブログ記事やレビューサイトで、広告であることを明示せずに製品を紹介する。
  2. SNSで、報酬を受け取った投稿を広告と明示せずに商品を推奨する。
  3. インフルエンサーが、報酬を受けながら、その事実を明示せずに製品を使用する様子を投稿する。
  4. フォーラムや口コミサイトで、企業からの依頼で製品の良い評判を広めるが、その関係を明かさない。
  5. 動画コンテンツで、スポンサーから提供された商品を広告と明示せずにレビューする。
  6. 偽の口コミやレビューを投稿して製品を高評価する。
  7. ニュース記事や特集記事で、広告主からの依頼を受けた内容を広告と明示せずに掲載する。
  8. 電子メールで、広告主からの依頼で製品を紹介するが、それを広告と明示しない。

ステマは消費者を誤解させるため、不信感を招くリスクがあります。景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の違法行為に該当する可能性があります。これに抵触すると、措置命令にて公表され、行政罰を受ける可能性があります。

ステルスマーケティングに違反することの罰則

第五条三号

前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

不当な表示の禁止 景品表示法

ステマは、近年まで厳格に取り締まる法律が存在しませんでしたが、令和5年3月28日に内閣総理大臣が、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を新たな不当表示として、告示しました。これにより、ステマは、景品表示法第5条3号に違反する行為に該当します。

これに対して、行政は以下の対処をすることができます。

①措置命令

第七条

内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。

措置命令

まずは、事業者に対して該当する違反行為の取りやめ、もしくは違反しないように対策を求めることができます。消費者庁などの行政庁がこの措置を行い、措置の対象になるとウェブサイト等で公表されます。この措置に従わないと、景品表示法に違反したことで発生する売上に法定利息(現行は3%)を上乗せした金額の支払い命令である課徴金もしくは、行政罰に科せられます。ただし、ステマは、課徴金の適用除外ですので、行政罰が科せられます。

②行政罰

第三十六条

第七条第一項の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。

行政罰では、二年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、反省の度合いに応じて、両方の罰則を科すことができると定められており、ステマを含める景品表示法違反が、違法行為の中では重いことがわかります。

ステマにならないようにするためには?

ステマを回避するためには、消費者を誤認させる広告手法を回避します。

①広告であることを明示する

広告であることを明示することは最も基本的な対策です。ブログ記事やソーシャルメディアの投稿で、企業からの報酬や商品提供を受けている場合、その旨をはっきりと表示します。例えば、「#PR」や「広告」といった表示を見やすい箇所に表示します。これにより、法律に準拠しますので、違法であることを回避することができます。

②ステマに該当する施策をやらない

抵触する可能性のあるマーケティングの施策を回避します。

例えば、MEO対策では、口コミを増やし、評価上げることが大きな効果があります。そのため、MEO対策業者は、アカウントを大量生成し、最高評価の口コミを量産して追加します。違反にならないようにするためには、最初からこれらをやらないことです。

なお、なりすまし行為は、Googleのガイドラインの違反行為でもあります。そのため、アカウントの停止のリスクもありますし、ステマの措置命令の件数も少ないため、公表されると全国ニュースになり、低評価の口コミが量産され、デジタルタトゥーが刻まれるリスクがあります。

③ガイドラインの遵守

各プラットフォームや国の広告ガイドラインを遵守することも重要です。例えば、InstagramやYouTubeには広告表示に関するガイドラインが設けられています。これらのガイドラインを確認し、遵守することで、ステマとみなされるリスクを減らせます。法的なトラブルを避けるためにも、最新のガイドラインを常に確認し、従うことが必要です。

④インフルエンサーを教育する

インフルエンサーに対して、広告表示の重要性を教育することも効果的です。企業はインフルエンサーに対し、報酬や商品提供の際に必ず広告であることを明示するよう指導します。これにより、インフルエンサー自身も透明性を保つことができ、信頼性を高めることができます。インフルエンサーによっては、認識があまく広告表示を行わないこともあります。

なお、ステマは広告です。責任者はインフルエンサーではなく広告主であり、罰則は広告主側が受けることになります。

ステマに関する過去の事例

①医療法人によるGoogleマップの口コミの操作

この事件は、医療法人Aが運営する「Bクリニック」において、ステルスマーケティングに該当する不当表示を行ったというものです。具体的には、インフルエンザワクチン接種のために来院した患者に対し、Googleマップ上のクリニックの口コミ欄に高評価(星4以上)の投稿をすることを条件に、接種料金を割り引くことを提案しました。これにより、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な投稿が少なくとも45件確認され、景品表示法第5条第3号に違反する行為と認定されました。

消費者庁はAに対し、以下の措置命令を行いました。まず、違反行為の速やかな中止を命じました。次に、この表示が景品表示法に違反し、一般消費者に誤認を与える可能性があることを周知徹底するよう求めました。さらに、再発防止策を講じ、それを役員、従業員、医療従事者に周知徹底することを命じました。最後に、今後同様の表示を行わないことを命じました。この措置命令は、2023年10月1日のステルスマーケティング規制開始後、初めての行政処分となりました。

②食べログの口コミの操作

食べログには、評価が3.5以上の店舗が優良店であるという基準がありました。そのため、3.5以上に自店舗をするために、有名なレビュアーに報酬を支払うことで、評価の高い口コミを書いてもらうステマ行為が横行していました。これが問題視されたのは、2012年の頃で、ステマという言葉が一気に有名になり出した時期でもあります。当時は取り締まる法律がなく、メディア等に大きく取り上げられました。

トップレビュアーも飲食店から接待を受けていたことが発覚したことなどもあり、この話題は定期的に取り上げられるケースが多いです。食べログは現在評価軸での検索を受賞軸の検索に変更する対応をとっています。

③アナ雪2のSNSマーケティング

2019年12月、映画『アナと雪の女王2』の公開後、7人の漫画家がTwitterで同時刻に感想漫画を投稿したことから、ステルスマーケティング(ステマ)疑惑が浮上しました。後にウォルト・ディズニー・ジャパンが謝罪し、報酬が支払われたマーケティング施策であったことを認めました。PR表記がなかったことや、広告代理店の電通が表記不要と説明していたことが問題視されました。

④ペニーオークション事件

ペニーオークションは、1円から入札できるオンラインオークションの一種で、2010年頃に日本で流行しました。しかし、その仕組みが、賭博性が高いこと、ゲーム内コインの購入を強いること、確率が操作されている等が問題視されました。

複数の芸能人がこのサービスに関与し、ブログやSNSなどで宣伝に協力しました。その内容が、顧客であると偽り、当選内容を報告するもので、消費者にペニーオークションは当選しやすい錯誤を生みました。これが、ステマに該当するということで、さまざまなメディアやSNSで炎上しました。

ペニーオークションに協力した芸能人は、これにより多くの仕事を失い、メディアから姿を消しました。

⑤Amazonのサクラレビュー

Amazonのトップレビュアーは、企業から無料で商品を提供され、好意的なレビューを書くよう依頼されている人がいることが明らかになりました。一部のレビュアーは月に100件以上のレビューを投稿し、その多くが最高評価でした。企業側は好評価を得るためにこうした手法を利用し、消費者の購買意欲を高めようとしています。

現在、Amazonは、Amazon Vine 先取りプログラムを導入しており、これらの仕組みを公式のものとしています。この仕組みによって、レビューがサンプルを提供されたものなのか、そうでないのかを消費者は判別をすることができます。

最終更新日 2024年6月27日

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