ステマ(ステルスマーケティング)とは?景品表示法違反の事例と経営ダメージを解説

📋 この記事でわかること

  • ステマが優良誤認・有利誤認より「最初のダメージが大きい」理由
  • 2023年10月の規制開始後に措置命令を受けた最新事例(大正製薬・ロート製薬・RIZAP・クリニックなど)
  • 規制前の有名炎上事例(アナ雪・ペニーオークションなど)との比較
  • 業種を問わずやってしまいがちなNGパターンと、正しい口コミ収集の方法

⚠️ まず知っておいてほしいこと——ステマは「最初の指導」から経営ダメージが始まる

景品表示法違反の中で、優良誤認・有利誤認・ステマの3つが主な違反類型ですが、経営へのダメージが最も早く・広く現れやすいのがステマです。

優良誤認や有利誤認の場合、措置命令が出るまでにある程度の調査期間があり、課徴金という経済的ペナルティが中心になります。一方、ステマは措置命令の段階から「何をやったか」が消費者庁に公文書として公表されます。

「○○社が、インフルエンサーに報酬を支払ってPR表記なしで投稿させていた」——この事実がそのままプレスリリースとして出回り、ニュースメディア・SNSで一気に拡散します。消費者庁のウェブサイトは検索でも上位に表示されやすく、社名で検索すると違反内容が上位に出続けるデジタルタトゥーになりやすいのです。

気軽に始めてしまいがちな口コミ操作やインフルエンサー施策が、取り返しのつかないブランド毀損につながる——それがステマ違反の怖さです。

ステルスマーケティング(ステマ)とは?

ステルスマーケティング(ステマ)とは、広告・宣伝であるにもかかわらず、それを隠して一般消費者の口コミや感想に見せかける行為です。2023年10月1日から景品表示法第5条第3号の規制対象となり、違反すると措置命令・刑事罰の対象になります。

消費者は、企業の広告に対して「誇張が含まれている」と警戒しながら読みます。一方、第三者の口コミは「本音」として受け取ります。その心理の差を意図的に利用するのがステマです。

他の違反との違い——なぜステマだけ特別に怖いのか

🔵 優良誤認・有利誤認

  • 価格・品質の「ウソ」が問われる
  • 課徴金(売上の3%)が主なペナルティ
  • 経済的ダメージが中心
  • 措置命令前に是正できれば影響を抑えられる余地あり

🟣 ステマ

  • 「騙した」という行為自体が問われる
  • 課徴金なし・行政罰直行(懲役2年以下または罰金300万円以下)
  • 消費者庁が「何をやったか」を公文書で公表
  • ニュース・SNSで拡散しやすくデジタルタトゥー化しやすい
  • 消費者の「騙された」感情が強く炎上リスクが高い
⚠️ 責任は必ず「依頼した事業者側」にある
ステマ規制の処分対象は、インフルエンサーや口コミを書いた個人ではなく、依頼・指示をした事業者(広告主)側です。「インフルエンサーが勝手にやった」は通りません。表示内容の決定に関与した時点で、事業者の責任が生じます。

規制開始後の措置命令事例(2024〜2025年)

2023年10月の規制開始から2025年5月時点までに、消費者庁がステマ規制に基づいて措置命令を出した件数は5件です。件数は少ないですが、だからこそ1件ごとが全国ニュースになりやすく、拡散力が高い点が特徴です。

① 報酬付き口コミの依頼型

事例 01 クリニックがワクチン割引と引き換えにGoogleマップの星5投稿を依頼医療・クリニック拡散度:高

医療法人社団祐真会は、インフルエンザワクチン接種のために来院した患者に対し、Googleマップへの星4〜5の高評価口コミ投稿を条件にワクチン接種料金を割り引くことを伝えました。これにより複数の来院者が口コミを投稿し、2024年6月に消費者庁からステマ規制施行後初の措置命令が発出されました。

❌ どこがダメだったか
「割引と引き換えに高評価を書いてもらう」行為は、事業者が表示内容の決定に関与したと判断されます。Googleマップ上の口コミも景品表示法の規制対象であることが、この事例で明確に示されました。医療機関でも例外はありません。
✅ 学べること
「口コミを書いてくれたら特典あり」という報酬付きの口コミ収集は、プラットフォームを問わず(Google・食べログ・Amazonすべて)ステマになります。特典・割引・プレゼントと引き換えの高評価依頼は絶対にNG。

業種:医療・クリニック措置:措置命令(2024年6月・規制後初)媒体:Googleマップ

事例 02 歯科クリニックが治療費値引き・ギフトカードと引き換えに星5口コミを依頼医療・歯科拡散度:高

医療法人社団スマイルスクエアは、患者に「星5つ」の高評価とポジティブな感想を書くことを条件に、治療費5,000円の値引きやギフトカードを提供していました。2025年3月17日に消費者庁から措置命令を受けました。

❌ どこがダメだったか
事例01と同じ「報酬付き高評価依頼」のパターンです。値引きだけでなくギフトカードなどの経済的利益全般が対象になります。「任意でお願いした」ではなく「条件として提示した」時点で違反となります。
✅ 学べること
医療業界での口コミ不正操作は2件連続で措置命令が出ています。業界全体に対して消費者庁が目を向けているサインです。クリニック・整体・エステなど来院型ビジネス全般で注意が必要です。

業種:医療・歯科措置:措置命令(2025年3月)媒体:Googleマップ

② SNS投稿を自社サイトに無断転載型

事例 03 RIZAP(chocoZAP)がインフルエンサー依頼投稿を「お客様の声」として自社サイトに掲載フィットネス拡散度:高

RIZAP(株)は、インフルエンサーに対価を支払ってchocoZAPに関するSNS投稿を依頼したうえで、その投稿を「お客様の声」として自社ウェブサイトのランディングページに「PR」等の表記なしで掲載していました。2024年8月に消費者庁から措置命令を受けました。

❌ どこがダメだったか
SNS上の投稿自体に「#PR」があったとしても、それを自社サイトに転載する際にPR表記を外してしまうと、「一般のお客様の声」として誤認させるステマになります。転載先での広告表示が別途必要です。
✅ 学べること
インフルエンサーの投稿を自社LP・サイト・広告に使い回す際は、転載先にも「広告」「PR」「インフルエンサーに依頼して投稿されたものです」等の表記が必要です。元投稿のPR表記は転載先には引き継がれません。

業種:フィットネス措置:措置命令(2024年8月)媒体:自社ウェブサイト(LP)

事例 04 大正製薬がインフルエンサー投稿を自社サイトにPR表記なしで転載製薬・健康食品拡散度:高

大正製薬(株)は、インフルエンサーに報酬を支払って自社サプリメントのSNS投稿を依頼し、その投稿内容を自社ウェブサイトに「PR」表記なしで転載していました。2024年11月13日に消費者庁から措置命令を受けました。健康食品分野でのステマ規制初の措置命令となり、大きく報道されました。

❌ どこがダメだったか
事例03と同じ転載型のパターンです。大正製薬という知名度の高い企業であったため、報道規模が大きく、「大正製薬 ステマ」という検索ワードが定着しました。知名度が高いほど炎上・デジタルタトゥー化のリスクが高まります。
✅ 学べること
「大手だから大丈夫」ではなく、むしろ大手ほど報道が大きくなります。インフルエンサー施策を行う際は、SNS投稿・転載・引用のすべての場面で広告表記が必要です。

業種:製薬・健康食品措置:措置命令(2024年11月)媒体:自社ウェブサイト

事例 05 ロート製薬がモニター投稿を自社サイトにPR表記なしで掲載製薬・健康食品拡散度:高

ロート製薬(株)は、モニター募集サイトを通じて第三者にサプリメントを無償提供し、指定した画像・文言でInstagramへの投稿を依頼しました。Instagram上では「PR」と表記されていましたが、その投稿を自社ウェブサイトに転載する際にPR表記を外したため、ステマと認定されました。2025年3月25日に消費者庁から措置命令を受けました。

❌ どこがダメだったか
SNS上では正しくPR表記をしていたにもかかわらず、自社サイトへの転載時に表記が消えていた点が問題でした。「SNSでPRを書いていたから大丈夫」という認識は転載の場面では通用しません。
✅ 学べること
モニタープログラム・サンプリング施策でSNS投稿を依頼する場合、投稿者がどこで表示してもPR表記が維持されるよう徹底し、自社で転載する際には必ず改めてPR表記を添えてください。

業種:製薬・健康食品措置:措置命令(2025年3月)媒体:自社ウェブサイト

規制前の有名炎上事例

2023年10月の規制開始前は、ステマを直接取り締まる法律がありませんでした。しかしそれでも社会的制裁は起きていました。むしろ「法律がなかった時代でもこれだけ炎上した」という事実が、ステマの怖さをよく示しています。

参考 01 アナ雪2——漫画家7人が同時刻に感想漫画を投稿しPR表記なしでステマ発覚エンタメ・映画拡散度:極高

2019年、映画『アナと雪の女王2』公開後に7人の漫画家が同時刻に感想漫画をTwitterへ投稿。不自然な一斉投稿がSNSで指摘され炎上。ウォルト・ディズニー・ジャパンが報酬を支払っていたと認めて謝罪しました。電通がPR表記不要と説明していたことも判明し、広告代理店側の姿勢も批判されました。

❌ 炎上の構図
「同時刻・複数人・同テーマ」という不自然さを一般ユーザーが指摘→企業が認める→「消費者を騙していた」という怒りが拡散。現在でも「ステマ」「アナ雪」で検索すると事件が出てくるデジタルタトゥー状態が続いています。

時期:2019年(規制前)媒体:Twitter(現X)法律:当時規制なし→現在は違反

参考 02 ペニーオークション——芸能人がやらせ体験談を投稿して大量の廃業・引退にEC・オークション拡散度:極高

2012年頃、1円から入札できるオンラインオークションで、複数の芸能人が「当選した」と偽ってブログ・SNSで宣伝。実際には当選しておらず、消費者が錯誤するステマ的行為として大炎上しました。関与した芸能人の多くがメディアから姿を消しました。

❌ 炎上の構図
「実際には当選していないのに当選したと偽る」という悪質性に加え、芸能人という知名度が拡散に拍車をかけました。「ステマ」という言葉が日本で一気に認知された事件です。

時期:2012年頃(規制前)媒体:ブログ・SNS法律:当時規制なし→現在は違反

業種を問わずやってしまいがちなNGパターン

ステマは「大企業の話」ではありません。中小企業・個人店舗でも無意識にやってしまいがちな行為が複数あります。

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割引・特典・ポイントと引き換えの高評価口コミ依頼

「口コミを書いてくれたら次回10%OFF」「レビュー投稿でプレゼント」など、経済的な見返りを条件とした口コミ収集はステマです。Googleマップ・食べログ・Amazonすべてが対象です。

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従業員・スタッフ・家族による「一般人のふり」口コミ

オーナーや従業員が別アカウントで一般客を装って投稿する行為。「お客様の声」のように見せる投稿も、関係者による投稿はステマになります。

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インフルエンサーへのPR依頼でPR表記を指定しない・曖昧にする

「#PR表記はしなくていい」「自然な口コミっぽく書いて」という依頼そのものが違反になります。インフルエンサーが自主的にPRと書いても、依頼した事業者側の責任はなくなりません。インフルエンサーマーケティングの正しい活用方法はこちら

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PR投稿を自社サイト・広告にPR表記なしで転載・引用

インフルエンサーのSNS投稿やモニターの感想を、自社LP・広告・チラシに使う場合、転載先でも「インフルエンサーに依頼した投稿です」等の表記が必要です。元のPR表記は転載先には引き継がれません。

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口コミ代行業者の利用

MEO対策」「口コミ増加サービス」として提供される口コミ代行は、なりすまし投稿を含む場合がほとんどです。業者に依頼している場合でも、処分を受けるのは依頼した事業者側です。

正しい口コミ収集の方法

口コミを増やしたいという気持ちは自然です。ステマに頼らなくても、適切な方法で口コミを集めることは可能です。

✅ 景表法に違反しない口コミ収集の例

  • 来店・購入・利用後にお声がけする——「よろしければGoogleマップへのご投稿をお願いします」とお伝えすること自体は問題ありません
  • QRコードを設置する——レジ横・テーブル・レシートにGoogleマップのレビューページへのQRコードを置くのはOK
  • メルマガ・LINE公式アカウントで投稿をお願いする——既存顧客への案内はOK。ただし「書いてくれたら特典」はNG
  • インフルエンサー・モニター施策でPR表記を徹底する——報酬・商品提供がある場合は「#PR」「広告」「提供品使用」等を明示し、転載先でも必ず表記を添える
  • サービス・商品の品質を上げて自然な口コミを増やす——根本的に最も持続性が高く、リスクもゼロ

罰則まとめ

段階 内容 ステマへの適用
措置命令 再発防止・違反事実の周知を命令。消費者庁ウェブサイトで公表される ✅ 対象(社名・違反内容が公表→デジタルタトゥー化)
課徴金 売上の3%を国に納付 ❌ 対象外(ステマは課徴金の適用除外)
行政罰(刑事罰) 措置命令違反→2年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人は3億円以下) ✅ 措置命令に従わない場合に適用

ステマが課徴金の対象外である点は、一見「軽い」ように見えますが、実際には措置命令の公表によるブランド毀損の方がはるかに大きなダメージになります。課徴金は支払えば終わりですが、デジタルタトゥーは消えません。

まとめ

ステマは「バレなければいい」という感覚で始めてしまいがちですが、消費者庁の摘発件数は増加傾向にあり、1件摘発されるごとに全国規模で報道されます。措置命令の公表内容はGoogleに長期間インデックスされ、社名検索で上位に表示され続けます。

優良誤認・有利誤認と違い、ステマには「騙した」という消費者の怒りが伴います。炎上した場合の低評価口コミの増加・SNSでの批判拡散は、経済的損失以上のダメージになることもあります。

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この記事を書いた人

マーケティングプロデューサー、集客コンサルタント。大学卒業後、店舗マーケティングツールのASPにて、500店の顧客フォロー及び導入支援業務に従事。その後、2009年からコンサルティングを提供開始。助言だけではなく、対策もできるコンサルタントとして活動。主に、マーケティング関連のディレクション業務を行い、オウンドメディア運用、SNSキャンペーン、実店舗の集客支援を実施。

集客の専門家として、ミラサポや信用保証協会専門家、商工会専門家などの立場で事業主向けに助言業務を実施。また、リクルートや第一興行のメディアでSNSを使った集客の記事の監修。

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