新商品開発に必要な調査とは?調査項目・方法・注意点を解説

新商品を開発するとき、「このアイデアなら売れる」「こんな機能があれば喜ばれる」と考えることは、開発の出発点になります。しかし、その見込みだけで開発を進めると、完成してから「想定した顧客には必要とされていなかった」「欲しいと言われるものの、購入にはつながらない」と気づくこともあります。
そこで必要になるのが、新商品開発のための調査です。顧客の課題や市場の状況を把握し、商品にどのような価値を持たせるべきかを検討します。
この記事では、新商品開発に調査が必要な理由から、調査時の注意点、事前に設定したい項目、具体的な調査方法までを解説します。
新商品開発の調査は「誰に、どんな価値を、いくらで提供するか」を判断するために行う
新商品開発における調査の目的は、情報を集めること自体ではありません。「誰に、どのような価値を、いくらで提供すれば、事業として成立するのか」を判断するための材料を得ることです。
例えば、新しい冷凍食品を開発する場合、「手軽な食品への需要がある」という情報だけでは、商品の方向性は決まりません。忙しい一人暮らしの人が求める手軽さと、家族の食事を用意する人が求める手軽さでは、必要な量や容器、価格などが異なるためです。
調査では、顧客が困っている具体的な場面や、現在利用している商品への不満まで確認します。そのうえで、提供する価値や機能、価格、販売方法を検討していきます。
ただし、調査を行えば成功が保証されるわけではありません。得られた情報を、自社の技術や販売力、採算性、これまでの経験と照らし合わせ、開発を進めるか、商品案を修正するかを判断することが大切です。
新商品開発に調査が必要な理由
顧客の課題と開発側の思い込みのずれを減らすため
開発側が魅力的だと考える特徴が、そのまま顧客の購入理由になるとは限りません。高機能であることを重視していても、顧客は「操作が簡単であること」や「片付けに手間がかからないこと」を求めている可能性があります。
例えば、調理家電を開発する際に、調理メニューの豊富さを強みにしようと考えていたとします。しかし、利用者の話を聞くと、既存の商品を使わなくなった理由が「洗う部品の多さ」だったと分かるかもしれません。この場合、機能を増やすよりも、手入れのしやすさを改善した方が、顧客の課題に応えられる可能性があります。
このように、顧客の実際の行動や困りごとを調べることで、開発側の想像だけでは見えていなかった改善の方向性を検討できます。
既存の商品から選び替えてもらう理由を見つけるため
新商品には、すでに顧客が利用している商品やサービスとの比較が伴います。機能や価格に大きな違いがなければ、顧客は使い慣れた商品を選び続けるかもしれません。
そのため、競合商品の特徴を調べるだけでなく、顧客がその商品を選んでいる理由や、不満を感じながらも使い続けている理由を確認する必要があります。
比較する対象は、同じ商品カテゴリーに限りません。例えば、家事を効率化する商品の場合、顧客は別の家電だけでなく、家事代行サービスや「その家事をしない」という選択肢で課題を解決していることもあります。
顧客が現在どのように課題に対処しているかを把握すると、新商品が選ばれるために必要な価値が見えやすくなります。
開発費や販売費の投資判断に役立てるため
新商品開発には、試作や製造だけでなく、パッケージの制作、在庫の確保、販売促進などにも費用がかかります。開発が進んでから方向性を大きく変えると、追加の費用や時間が必要になります。
調査を通じて、顧客の反応や購入条件を早い段階で確認できれば、優先する機能を絞ったり、初回の生産量を抑えたりする判断につながります。
また、社内で開発予算を確保する場合や、外部に事業計画を説明する場合にも、調査結果は判断材料になります。「売れそうだから」という説明に加え、誰のどのような課題を解決し、どの条件で購入が見込めるのかを示すことが重要です。
新商品開発の調査をする際の注意点
情報の出所・調査時期・調査条件を確認する
調査で見つかった数値は、そのまま使えるとは限りません。誰が、いつ、どのような対象に、どのような方法で調べた情報なのかを確認しましょう。
例えば、市場規模を示す資料でも、対象に含まれる商品や地域、集計の基準が異なる場合があります。メーカーの出荷金額と、小売店での販売金額を、同じ基準の数値として比較することはできません。
また、公開された日付が新しくても、掲載されているデータ自体は数年前のものというケースもあります。調査対象の市場が大きく変化している場合は、情報がいつの状況を示しているのかが特に重要です。
引用元が記載されている場合は、可能な範囲で元の資料を確認します。必要な条件が分からない情報は、参考情報として扱い、重要な判断をその情報だけに委ねないようにしましょう。
母集団と回答者の偏りを確認する
母集団とは、調査によって実態を知りたい対象者全体のことです。例えば、子育て世帯向けの商品を開発するのであれば、単に「成人全体」に聞くのではなく、子どもの年齢や生活状況などを踏まえて対象を定める必要があります。
実際に回答した人が想定顧客とずれていると、回答数が多くても、開発に役立つ結果になるとは限りません。
自社の既存顧客やSNSのフォロワーを対象にする場合も注意が必要です。商品をよく理解している人の意見を得られる一方で、自社を知らない人や、競合商品を選んでいる人の意見は把握しにくくなります。
調査結果を見るときは、人数だけでなく、「誰の意見が含まれていて、誰の意見が含まれていないのか」を確認することが大切です。
誘導する質問や、都合のよい解釈を避ける
調査では、商品案を肯定してもらいたいという気持ちが、質問や解釈に影響することがあります。
例えば、「家事の負担を減らす便利な商品があれば使いたいですか」という質問では、肯定的な回答が集まっても、どのような商品なら購入されるのかは分かりません。まずは、「直近で家事に負担を感じたのはどのような場面ですか」「そのとき、どう対処しましたか」といった具体的な経験を聞く方が、課題を把握しやすくなります。
商品案を評価してもらう場合も、魅力だけでなく、分かりにくい点や不要な点、購入をためらう理由を確認しましょう。
また、「買いたい」という回答は、実際の購入と同じではありません。販売価格や送料、購入場所などの条件を示すと、評価が変わる場合もあります。好意的な回答の割合だけで売上を見積もらず、必要に応じて試作品やテスト販売で確かめることが重要です。
最終判断は調査結果と自身の経験、自社の条件を合わせて行う
調査結果には、調べた対象や方法による限界があります。また、これまでにない商品は、説明だけでは利用価値が伝わりにくく、回答者が使用場面を想像できないこともあります。
そのため、調査結果だけで開発の可否を機械的に決めることはできません。顧客と接する中で得た経験や業界への理解、自社が提供できる品質、販売体制、投資できる金額なども踏まえて判断します。
ただし、経験を重視することと、自分に都合の悪い結果を無視することは別です。経験と調査結果が食い違った場合は、「想定した顧客に聞けているか」「商品価値が伝わっているか」「自分の経験が現在にも当てはまるか」を確認しましょう。
判断に迷う点が残れば、その点に絞って追加調査や小規模な販売を行い、確かめていきます。
調査する前に設定したい調査項目
調査を始める前に、まず「今回の調査で何を決めるのか」を明確にします。ターゲットを選びたいのか、機能の優先順位を決めたいのか、価格を検討したいのかによって、必要な情報は変わります。
例えば、「単身世帯向けの冷凍食品に需要があるか」では、調査の範囲が広すぎます。「平日の夕食準備に困っている単身世帯は、現在どのように対処しており、何に不満があるか」と具体化すると、確認すべき内容を絞れます。
主な調査項目は、次の7つです。
① 想定顧客と課題
誰が、どのような場面で、何に困っているのかを調べます。年齢や職業などの属性だけでなく、生活や仕事の状況、課題が発生する頻度、困りごとの深刻さまで確認します。
「あると便利」という程度なのか、すでにお金や時間をかけて解決しようとしているのかによって、商品に求められる価値も変わります。
② 現在の購買・利用行動
現在何を購入し、どこで購入し、どのように使っているのかを確認します。購入頻度、比較する商品、情報収集の方法、購入を決める人なども調査対象です。
実際に使う人と代金を支払う人が異なる商品では、双方の条件を把握する必要があります。使いやすさの評価が高くても、購入を決める人が費用に納得しなければ導入にはつながりません。
③ 市場の状況
対象市場の規模や変化、需要を生む背景を調べます。市場全体の大きさだけでなく、自社が販売できる地域や顧客層に絞ったとき、どの程度の機会があるかを検討します。
大きな市場だから売れる、小さな市場だから事業にならないとは限りません。自社が必要とする売上規模や、顧客に届ける手段と合わせて考えましょう。
④ 競合商品と代替手段
競合商品の機能、価格、販売経路に加え、顧客が選ぶ理由や不満を確認します。同種の商品だけでなく、別の方法で同じ課題を解決しているケースも対象にします。
開発に役立つのは、単なるスペックの差ではなく、顧客が価値を感じる違いです。競合より高性能にすることが、本当に選ばれる理由になるのかを確かめます。
⑤ 商品案への評価
商品の価値が伝わるか、利用したい場面があるか、必要な機能がそろっているかを確認します。開発初期は説明文やイメージ図、試作品ができた段階では実物を使って評価してもらいます。
「良いと思うか」だけでなく、「何ができる商品だと理解したか」「現在の方法から変える理由があるか」を聞くと、商品案の課題を整理しやすくなります。
⑥ 価格と購入条件
現在の解決方法に支払っている金額や、商品案の価格に対する反応を調べます。価格だけでなく、容量、送料、購入単位、契約期間なども購入判断に関わります。
顧客が希望する価格と、自社が利益を確保できる価格は一致するとは限りません。顧客の評価と費用の両面から、成立する条件を検討します。
⑦ 実現可能性と採算
必要な品質を実現できるか、原材料を安定して調達できるか、継続して供給できるかを確認します。製造費だけでなく、物流、販売手数料、問い合わせ対応などの費用も考慮します。
商品によっては、安全性、表示、知的財産などの確認も必要です。顧客調査だけでは分からないため、仕入れ先や製造委託先への確認、関係資料の確認などを別途進めます。
これらの項目を一度にすべて調べる必要はありません。開発初期は顧客の課題と市場を中心に調べ、商品案が固まるにつれて、評価、価格、供給条件などの検証を深めていきましょう。
新商品開発に使える調査方法と実施方法・メリット・デメリット
調査項目が決まったら、情報を得る方法を選びます。理由や背景を深く知りたい場合と、傾向を数値で確認したい場合では、適した方法が異なります。
① 文献・公開情報調査
公的統計、業界団体の資料、企業の公開情報など、すでに存在する情報を調べる方法です。デスクリサーチとも呼ばれます。
実施方法
知りたい内容を整理したうえで、関連する資料を探します。見つけた情報は、数値や内容だけでなく、出所、調査時期、対象範囲も記録します。資料ごとに条件が違う場合は、その違いが分かる形で整理しましょう。
メリット
顧客への調査を始める前に、市場の全体像や主要な企業、需要の変化を把握できます。無料で利用できる資料もあり、初期の仮説づくりに役立ちます。
デメリット
知りたい顧客層や商品カテゴリーに一致する情報があるとは限りません。複数の資料が同じ元データを引用している場合もあるため、資料の数だけで情報の確かさを判断しないことが大切です。
② 競合商品の購入・比較調査
競合商品を実際に購入し、機能や使用感、購入体験を比較する方法です。
実施方法
想定顧客が比較しそうな商品を選び、確認項目を統一します。価格や容量だけでなく、注文のしやすさ、届くまでの日数、開封、使用、保管、廃棄まで、利用の流れに沿って確認すると具体的な違いが見つかります。
メリット
商品説明や仕様表では分からない使い勝手を把握できます。自社の商品案と比較することで、改善する箇所も具体化しやすくなります。
デメリット
調査者の好みや慣れが評価に影響します。また、自社で高く評価した点が、顧客の購入理由とは限りません。顧客への聞き取りと組み合わせて解釈する必要があります。
③ インタビュー・グループインタビュー
対象者に直接話を聞き、行動の理由や背景を掘り下げる方法です。一対一で聞く方法と、複数人で話し合ってもらう方法があります。
実施方法
想定顧客の条件に合う人を募集し、質問の流れを準備します。「普段どうしていますか」という一般的な質問に加えて、「最後に購入したときのことを教えてください」と具体的な経験を聞きます。
一対一の形式は、個人の事情や経験を詳しく聞く場合に適しています。グループ形式は、参加者同士の反応や意見交換から、新しい論点を見つけたい場合に使えます。
メリット
アンケートの選択肢では捉えにくい不満や、購入に至るまでの事情を把握できます。想定していなかった課題を発見し、その場で追加の質問ができる点も特徴です。
デメリット
少人数の意見から、市場全体にどの程度広がっている課題なのかは判断できません。聞き手の反応や、グループ内の発言力の強い人に回答が影響されることもあります。
④ アンケート調査
複数の対象者に共通の質問を行い、回答の傾向を数値で把握する方法です。
実施方法
対象者の条件を決め、調査目的に沿って質問票を作成します。一つの質問で複数の内容を聞かず、回答者によって意味が変わりそうな表現は避けます。
配布前に少人数で試し、質問が意図どおりに伝わるかを確認しましょう。集計では全体の割合に加え、利用頻度や顧客属性による違いを見ます。ただし、細かく分けた結果、それぞれの回答者が少なくなった場合は、数値の解釈に注意が必要です。
メリット
複数の商品案や機能の評価を、共通の基準で比較できます。インタビューで見つかった課題が、どの程度の回答者に当てはまるかを確認する際にも役立ちます。
デメリット
用意した質問の範囲を超える情報は得にくく、回答の理由が十分に分からない場合があります。対象者の集め方や設問による偏りは、回答数を増やすだけでは解消できません。
⑤ 行動観察調査
顧客が商品を使う様子や、課題に対処している場面を観察する方法です。
実施方法
対象者に目的を説明して同意を得たうえで、実際の利用場面を観察します。操作が止まる箇所、何度も繰り返す作業、独自の工夫などを記録します。観察した事実と調査者の解釈は分け、行動の理由は必要に応じて本人に確認します。
メリット
本人が当たり前だと感じていて、言葉にしない不便を見つけられる可能性があります。「使いやすい」という評価と、実際には操作に迷っているといった行動の違いも確認できます。
デメリット
観察と分析に時間がかかります。また、観察されているために普段と行動が変わる可能性があり、一度の観察だけで日常の使い方を理解したと考えないことが大切です。
⑥ 試作品テスト
開発中の商品を想定顧客に使ってもらい、価値や使いやすさを確認する方法です。
実施方法
「説明なしで使えるか」「想定した課題を解決できるか」など、確認する目的を決めます。利用してもらう条件をそろえ、使用中の行動と使用後の感想を記録します。
評価が低かった場合は、商品案そのものへの不満なのか、試作品の不具合や説明不足によるものなのかを分けて確認します。
メリット
説明だけでは想像しにくい使用感を検証できます。本格的な製造に入る前に、修正すべき点を具体的に見つけられます。
デメリット
試作品の制作やテスト環境の準備に費用がかかります。また、短時間のテストでは、使い続けたときの不満や耐久性までは判断できません。確認したい内容によっては、一定期間利用してもらう必要があります。
⑦ テスト販売
期間や数量、販売場所を限定し、実際に商品を販売して反応を確認する方法です。
実施方法
販売前に、検証したい仮説と評価する項目を決めます。売上だけでなく、商品を見た人のうち購入した割合、購入理由、問い合わせ、返品、利益などを確認します。
結果を見る際は、広告や割引、販売場所の条件も記録しておきます。売れ行きが想定を下回った場合も、商品の問題なのか、顧客に届いていないのか、説明が伝わっていないのかを分けて考えます。
メリット
「欲しい」という意見にとどまらず、実際に代金を払って選ばれるかを確認できます。商品の評価と同時に、販売や配送などの運用面の課題も把握できます。
デメリット
販売できる商品と運用体制の準備が必要です。また、限定販売の特別感や大きな割引によって売れた場合、その結果が通常販売でも再現するとは限りません。
調査方法は、開発段階に合わせて組み合わせる
どれか一つの方法で、必要な情報をすべて得ることは困難です。例えば、公開情報で市場の状況を把握し、インタビューで顧客の課題を掘り下げ、その課題の広がりをアンケートで確認する流れが考えられます。
商品案ができたら、試作品で使用感を検証し、テスト販売で購入につながるかを確認します。
ただし、必ずすべてを実施する必要はありません。すでに分かっていることと、判断するために不足していることを分け、予算や期間に応じて調査を設計しましょう。
まとめ:判断したいことから逆算して調査を設計する
新商品開発の調査は、顧客の課題を理解し、商品に持たせる価値や販売条件を判断するために行います。調査を始める際は、「今回、何を決めたいのか」を明確にし、必要な項目と方法を選ぶことが重要です。
得られた結果は、情報の出所や調査条件、回答者の偏りを確認して読み解きます。そのうえで、自身の経験や自社の技術、販売力、採算性も合わせて、開発の方向性を決めましょう。
調査後は、分かったことを整理するだけで終わらせず、「機能を絞る」「対象顧客を見直す」「価格を変えて検証する」など、次の行動に落とし込みます。判断しきれない点を一つずつ確かめていくことが、商品案を具体化するための進め方です。
